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新風景

新風景


 旅順基地の水上艦地区にある庁舎の裏口から、一人の男が私服姿で出てきた。男は勤務を終えて、私有車で帰宅するのである。普段、真っ直ぐに駐車場へと向かうが、男はふらりと係留岸壁の方へ歩いて行った。

 この旅順基地に転勤して来てから三日が経ち、男は基地の各地区にある業務に関係する部署に顔を出したが、十年前に勤務していた頃と雰囲気が変わっていることを感じた。そして、恐らくそれは新型システムの導入などに伴うものであろうと考えたのである。

 岸壁の端まで来ると、係留されている平面的な印象の艦が目に入る。054A型フリゲートである。今では大型の水上戦闘艦が配備されている基地において馴染みの艦であった。

(前、ここには051型駆逐艦や053H3型フリゲートが留まってたんだが。いくら旅順でも051型はないか…)

 男がここで勤務していた以前から、中国は軍事予算を拡大させていた。毎年増額される予算を背景に、中国海軍は新型艦船の建造や基地の拡張、整備などを実行していた。北海艦隊においては、中国海軍初の空母と主要艦艇を魚池基地に配備することを優先したため、隷下のその他の基地における変化は緩やかであった。

(今、駆逐艦はいないのかな)

 男は港内も見渡したが、やはり駆逐艦の姿はどこにもなかった。

(出港中か配備なしか。近くの大連造船所では最新鋭の055型と052D型を建造してるんだが…。駆逐艦の数も増えてるし、古い052A型ぐらいこっちに転籍してても)

 男はあれこれと考えながら、視線を正面にある潜水艦地区の方に向ける。

 そこには、前に勤務していた時に係留されていた古めかしい型の035型潜水艦の姿は消え、丸みを帯びた039B型潜水艦があった。

(原潜は葫蘆島で建造してるが、通常型は確か武漢と上海だったな…。やっとこっちにも回航したのか。青島の方はそのまま039型なのだろうか)

 中国海軍の原潜は全て渤海湾北部の葫蘆島造船所で行われている。そのため、最初の原潜部隊やSLBM発射実験部隊とその支援施設などは北海艦隊に置かれたのである。しかし、今は多数の094型戦略原潜や093型攻撃型原潜が配備されている南海艦隊の原潜部隊の方が戦略的価値が高くなっている。今後、新鋭の戦略原潜と攻撃型原潜の建造が進み、それ等が配備されれば、再び北海艦隊の原潜部隊の戦略的価値は戻るだろうと期待されている。

 これまで、東海艦隊と南海艦隊の作戦能力向上を優先的に狙ってか、新造艦の北海艦隊への配備は明らかに遅かった。しかし近年、中国海軍初の空母が北海艦隊所属となると、それが変化したと艦隊内では話題になっていた。

 今度は、岸壁の東側の端へと男は歩き始めた。係留中の艦の舷門前を通る時、当番兵の視線が私服姿の男を追う。バツの悪さを感じながらも、男は岸壁の端に行き着いた。その正面にも水上艦用の岸壁や桟橋が並んでいる。そこには053H1の後期型の他、各種支援艦船が係留してあった。

(成程、こっち側は古い艦艇が多いな)

 男からは良く見えなかったが、その奥には造修所や造船所などが在った。

(そう言えば、造修所で挨拶回りした時に新しそうな艦を見た印象がないな…あそこで新型艦の整備は難しいのかな。…そうだ、『長城200号』を見なかった。戦略原潜用のミサイル実験で頑張ってたけど、今は新型の032型があるからな…)

 男は水上艦群の奥の方を眺めて、記憶を思い出させながら、色々と考えた。

(隣の造船所は確か…結構艦船があったけど、あれは整備待ちのもあったんだろう。やたらとデカい艦もあったし。前は…海警局の小型船舶を建造してた感じだったが、それはなかったかな。オフショア支援船や民間ぽい船舶だったと思うが、今はそんな船とかをあそこで建造してるのか…)

 今、旅順基地の造船所では、海洋開発分野などの比較的公的な事業に従事する船舶も数多く建造していた。

(後方の旅順基地と思ってたが、十年前と比べれば変化するのも当然か、基地も艦船も。ここからの眺めも、次第に新しい風景へと変わるんだろうね)

 それから数分して、男は別ルートで私有車のある駐車場へと向かった。

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