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回収艦

回収艦


 東海艦隊舟山基地から約100NMの東方海域。この海域には今、東海艦隊所属の多数の哨戒艦艇や各種潜水艦支援艦艇が遊弋していた。この群れの中には、旧型の小型魚雷回収艦が含まれ、そして、それは波の影響を受けながら、ゆっくりと航行していた。

 この波間の下では、東海艦隊所属の039A型潜水艦2隻が、互いを敵の潜水艦と想定した対潜訓練を、無音で繰り広げていた。そして、その最終段階では、内1隻が訓練魚雷を発射することになっていたのである。


「そろそろですかね?」

「予定時間だけどね」

 魚雷回収艦の艦橋トップには、浮き上がってくる予定の訓練魚雷を捜索するため、多くの見張り員が配置されていた。

「発射したら、潜水艦からの連絡がある」

「だったら、連絡が来てから配置に付ければ良かったのに」

「しかし、まぁ、潜水艦からの連絡は発射して目標から離れてからだ。どうしても時差がでる。士官連中は訓練魚雷をロストしないようにしたいんだろ」

「南の奴らが流したからでしょ」


 それは、南海艦隊で訓練中に発射した訓練魚雷がロストして、ベトナム近海にまで漂流していたところを、ベトナムの漁民によって捕獲された件である。


「あれは確かに失態だ。旧型の魚6型の訓練用とは言えね。しかし、今回は新型の魚8型の訓練用だ。訓練用でもロストは許されない」

「確かに、今回の訓練は支援艦艇の数がいつもより多いですよね」

「訓練魚雷には、『北斗』の位置情報システムと通信装置が組み込んであるらしい」

「技術屋の連中も大変ですね。最近仕事が多くなってきているのに」

「そうだな。最近新造艦が多くて、各種システムの微調整が忙しいって言ってたな」

「それに今、こっちはあのロシア製の旧式艦を近代化改修しなくちゃいけない」

「中国海軍仕様にな」

「今の我々に、『サンバーン』の射程は短い」

「しかし…どっちにしても、今回の作業は必要だったろうな」

「まぁ、新型ですからね…確かに、ロストしたら不味いどころじゃない」

「おっ!なんだ、解ってるじゃないか。この海域でロストしたら、行き着く先は日本の可能性が高いからな」


 魚雷回収艦の艦橋トップで二人の下士官が話に夢中になっていると、西の方から爆音が聞こえてきた。話し込んでいた二人がそれに目を向けると、それは輸送機を改造した1機の洋上偵察機だった。


「虎の子の御出座しだ」

「流石、新型魚雷。数少ない航空機を出させるとは」

「これだけのコストを掛けてるんです。早く魚8型を全潜水艦に載せたいですね」

「これからの近海防御は、沖縄を越えて、太平洋が主戦場になる。潜水艦を有効活用するには絶対さ」

「米国なんかでは、対艦弾道ミサイルが注目されているようですがね」

「攻撃型潜水艦の主要兵器は、何と言っても魚雷さ」

「潜水艦の連中と話すと、操艦には自信があるようですね」

「かなり前に、米空母に近接した艦があるからな」

「しかし、あの米空母を屠るには、魚8型は何本必要なんでしょうかね?」


 突如、それは頭部を上にして、多くの艦艇が遊弋する海面に姿を現した。


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