「暴走のハーツ」
少女は願っていた、青年との幸せな時間を、
「好和くん、何か体が重いとか、意識が重いとかの症状はないか?」
「おそらく正常だ、今はなにも感じない」
「それならいいんだが…、そういえば話し方が変わっているが、自分で変えているのか?」
「いや、変えた覚えは無い、我も今気がついた位だ、まったく気にしていなかった」
「鬼神の影響か……」
「鬼神だと?」
白夜はしまった!というように顔を反らした、好和は白夜に鬼神について聞き出そうと近づいていく、
「鬼神とはどういうことだ!、我の体にそんなものが入っているとでも言うのか!」
「……すまない、私もさっき知らされたばかりなんだ、まさかその体に鬼神…鬼の遺伝子が組み込まれているとは」
「我の体にそんなものが入っているのか!、まさか取り除けぬ訳ではあるまいな!!」
「鬼の遺伝子は取り除いても無駄なのです、鬼の遺伝子は人の体と魂に定着する、貴方の魂はもう既に体に定着しています、遺伝子を取り除いても魂に残っているから、結果鬼の遺伝子がまた再生してしまうのです」
「取り除けぬのか……ならばその遺伝子はどうなるのだ!」
「今後貴方の中で成長して、最終的には鬼に飲まれてしまうでしょう」
「飲まれるだと!?、……なぜこんなものを作った」
「軍事利用するために作ったと聞きました」
「また戦争か、お前達は望んで戦争をしているように見える」
「私達はそんな事を望んでいません」
「だが上の者が望んだ事は引き受けるか?」
「仕方のないことです」
「仕方のないことで戦争が起こるなら、我がここで暴れるのもまた、仕方のないことなのだろうな」
「それはできません、私達ドロイドは敵意を向ける者にしか攻撃できないように」
「そいつの体は違うぞ白夜殿」
「どういう事です、紫電殿!」
壁にもたれ掛かるようにしながら、紫電は話に割って入った、
「その機体は制御ユニットを取ってあるのだ」
「そんなバカな!!」
「本当のことだ」
「どうでもいい、鬼なんぞに負けなければ暴れる事もない、とにかく我はニーナ達と旅をしなければならん」
「それはできません」
紫電のその言葉に怒りを覚えた好和は、紫電の方に歩きながら問おた、
「今なんと言った」
「言葉のどおりの意味ですよ、貴方にはこの町で暮らしてもらいます」
「それは何故だ、まさか鬼が移植されているからなどと言って我を怒らせるなよ?」
「鬼の遺伝子はこの国の遺産、それを持ち出されては困りますから」
バキバキバキ!
「な!?、グっ!!」
好和は紫電の肩を片手で握り潰していた、好和は顔を近づけて紫電に言い放った、
「貴様らのエゴで我の生き方に口出しなぞさせぬ!!、ましてやこの体になったのは貴様らの不手際が原因だろう!!、我には関係など無い!!」
「ですがこれは貴方が思っているほど簡単なことではない」
「ならば選べ、ここで国を滅ぼされるか!、我に関わらぬか!」
「どちらもできません」
「やめるんだ紫電殿、私達にこの人を止める権利は無い」
「だが白夜殿、この武器は私達の遺産なんですよ!」
好和はその言葉を聞いた瞬間に紫電の首を掴んでいた、紫電はその手を掴み、逃れようと試みるが好和の手の力に反発することができない、
「我はお前達の武器ではない!!」
「離しなさい!」
「知ったことか!!、貴様のような私利私欲の為に生きている奴がいるから、戦争や紛争が終わらないのだ!!」
「それは違うぞ好和くん!」
「ならばこの戦いで何か大切な物を手にいれる事が出来るのか!!」
「ああ、私達には必要な物資だ」
「それがお前達の大切な物か!、やはりどこでも同じだな!!、どんな世界でも屑は屑か!!」
「なんだと!!」
「一番大切な物は命だ!!、人々の笑顔だ!!、貴様らが今しなければならない事は、戦争をやめる事なのだ!!、それに何故気づかないのだ!!」
「どうしたんや?」
そんな緊迫したムードの中にライアさんが入ってきた、
「……いや、気にするな」
そう言って好和は紫電の首から手を離して、部屋の扉の方にいるライアのもとに歩いていく、
「気にするなって言われても…、外まで聞こえてきたで?」
「とにかく私はこの町を出る、いいな!、この町を出る!!、行くぞライア」
「それは構わないけど、もう出るんか?」
「ああ、あまりここにいたくないのでな」
「武装兵!!、彼を捕らえろ!!」
紫電のその言葉と共に、部屋の扉から武装した兵士がズラズラと入ってくる、そして好和とライアを取り囲む、
「やめるんだ紫電殿!!」
それを止めに入ったのは白夜だった、
「なんのつもりですかな、白夜殿」
「無駄な争いはやめるのです」
「それが貴方の結論ですか白夜殿」
「そうです、やはりこんなやり方は間違っている」
「ならば貴方を反逆者とみな捕縛します!」
その言葉を合図に武装兵がジリジリと近づいてくる、そして武装兵の一人が攻撃をしてこようとした時、好和の怒りが爆発し、ありえない速さと圧倒的な力で武装兵をなぎ倒していく、
「ヴゥゥゥォォオオアアア!!」
ズガン!!、ドンドンガスン!!、
腕をもぎ、体を貫き、首を跳ねる。そのすべてが素手での攻撃で、周りの武装兵を倒した後でも怒りが収まる気配はなく、その怒りを地面にぶつける。
「ガア!!、ガヴァ!!、ガアア!!、ヴァァアア!!」
ズガン!!ズガン!!ズガン!!ズガン!!ズガン!!、
「好和!!、どうしたんや!!」
「鬼の遺伝子の影響で暴走してるんだ!」
「どういう事や!!、私とニーナを別の部屋に通したのもこのためか白夜!!」
「それは誤解だ!!、鬼の遺伝子がこの体に入っていると私は知らなかったのだ!」
「とにかくどうすれば治まるんや!!」
「私達でもわからんのだよライア殿、たとえ白夜であっても知らないだろう、これが初めての事なのだから」
「お兄ちゃん?」
好和が暴走しているこの状況の中に、なにも知らないニーナは暴れている好和が、苦しがっているように見えて、ニーナは好和のことが心配で、その姿を見た瞬間に走っていた。
「お兄ちゃん!!」
「ニーナ!!、今はダメだ!!、好和に近づくなー!!」
ライアのその言葉を聞いても、ニーナは好和のもとに走っていく、その姿と声に気づいた好和は少しだけ理性を取り戻しかけたが、走ってくるニーナの後ろに、武装兵が入ってきてこちらに構えようとしている姿を見て、まるで獣のような声をあげながらニーナに向かって走り出す、
「ヴゥゥゥオオオオアアア!!」
「ニーナ!!」
「いかん!!、武装兵!!、撃つな-ー!!」
「え?」
ニーナは何かの気配を感じて後ろを向き、自分に銃を向ける武装兵を見て驚き、次の瞬間。
パン!!、パンパンパン!!、
部屋の中に銃声が響き渡った。
久し振りだ、
そして俺はまたスランプ気味だ、
え?内容が重くなっとるって?、気にしない気にしない!!、