新桟橋
新桟橋
浙江省舟山島。この島は、中国海軍が増強していくに連れ、東海艦隊水上艦艇用の係留地区が増設されていった。島の南西部にある係留地区は、長さ約3.7kmの概ね直線的な海岸線に沿って建設されている。
その係留地区で新設中の桟橋の袂に、一台の車が停まった。
「車からざっと見たけど、本体は概ね完成だな」と、運転手の男が呟く。
「しかしこの新しい桟橋、本当に長いよね。何隻並べるんだか」と、助手席の男が言う。
この二人は、海軍装備部の所属で、施工している新桟橋の本体工事の進捗状況を、確認しに来ていた。
「確かにね。1,300mもあるからな」
「他にもあるのかね」
「南海艦隊の亜龍の桟橋も長いけど、1,000mくらいかな」
「じゃあ、東海艦隊にも055型駆逐艦が配備されるって?」
「そうした話は聞いてないね」
「そうかい…で、もう一本の新しい桟橋は?」
「左隣の桟橋の先」
「分からないね」
「左の桟橋も600mあるからね。ここからだと1,000m先になる。後で行くから」
「…隣のあれ、改修した現代級駆逐艦だなあ」と、助手席の男が呟く。
「対艦ミサイルは新型らしいね」と、運転手の男が言う。
「YJ-12Aね。今は現代級と051B型だけ」
「射程は?」
「はっきりは知らないけど、400キロって聞いたね」
「噂か」
「輸出用が約300キロだって言うから、妥当だと思うけどね」
「威力は?」
「一発で4,000トン程度の艦なら撃沈できるとか」
「それも噂かい…それが十分かは知らないけど」
「満足はしてるでしょ、YJ-62と83を全部、あのYJ-12Aにするらしいから」
「YJ-62は割と新しいけど」
「巡航速度がこっちの方が速いんだってさ」
「フリゲートにも?」
「054A型はそうかもね」
「載せられる?」
「パキスタンに売った同型艦には、その輸出用のYJ-12が載ってるってさ」
「なら、水上艦部隊の攻撃範囲が広がるね」
「新型のハープーンが300キロちょいらしいから、水上艦の連中も余裕が出る」
「頼もしいね」
周辺を見渡して頷いた運転手の男は、車を動かし始めた。
「もう一本の方に行くから」と、運転手の男が言う。
「確か、そっちのは600mだったかなあ」と、助手席の男が呟く。
「そう、左隣の桟橋と同じ長さ。でも、幅が広くなるから作業はし易くなる」
「そうかね…で、ここの桟橋は何本になるんだい?」
「1,300が一本、600が二本、300が二本で、計五本だよ」
「つまり……キャパが2.5倍になる」
「係留場所の長さはね」
「空母でも来るのかい?」
「規格が違うよ」
「成程ね、でも東海艦隊の艦艇が大型化したり、隻数が増えても当面は大丈夫そうだね」
「これまでのペースならばね。今、閉鎖する場所の話は聞かないし」
「もしかして……他の艦隊の艦も入るのかなあ」と、助手席の男が呟く。
「太平洋進出にかい?…侵攻よりは忙しくならないだろう」と、運転手の男が言う。




