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「これを見ていた時、とても満足しているように見えたが」

「はい。この建屋の隅に私も居りましたが、その様に」

 彼等は建屋内に鎮座する新型SSBを見上げながら話し始めた。

「操艦の方は問題ないだろうが、発射試験の方は長く時間が掛かるかもしれんな」

「潜水艦の計画・建造を担当する部署の責任者である貴方が…人前では危険です」

「ここの技術者トップで、古くからの知人の前なら大丈夫だろう」

 そう言われた技術者は呆れた表情で言葉を返した。

「態々貴方がここに足を運ばれたのはそんな事を言いにではないでしょう。で、何が」

「相変わらず察しがいいな」

 そう言うと、責任者は建屋内の周囲を見渡して、他に誰もいない事を確認した。

「これは新型SSBと世界で報道されたが、正直、水中発射型のTELでしかない。増産するのもいいが、本格的な運用を考えるなら実績のあるサイズにする必要があると思う」

「…そうですか、成程。つまり…629型の建造が可能かという事ですね」


 彼等は何所かに監視カメラが仕掛けられている可能性を考慮して、責任者の視察であるかの様に新型SSBの周囲をゆっくりと歩き始めた。

「それでは、新たに上から指示か何かが」と技術者は始めた。

「否、まだこのSSBが試作段階なんでな。しかし近くには」と、責任者の顔は少し曇る。

「成程。ですが、これまでに運用していない大型艦となれば、艦の運用方法や乗員の教育、整備・補給に関連する港湾施設などの問題も考慮する必要が。計画自体大きくなります」

「そこだ。結局肝心の629型が再生すら不可能となれば大問題となる。もし大きな計画が途中で頓挫すれば関係者全員の立場が危うくなる。だから事前の確認が必要とここへ」

 技術者は責任者の言葉に納得したように肯き、

「端的に、629型の再生品としての建造は可能です。ロシアから購入した十隻分のストックの中から状態の良いのを選び出して組上げます。強いて言うならば、ここの施設の改修が問題かもしれませんが、それ程大した話にはならないと思います」と応じた。

 責任者はその言葉にやや表情を緩ませると、少し間を置いてから技術者に問うた。

「で、建造に要する期間は」

「確約は御容赦を。しかし、私共技術者の中には大連やコムソの造船所でレクを受けている者も居ります。加えて、新たに中国やロシアの技術者を招聘する事も可能でしょう」 

「了解だ。それと運用面の方も中国のノウハウが必要になるな。それも頭に入れて置くか。それで、性能に関しては何処まで求められる」

「はい、そこに問題があるかもしれません。細心の注意をして居りますが、長期保管による経年劣化は否めないかと。所詮はバラした中古品の再生ですので。勿論、そこを補うために中国やロシアの情報を入手して居ります」

「そこは技術者マターで、こっちは信用するだけだな」と独り言の様に責任者は言うと、「それで、改造についてだが、技術的にSLBMは最大何基まで搭載可能にできるのかね」と質問を続けた。

「629型はやや大型のSLBMに換装して6基まで搭載しました。さらに、試作段階の大型SLBM用に改造されたというのがソ連での実績としてあります。これに関しても情報は入手済みです」 

「それは心強いな」と言った後で、責任者は声のトーンを落として、

「…これは多分に政治的な話になるが、そのまま629型の再生品を就役させても周辺諸国に対するメッセージが弱くなる。629型という印象は正直弱めたい。少なくとも…セイルの形状はオリジナリティを出す必要はあるだろう。それは大丈夫かね」と聞いた。

「それは既に線にして居ります。後はSLBMのサイズ次第です」と、技術者は即答した。

 技術者のその言葉に、責任者は満足して黙ったまま大きく数回肯いた。

 やや間があってから、「ところで」と技術者は責任者に話し掛けた。

「私には用兵の事は分かりませんが、最近複数のタイプのミサイルが何等かの意図を持って開発されているのは解ります。で、私共が中国から入手した情報の中に遠征51号の情報がありました。つまりですね、技術的にはSSGという選択肢も可能という事を頭の片隅にでも」と続けた。

 それを聞いて選択肢が増えた責任者は、「ほぉ」とだけ言うと、ゆっくりと口角を上げた。

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