第24話 捻出、ビジネスプラン
こうして集まった凸凹チーム。だけどこれがいい。
同じ属性が集まるなんて、RPGで言うところの皆、魔法使いみたいなものだ。
今回の場合は差し詰めシルビアは戦士、テレサは魔法使い、ヴェロニカは治癒士、そして私は勇者といったところだろうか。
このチームで経営術オリンピアへのエントリーが完了した。そして、これからオリエンテーションが始まる。会場の熱気は徐々に高まっていく。
「えー、今回の経営術オリンピアの大会実行委員長を務めるラファウであーる」
オペラのコンサートホールのような広さがある学院の大講堂では、ラファウ主幹教諭の開会の挨拶が始まると。
このイベント、高等学院関係者でなくヴァンドール領の貴族や商会、更には経営サロンのメンバーまでが観客として集まる。次世代を担う者たちに注目しているのだ。
今回参加するのは一二五チーム、五〇〇名。実に学院生の半分以上という、過去最多の参加数となった。
オリエンテーション後、私達四人は二台のハンサムキャブに乗り、すっかりたまり場となってしまった私の部屋に向かった。
「アニーちゃん、今日はロベルトさんのお迎えじゃなかったのね」
「ええ、彼に頼んだ仕事があってね、二、三日いないのよ」
ロベルトには、シャリを炊くための水の調達と、絹工場の様子を見に行ってもらっている。
「それにしても五〇〇人も参加するなんて予想外だったわ」
「アニー先生がいれば楽勝♡」
テレサは定位置である私の左側へちょこんと座り、自信満々の笑みを浮かべる。
今回、予選は新規ビジネスモデルやアイデアをプレゼンテーションする、言わばベンチャーピッチ大会だ。審査員は学院の教授とヴァンドール経営サロンの幹部たち。
持ち時間の一〇分で事業計画をプレゼンする。
一週間後の予選で一〇チームが選ばれ、本選へと進む。
本選ではブラッシュアップした事業計画を、長い時間掛けてプレゼンし、順位に応じて事業資金が配られ利益の一部は学院に配当される。
当に株の仕組み……この世界にエクイティ・ファイナンスの概念があったとは。これは一体誰のアイデアなのだろう。
それから数日が経った。
私達は、アイデアを出す日々だったが、どれも大規模なもので学院生が行う規模ではない。
「他国との経済協定を結べば、交易は活発化して中規模の商会も大きな利益が得られる」
「テレサ、そんな国策レベルのものが予選を通るわけ無いでしょ」
「う……アニー先生の言う通り」
テレサのアイデア、却下。
「じゃあさ、私達四人が劇場で歌って踊って、男どもから金を吸い取るってのは?」
「地下アイドルかっ! やるならシルビアが一人で歌って踊りなさい」
シルビアのアイデア、却下。
「学院のね、制服をね、も……もっと、か、可愛くするカスタムショップ……」
「悪くないけど、限界売上が微妙……市場がちっちゃいわ!」
ヴェロニカのアイデア、惜しいけど却下。
「うーん、今日もダメね。いいアイデアが出ないわよ。アニーちゃんからなんて一つもアイデア出てこないし」
「うるさいわね、私だって色々考えてるのよ!」
「一旦、向かいの店でティーテイムしましょ。ね?」
現代日本でも、学生向けのビジネスコンテストがあり、私も審査員をやったことがあるけど、スモールビジネスしか出来ない枠の中で競わせるのはフェアじゃないと思っていた。確実に利益を出す事業プランを出すと、「新規性が無い」という評価になり、大きく利益をだすプランだと、「机上の空論だ」と評価される。
「五〇万エウロくらい事業資金として使えるなら、いくらでもアイデア湧くんだけど」
「ご、五〇万なんて、そんなの無理よアニーちゃん」
シルビアの反応が正しい。五〇万エウロあれば、中規模の交易商が出来る額だ。となると、この時代には無くて、この時代でも作れる現代の製品を持ち込むしかないか。
「ねえ、皆はさ、普段生活していて、こんな物あればいいなって物ある?」
「アニー先生、私は本の内容を一瞬で記憶できる物が欲しい♡」
「暗記パンーっ! 発想がのび太よ、テレサ。このメガネ!」
「ん、私……は、空を、自由に飛びたいな」
「タケコプターか! 未来の世界の猫型ロボット発想やめてって」
実際の天気と呼応するように、雲行きが怪しくなる。
「あーあ、雨降りそう。嫌なのよね、服が濡れちゃうの」
「ッ! シルビア! それよ、ナイスヒント!」
傘だ。この世界には日傘はあるが、雨傘が無い。既存の日傘の骨を利用して、雨に適した布に張り替える。既存のモノに異なるモノを組み合わせる――当にマッシュアップよ。
これならば、小資本で始められるし新規性もある。製造からプロモーションまでをまとめて……
「ふふふ、アンタ達! 穫るわよ! 優勝」




