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第23話 予測、経営術オリンピアの対策

「えーっ! 噂の寿司ジョゼってアニーちゃんの店だったのーっ? ホント何者?」

 嬉しそうな顔でシルビアが喜んでいる。


「どうせ、寿司が食べたいとか言うんでしょ。無理よ、予約で一杯だもの」


 ランチ営業は行列に並び順番を待てば、比較的入りやすい。が、夜営業は違う。

 一斉スタートの二回転。予約は一ヶ月後まで埋まっている。予約を取ろうと思えば一年後まで埋まるだろう。でも、それは絶対に嫌だった。


 私が前世、贔屓にしていた寿司屋があった。若くして起業した私は、夜な夜なお気に入りの寿司屋に行って、寿司を食べ晩酌するのが日課。その店の大将も若くして独立した人だった。意気投合したのは、お互いまだ軌道に乗らない時期で、更に同い年ということものあったからかもしれない。


 そのうち、東京都内の未曾有の寿司バブルもあり、この寿司屋は人気店に。一気に予約困難店の仲間入りを果たしたのだが、予約が取れるのが一年後。売上が確定するので飲食店としては予約はドンドン入れたいと言う気持ちはわかる。そうなると困るのは元常連客だ。


 常連客を蔑ろにして、カネを落とすミーハーな客の方ばかりを向いての商売は長生きしないものだ。〝予約が取れない店だから〟を動機にするような客を相手にした店の末路は決まっている。景気の悪さ、SNSでの炎上一発で客足が遠のく。すると〝予約できる店〟に成り下がる。すると、予約なんて入らないわけだ。


 結局、私が贔屓にしていた寿司屋もこの末路を辿った。


 だから寿司ジョゼは三十日以内の予約しか取れないようにしている。この時代、電話やメールなんてもちろん無いわけだから、予約するには来店するしか無いのだ。すると毎日、客で店が埋まる。これが寿司ジョゼの営業方針。


「お、お嬢さんの学校の友達かい? ちゃんと友達がいたんだな」

「ジョゼさん! 私だって友人の一人や二人……今日できた……ばかりだけど」

「ははは、じゃ、お友達に美味い寿司を振る舞わなきゃな。後で二階に届けてやるよ」

 

 

「アニーちゃん、貴族なのに、こんな狭いところに住んでるんだね」

「別にいいでしょ。お風呂とベッドとデスクがあれば。それより残り一人のアテはあるの?」

「ええ、Dクラスの子なんだけどね」

「え? なんでDクラス?」


 ヴァンドール高等学院には各学年AからDにクラス分けされている。私がいるAクラスは上位の成績を修めた三〇名程度のクラス。Bクラスはその次点といったところで、その数は一〇〇名。Cクラスは普通の成績から落第寸前の落ちこぼれまでの一五〇名、といっても卒業さえできればエリートの仲間入りなのだけど。


 Dクラスは言うと今年から新設されたクラスで、主にデザイン専攻クラスだ。プロダクトデザイン、空間デザイン、ロゴや服飾や工業デザインも学んでいる。新設された一期生の数は五〇名。


「なるほど、IFRSイファースの考え方ね」


 この世界がブランド価値を大事にする、国際会計基準IFRS(イファース)の考え方の基となっているのだろう。


「アニー先生♡ イファースってなんですか? 詳しく教えて下さい♡」

 テレサが知的好奇心を刺激されている。


「今度ね、今度! 今度じっくり教えてあげるから!」


 日本の会計ではブランド価値は一定の期間で償却されるが、国際会計基準では著しいブランド価値の低下がない場合はずっと価値として残り続ける。わかりやすく言うと、百年以上続くルイヴィトンやココ・シャネルなど、時価評価純資産以上の買収価額が付くことがブランド価値と言える。


「私の情報網からの情報と新設されたDクラス、間違いないわ。今回の鍵はDクラスにありよ」

「シルビアがそこまで自信満々に言うなら、信じてみてもいいけど、その子はどんな子なの?」

「めっちゃ可愛いのっ」

「アンタ、残りの一人を可愛い基準で決めたの?」

「そうよ! 可愛いは正義なのよっ」


 ジョゼさんが寿司桶一杯の寿司を握ってくれた。


 この寿司桶、出前のために街の職人に試作してもらったものだったけど、それが届いたんだわ。

 漆器なら雰囲気出たんだけどな。この地域には漆がないのが悔やまれる。

 

 この夜は女子三人、寿司に舌鼓を打ちながら、お茶会以来の女子トークに花を咲かせ解散となった。

 

 果たして最後の一人の人選をシルビアに任せてよいのだろうか。私の心に些かの不安が過るのだった。


 次の日の昼休み、私たち三人はDクラスへと足を運ぶ。

 さすが芸術を専攻としている学院生たち、制服の改造、着こなしが個性的だ。その中で一際目立つ長身の美女。切れ長の目に小さな顔に長い首。まるでパリコレのモデルみたいなスタイルをしている。


 ヴァンドール高等学院の制服は中世ヨーロッパの貴族のドレスを短くしたようなデザインなのだが、裾、袖など至るところからひらひらとしたレースが飛び出ている。


「なんなの? ヴァンドール坂48なの?」

 前衛的過ぎる。六百年ほど時代を先取りしているじゃない。


「ヴェロニカちゃん! ちょっと話があるの」

 シルビアが切り込む。


「え? え……あ……わわ、私にですか?」

 見た目とキョドり方のギャップが激しすぎる。


 シルビアもヴェロニカと話すのは初めてらしいが、彼女の態度を見た途端、ニヤリと笑う。この一瞬で彼女を仲間にする攻略法を理解したのだろう。


「ヴェロニカちゃん! あなた、私達に奉仕しなさい!」

「え……あ、え? ハイ、承知しました」


 即答ーーっ!

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