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第二章:記憶の断片
謹慎の三日間、紅蓮は自室で古びた日記を読み返していた。
それは、母の蘇婉の遺品だった。
紅蓮よ、お前がこの日記を読む頃には、私はもうこの世にいないだろう。
だが、一つだけ真実を伝えたい。
お前は、蘇家の血を引くが、父は宰相ではない。
お前の生みの父は……皇帝だ。
紅蓮の手が震えた。
母の言葉は、衝撃的だった。
もし本当なら、彼女は皇帝の実の娘。
つまり皇子、暁の妹にあたる。
だが、なぜ母は側室として扱われ、なぜ自分は宰相の娘と偽られていたのか?
「母……なぜ、それを誰にも言わなかったの?」
その夜、紅蓮は夢を見る。
赤い衣の女が、炎の中に立っていた。
「紅蓮……復讐せよ。真実を暴け。そして、この宮廷の偽善を焼き尽くせ」
目を覚ますと、枕元に一輪の黒牡丹が置かれている。
宮中には、そんな花は咲かない。