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造船所

造船所


 新浦南造船所・潜水艦地区―


 ゲートを通り過ぎた二人の海軍軍官は、そのまま新型潜水艦に近づいた。

 同期で共に技術系の少佐だが、担当は潜水艦の艦体と武器とで異なっていた。


 二人は潜水艦の艦首手前で歩みを止める。

「これが南の報道にあった629A型の再設計潜水艦か…」

 武器担当が呟くと、

「ちょっと待ってくれ。何を言ってるんだい」

 直ぐに艦体担当が口を出した。

「あんな可潜艦と一緒にしないでくれよ。この丸い艦首…そしてシャープなフォルム。これまでにないような魚雷型の艦だ。他国の潜水艦にも全く劣らない…まぁ、多少ロシアや中国の協力と参考は…」と、ここに研修で到着したばかりの同期に尻切で訴える。

「あぁ…悪い。ケチを付けた訳ではない。南の報道だよ、南の」

「衛星で見ただろうに奴等も。もっと増しなコメントはないのか…脅威!戦闘能力未知数とか、朝鮮半島の軍事バランスを一変させる新型潜水艦が建造された…とね」

「残念ながら、そこまでは」と、武器担当は小さく首を横に振った。

「そう…残念。で、艦は出来たけど、武器の方はどうなんだい?」

 艦体担当は応えながら隣の同期を見やると、目を凝らして聞く。

「勿論、購入したスクラップだけを調査してきた訳じゃない。関係が悪化する前に、ちゃんと何回も旅順に行ってドック中の『長城200号』を見たし、解体中の『遠征51号』だって調査した。問題は本体の開発だね。運用可能な性能やサイズになるかだ…少なくとも、魚雷発射管用のASCMはほしいね。ロシアからでも構わない。でないと、折角のこの新型潜水艦も宝の持ち腐れになっちゃうからね」と、武器担当は静かに言う。

「あらっ、余裕だね…しかし、SLBMの方はダメなのかい?」

「そうだね…正直、中国も苦労しているノウハウについては口が堅い。浮上発射では抑止力効果が低下してしまうから、何とかしたいんだけどね」

「まっ、艦の方も改善点はあるから…」と、艦体担当もぼやく。


 岸壁に係留された新型潜水艦の整備は継続されており、セイル正横でアームを伸ばしたクレーン車の作業を、二人は暫し無言で眺めた。


 作業が概ね終わったと感じた武器担当は、造船所勤務の同期に質問した。

「で、潜水艦建造用の建屋は?」

「あっ、建屋ね」と、不意な問いかけで我に返った艦体担当は、振り返りながら、右手で指し示して、

「あの300m余り離れた建屋だ。青屋根の裏の薄緑っぽい屋根のね。今、あの建屋の後ろの方でパーツ毎に新たな潜水艦ブロックを作っている。それが完成したら、全体的な総組立てが前の方で始まる。それで粗方艤装が終われば、進水という工程になる訳。組立てエリアはまだ余裕があるから、さらに大型の潜水艦まで対応可能」と、説明した。

「あっ、あの建屋ね…」と、視線を向けて頷いて答えた。

「で、さらに…その奥と右奥の緑屋根の建屋、その二棟が現在改修中で、完成すれば今後かなりのペースで潜水艦が建造できる。勿論、潜水艦以外の艦艇も建造できるけどね」

「あぁ、あの奥の建屋の前の岸壁、進水させ易いように海側を拡張してるようだね」

 武器担当も右手を伸ばして、指し示しながら言った。

 ここに勤務する同期は黙って頷き、小声で囁いた。

「聞いた噂だけど、今後ここは新型潜水艦開発の拠点になる可能性があるとか…」

 それを聞いた武器担当は、

「そうなったら、ここに転勤になるかもしれないなぁ」と、顔を顰めて漏らす。

 それを受けた勤務者は、(不服なのか?)という表情を浮かべて見せた。


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