【閑話】諜者、ロメオ・ヴァンドール
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「よし、お前たち。俺達はこの事業プランで行くぞ」
ロメオはAクラスの上位成績者でチームを固めた。
「このプランは、とある教諭に作らせたものだ。これならば負けるはずがない」
ロメオはヴァンドール侯爵家のカネと権力を使い、高等学院の教諭に、教科書通りの卒ない事業プランを作り上げさせた。彼は侯爵家の家督を継げば、必然とヴァンドール経営サロンに入れるわけなのだが、父に認められたい一心で学院の間にサロンへの入会を渇望していた。
「あの女、アニエスカはどんな事業プランで行くのか調べておけ、ドミニク」
「かしこまりました、ロメオ様」
彼の命令にチームの一人が動く。
「まあ、どんなに頑張ろうが俺達に勝てることは無いだろうけどな。ハッハッハ」
次の日、ロメオの命令通りドミニクが入手したアニエスカの情報を報告する。
「ロメオ様、報告いたします」
「おお、ドミニク。あいつらはどんな感じだ?」
「やつら、ここ数日、木工職人の店に出入りしているそうです」
「ほほう」
早速、木工職人の店に行くロメオたちは、扉を開けると同時に大声を上げる。
「店主、店主! 早く出てこい」
「は、はい。貴方様は領主様のご令息殿、このようなむさ苦しいところになぜ」
店の中、工房に至るまでズカズカと見て回る。
「店主、この日傘はなんだ?」
「ええ、これは、とある貴族のご令嬢からのご依頼を賜りまして……」
「ほほう、それはアニエスカのことだな?」
「いえ、お客様の情報は言えません……」
ロメオは何度も舌打ちをしながら、店の中を何周も回る。
「時に店主。この店は賃貸だよな?」
「ええ。そうでございますが」
「大家は? 誰からこの土地を借りているのだ?」
「ヴァ、ヴァンドール侯爵でございますが……」
「そうか、じゃ、来月から賃料は倍の額にするよう父上に進言しておく」
「ば、倍? それでは店が潰れてしまいます」
ロメオはため息を付く。しばしの沈黙の中、店主は震えている。
蛇に睨まれた蛙のように、動けない店主にロメオが優しい口調で話しかけた。
「なあ店主。この店の商品を見る限り、そなたの木工技術は非常に長けている」
「は、はぁ……」
「これからもこのヴァンドール領の技術発展に寄与してくれるならば、賃料を半額にしようじゃないか」
「は、半額……? み、見返りには何を差し出せば……」
「だーかーらぁ。アニエスカが注文した内容を言うだけだって。いい取引だろ? 店をたたむことになるか、家賃が半額になるかの二択なんだから」
裏取引によりアニエスカの作っている事業プランの全容をしったロメオ達は、ヴァンドール侯爵邸のロメオの自室で緊急で会議を開いている。
「皆、どう思う? 俺達のプランとアニエスカのプラン、どっちが良いと思う?」
「そ、それは勿論、教諭が作ってくれたものが間違い……無いかと」
「お、俺達もそう思います」
おもねるような顔でロメオに意見を述べるチームのメンバーたち。
「忖度は不要だ。正直、どう思う?」
「……」
「……あ、雨傘の方が格段に優れている事業プランかと」
「フハハハ。そうかそうか。気にするな。俺もそう思っていたところだ」
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