表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/58

受信艦

 受信艦


 東海艦隊所属の遠征33号は、魚釣群島の南方海域で露頂していた。

 海面には、潜望鏡と通信マストが伸びている。

 周辺には航空機も船舶も認められなかったが、潜望鏡などによって白波を立たせないように、操艦限界の低速力を保持していた。


「受信状況は?」

「良好!」

 艦長が問うと、通信担当直員は即答する。

「了解…武器?」

 さらに艦長は武器担当直員に聞く。

「…」

「どうだ?」

「…目標位置データ入力終了!」

「了解、通信マスト下げ!」

 衛星からデータを受信し、武器管制システムに入力されたのを確認すると、艦長は通信マストを下げる号令を出しながら、自身は潜望鏡に取り付いて周囲の捜索に入った。

 対空目標と水上目標の確認のために素早く二回りし、

「対空、水上目標なし。潜望鏡下げ、全没!」と、矢継早に艦長が指示を出すと、間髪を入れず、遠征33号は潜望鏡を下ろしながら、静かに深海へと沈んでいった。


 この海域は以前、情報収集艦が長時間航行した海域である。この間、日本に対する各種情報収集を実施しただけでなく、衛星からのデータ・リンク実証実験なども行われていた。


 艦が水平状態になると、艦長は傍らの計測係である通信担当士官に話し掛けた。

「時間はどうだ?」

「計画範囲です」

「武器の方は?」

「衛星の目標データは早かったのですが、武器選択とそれへの入力に少々ロスが」

「許容範囲だろ…まぁ、衛星が直上の場合は良好か」

 艦長の一言に、静寂が支配していた発令所に安堵の空気が流れる。

 左腕の時計を無言で見ながら、

「哨戒長、次の試験まで2時間ある。戦闘直から哨戒直に」と、艦長は発した。

 海図台を睨み込んでいた哨戒長は、その声に反応して、

「了解…マイク、『艦内哨戒直にせよ』」と下令する。


 次の試験は、水平線付近に位置する衛星から、データの受信状況を確認する。

 潜水艦によって、この海域での受信があらゆる条件下で可能と実証できれば、中国艦艇はこの海域から、沖縄ラインを越えて、太平洋側の艦艇を直接攻撃できるようになる。

 これは中国海軍が注目する試験であった。


「しかし…衛星のデータ・リンクは、今後どうなるんだ?」

 急に、艦長は哨戒長に尋ねた。

「そうですね…今は一つか二つの位置情報だけですから…」

 答えに窮する哨戒長に、艦長はさらに続けた。

「リンクさせるんだ。目標全部が自動プロットされなければ意味がないんだがね」

「確かにそうですが…かなりのデータ量になります」

「データ圧縮とか…パケット通信は…時間が長くなるのかな?」

「情報通信技術の進歩は、艦長の言われる通り著しいですから、早い段階で」

「攻撃目標の情報だけで攻撃なんかできない。周辺状況が把握できてからの攻撃だ」

「艦長の言われる通りです。では、今後もこの受信試験が続きそうですね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ