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第28話 帰郷、久しぶりの我が家

 三日に渡る経営術オリンピアの予選ピッチ大会が終わった翌日の昼、中庭の掲示板には予選の結果が貼り出された。一二五組五〇〇名の中から選ばれた、一〇組四〇名が本選へと進む。


 結果、予選は一位通過だった。


「やったわ、一位よ!」

「シルビア、なにをはしゃいでいるの? アニー先生なら当たり前よ」

「す、すごい……私たち……やった」

 

 本選のピッチ大会は、持ち時間三〇分でプレゼンテーションを行う。

 順位に応じて与えられる事業資金は総額二十五万エウロ、日本円にして二五〇〇万円だ。一位十万エウロ、二位五万エウロ、三位三万エウロ、そして四位から七位が一万エウロ。これらの事業資金で一番利益をだしたチームが優勝となる。


 優勝するためには、製造原価以外にプロモーション費用も必要になる、だからどうしても一位を獲りたいところだ。


 一週間後に行われる本選ピッチ大会の要項が発表された。


 ――本選でのプレゼンテーションについて。

 一、プレゼンテーションの事業プランは予選時のものから変更をしてはならない。

 一、事業プランをヴァンドール領内にてどう展開していくかを発表すること。

 一、展開方法は実現可能な裏付けがあること。なお虚偽の発覚は失格とする。

 一、持ち時間は一チーム三〇分とする。

 一、この期間は授業に出なくても、単位は免除されるものとする。

 


「予選でプロモーションの引きを作っておいて良かったわ。まだ具体案はないけれど」

「アニーちゃん、展開方法の裏付け……これどういうことだろ?」

「例えば、販路を開拓ね。販売してくれる店の証憑(しょうひょう)を取れってことよ」

「なるほどね、確約を取ってこいってことかぁ」


 もちろん一週間以内に予測売上に到達する展開すべての裏付が必要な訳では無い。一週間で一〇店舗の卸先を開拓したならば、単純計算二ヶ月で八〇店舗開拓できる。という風に、すべてが机上の空論にならないようにテストマーケティングをしなさいということだろう。


 傘の原価が二〇エウロ、売価は一〇〇エウロを想定している。販売店には六掛けの六〇エウロで卸す。一ヶ月の目標販売数三〇〇〇本を掲げようとすると販売店を一〇〇店舗は開拓したい。


「じゃあ、本選までの一週間で二〇店舗くらい開拓すればいいのね?」

「ええ、シルビア。あなたに任せていいかしら」

「楽勝よ!一日三店舗でしょ。テレサとヴェロニカにも一緒に開拓してくるわ」


 シルビアの営業力ならば心配ない。その間に私は、三〇〇〇本分の絹を仕入れにいく。



 普段都会にいるからか、自然豊かなグレゴリアス領に入るとやけに心が洗われる。


「やっぱりグレゴリアス領は良いわね。自然豊かで平和で」

「確かに自然には恵まれていますね。しかし、最近治安も悪化しているようです」

「え? そうなの?」

「去年、失業する者が多かったので、その余波だと思いますが」


 去年、父が領地経営をしていた時だ。あの時は各地で凶作が続き、グレゴリアスの私財も使い、かなりの減税をしたのだが、失業率はかなり上がってしまったと聞く。

 まあ、これも絹がグレゴリアスの特産品となり交易品として外貨を稼げるようになれば改善するだろう。


 久しぶりの実家、庭では父が畑をいじっている。


「お父様、遂に定年後みたいな生活をし始めたわね」

「おお、アニエスカ! 久しぶりだねぇ。最近きのこの菌床栽培を始めて……えっ」


 父が、ロベルトを見て絶句している。


「どうしたの? お父様。ロベルトがどうかした?」

「ロ、ロベルト。ステッキなんて持ってどうしたのだ!」


 そういえば最近、ロベルトはステッキを持っている。足でも痛めたのか、オシャレの一環かなと思っていたけど、そんなに青ざめた顔で驚くことかしら。

 

「最近、ヴァンドール領との行き来が多いですからね、一応」

「そ、そうか。ふぅ、びっくりした。さて、アニエスカ屋敷に入ろう。今日は泊まってゆくのだろ?」

「ええ、久しぶりにお父様たちとの食事が楽しみだわ」


 食事をしながら両親に学院に入学してからの話をする。ロメオと同じクラスであること、友達が出来たこと、経営術オリンピアで予選を通過したこと。私の話を二人は嬉しそうに聞いてくれる。


「雨の日用の傘かぁ、さすがアニエスカだねぇ。トンビが鷹を生んだ気分だよ」

「試作品を持ってきたから、お父様とお母様にプレゼントするわ」

「まぁ、嬉しい! はやく雨が降って欲しいわ」


 私が学院生活を贈っている間、領地経営は私の指示の下、父が代行している。といっても実際には父が領主なので、外から見る分にはなんら変わらないのだが、実質、領主()()()()だ。


「アニエスカ、今回はどれくらいここに滞在できるのかしら?」

「んー、三日か四日は滞在しようかなと思ってますわ」

「まぁ、久しぶりにティーテイムができそうね! 張り切ってクランペット作らなきゃ」

「え、ええ……た、楽しみですわ」

 

 またパサパサのクランペットか……

 

 久しぶりの里帰り、本選のプレゼン資料を作りながらだけど、たまには羽を伸ばすのもありね。

 

 

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