表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

詩: モーツァルトが弾くストリートピアノ

作者: 水谷れい
掲載日:2026/03/17

18世紀の西洋貴族の装いで

白いかつらをかぶった澄んだ目の若者が

ストリートピアノにそっと指を置きました

演奏が始まります


最初の和音が 光のようにきらめくと

魔法にかけられたように

通りの空気が変わりました


ベビーカーの赤ちゃんは

 泣くのを忘れて目を丸くし


バス停の列にいた子どもは 

 アイスを傾けたまま息をのみ


信号待ちのサラリーマンは

 スマホをそっとおろし


腰の曲がったおばあさんは

 十年ぶりに背筋を伸ばしました


鍵盤の上では 軽やかな三連符が

「今日も生きててよかったね」

と言うように踊ります


公園の噴水の水しぶきは

 いつもより高く空を指し


花屋の花束は

 風に揺れながら小さくうなずき


パン屋のロワッサンからは

 もう一度 焼きたての香りが漂います



最後の和音の響きが消えると

彼は軽く礼をして

風の継ぎ目に消えました


21世紀の日本の街に

18世紀のザルツブルグの香りが

しばらくの間 そっと残っていました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ