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第38話 終結、経営術オリンピア

 「ほ、本当か!」

 ロメオは席から立ち上がりテーブル越しに乗り出す。


「ええ、卸して上げるわ。って顔が近いっ! 離れて」

「恩に着る。取引条件を詰めさせてくれ、今時間は大丈夫か」


 契約書を作るためのすり合わせをするが、基本的には私の出した条件を丸呑み。といってもアコギな条件は出さず、あくまで真っ当なビジネスとしての仕切価格にした。しかし、絹の質や流通を加味するとロメオの製造原価は確実に上がり、利益を圧迫するだろう。


「アニエスカ、今回は助かった。競合である俺達の話を聞いてくれて感謝する」

「真面目ね。もしかしアンタ、改心したのかしら?」

「……とにかく、この借りはいつか返す。お前ら、行くぞ」


 店を出ていくロメオの背中は少しだけ大きく見えた。


「なになに? アニーちゃん、ロメオの後ろ姿を見つめちゃって。まさか惚れた?」

「バ、バカな事言わないでよ! 天地がひっくり返ってもありえないからっ」


 まずロメオは絶対ありえない。二、三十歳若いバージョンのロベルトだったらわからないけど……とにかく今は恋だの愛だのにうつつを抜かしている場合じゃない。



 だって、私、お金意外に興味ありませんからっ――



 その後もアニー・アンブレラの売れ行きは好調だった。私達の絹を使った、〝新・ロメオの雨傘〟も相変わらず湯水のごとく広告費を投下しているのもあり売れている。彼らがどの程度売れているかがわかってしまうのは、私達が絹を卸しているサプライヤーだから。発注の頻度、量でざっくりと試算できるのだ。


 ここで一つ困ったことが続いている。


「おーい、アニエスカー! ちょっと相談があるんだ」

 そら来た、困りごとの元凶が。


「今度の新しい広告のデザインを、お前のところのヴェロニカに頼みたいんだが」

「別にいいけど、アンタの所の利益が私達のところに来るだけよ?」

「優れた広告を出すならば、敵にだって塩を送るさ。俺は経営者としての視点が高いからな」


 最近ずっとこんな感じだ。何かと理由をつけて私のところに来る。ちゃんとカネ貰ってるから良いけども、こう毎日毎日、教室や寿司ジョゼに来られると目障りだ。

 


「ねぇアニーちゃん。最近ロメオに、やたらと付きまとわれてない?」

「そうなの、アイツ、日課の女遊びもしないで経営術オリンピアに勤しんでるらしいわ」

「なんで、女遊びしてないって知ってるの?」

「アイツが自分で言ってるのよ〝おれは経営にしか興味がない。女遊びはやめた〟って」

「鈍感ね、それは確実にアニーちゃんにアプローチしてるのよ」

「えぇぇ? やめてよ。ロメオなんてまったく眼中にないわ」


 シルビアも変なことを言う。私は婚約破棄の時も、学院での授業の時も、プレゼンの時もロメオをコテンパンのケチョンケチョンにして大恥かかせてやったのよ。そんなロメオが私にアプローチ? ないないない。


 そういえば、私の環境に変化もあった。

 学院に編入した当初は変な悪目立ちをしてしまったせいで、私に話しかける学院生はほぼいなかったのだが、最近は教室でも廊下でも食堂でも、よく話しかけられる。


 経営術オリンピアのプレゼンのお陰もあるし、最近チラホラ見かけるアニー・アンブレラを持った女子学院生。彼女たちからのリスペクトがあるのだろう。


「ねえ、アニエスカさん、あの、私アニー・アンブレラが大好きなのです。新作で淡いブルーを作って欲しいの」

「え? 新色? うーん。考えておくわ」

「楽しみにしてるわ」


 「ねえ、アニエスカさん、あの、私アニー・アンブレラが大好きなのです。ハンカチなんて作るご予定はおありかしら?」

「今のところ無いけど……ハンカチが欲しいの?」

「ええ、アニー・アンブレラの絹ってとっても綺麗なんですもの」


 好き勝手言ってくれる。商品開発はそう簡単なものじゃないのに。でも、顧客からの意見は宝よ。今回の経営術オリンピアが終わったら、新商品を出しても良いかも。


 その前に……


 私は経営術オリンピアが終わった後の、アニー・アンブレラの権利について考えなければならない。というのも今回のプロジェクトの出資元は学院だ。基本はこの大会が終われば決算をして解散。LLP(有限責任事業組合)に近い。わかりやすく言えばアニメや映画の製作委員会方式だ。


 だけど、アニー・アンブレラの業績はかなり良く、この世界の経営学の専門家が集まっている学院が解散なんてするはずがない。かといって、私達は一エウロも出資してないわけで、事業を継続しても従業員として給与をもらうくらいしかリターンが無い。


 そんな毎日を過ごしている間に、経営学オリンピアの事業期間が終了となった。

 プレゼン会場だった大講堂に大勢がひしめき、優勝チームの発表を今か今かと待っている。


「えー、今回の経営術オリンピアの大会実行委員長を務めるラファウであーる」

 ラファウ主幹教師が壇上に立ち、今回の大会全体の講評を述べる。



 

「えー、それでは、今経営術オリンピアの優勝チームの発表をするのであーる」

 

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