勾玉(まがたま)
盛大な貢物が桟橋へ山と積まれている。
邪馬台国の国力の総てを示さんという意気込みだ。
生口(奴隷)達の数も多い。
皆身を清められ、腕に翡翠の勾玉が巻き付けられて大国「魏」の国の都「洛陽」へ送られる光栄に上気していた。
伊都国の巫女が祝詞を唱え始め、ゆっくり船への積み込みが始まる。
その巫女の額に弓矢が突き刺さった。
積まれていた貢物の反物に火矢が突き刺さり燃え上がった。
対立している狗奴國の軍隊が、突然襲いかかってきたのだ。
護衛の兵達が防ごうとするが、獰猛な狗奴國の兵隊にかないそうにない。
大勢の生口達が切られ刺されて命を落としていく。
一人の生口が狗奴國の兵士に殺された。
意識が無くなる瞬間、貢物としての役目が果たせない無念を思った。
彼の腕から勾玉が弾けとび、崖の下へ落ちていった。
「魏」への使節は、それでも何とか船を出航させることが出来たが、数えるほどの生口と少しの反物しか積み込むことが出来なかった。
みすぼらしい貢物となってしまった。
……。
遥かな時間が過ぎ、糸島半島(福岡県)の海岸で勾玉を掘り当てた。
翳すと、空と同じ色の翡翠だった。




