第2話:男装の陰陽師は愛を甦らせる2
「あとがきカオス会議」あります!
太陽の光を弾いて輝く白銀の長い髪、凛としたクールな顔立ち。
間違いない、夜刀だ。
ただ、前みたいな鋭い神気や、式神としての強大な霊気は感じられない。
穏やかで温かい、人の気配だけがそこにあった。
彼はゆっくりと目を開けて、僕と、隣にいる姉様を不思議そうに見てる。
まだ状況が飲み込めてないみたいだ。
「夜刀……」
僕の声は、喜びと安堵と、ちょっとの不安で震えてた。
「夜刀……! よかった……本当に、よかった……!」
「あ……」
夜刀が何かを言いかけたけど、もう我慢できなくて、僕はその胸に飛び込んだ。
彼の体は、ちゃんと温かい。
トクン、トクンって、確かな心臓の音が伝わってくる。
その事実だけで、涙が後から後からあふれてきた。
「う……あ……よかった……!」
抱きしめられた夜刀は、一瞬びっくりしたみたいに目を見開いたけど、やがて全部を察したみたいに、穏やかな顔になった。
そして、壊れ物を扱うみたいに、そっと僕の背中に手を回してくれた。
「泣かせてしまうとは……申し訳ございません、主。貴女こそ、ご無事でよかった」
その言葉を聞いて、僕ははっと顔を上げた。
「夜刀……! 僕を、覚えてるの?」
「もちろんです。私が貴女を忘れるはずないでしょう」
嬉しくて思わず見上げた僕の涙を、夜刀はそっと指で拭って、優しく微笑んでくれた。
(よかった、記憶、無くしてなかったんだ……!)
夜刀の視線が、背後で静かに微笑む姉様へと注がれる。
「……大願を果たされたのですね」
「うん……」
「私の選択は、間違っていなかった」
「それは……」
ホッとした様子の夜刀の言葉に、モヤモヤが広がる。
姉様を救えたのはよかった。
でも、夜刀を永遠に失うところだったんだ。
黙り込んだ僕の頬を撫で、夜刀がいたずらっぽく口の端を釣り上げた。
「私もこうして戻って来れたのです。終わりよければすべて良し、でしょう?」
「……もう!二度と会えないのかと思って、ホントにホントに怖かったんだからな!」
「……主が消えかけたとき、私も同じ想いでしたが?」
「うっ……で、でもでも!」
ポスポスと胸を叩く僕の手を、夜刀の手がそっと包み込む。
「その恐れは生きていればこそ。あのまま消滅していたら、その想いすらも消えていた」
「夜刀……」
「大丈夫です。私はここに居ます……」
静かに、宥めるように、夜刀はゆっくりと囁く。
それを聞いて、また涙があふれてきた。
「バカ、バカ……!」
「ふふ……すみません」
笑い事じゃないよ!
まったくもう!
ああ、本当によかった……。
ふと姉様を見ると、僕たちを微笑ましい様子で見守ってくれていた。
ちょっと恥ずかしいけど、今は夜刀との再会に浸らせてもらおう……。
***
ようやく落ち着いた僕は、名残惜しさを振り切って体を離し、まっすぐ彼を見つめた。
「聞いて、夜刀。君はもう、僕の式神じゃない。神様の力もない、ただの人間になったんだ。だから……これからは、自由に生きてほしい。もう僕に縛られる必要はないんだよ」
それが、僕にできる精一杯の感謝の気持ちだった。
でも、夜刀ははっきりと首を横に振った。
「お言葉ですが、主。たとえ式神ではなくとも、この命は貴女に救われたもの。たとえ人となり、非力になったとしても、私の魂は、貴女の傍にあることを望んでおります。どうか、これからもお側にお仕えする栄誉をお許しください」
その真っ赤な瞳に宿る、絶対的な忠誠心と、それ以上の深い愛情は、前と全然変わってなかった。
その変わらない想いがどうしようもなく嬉しくて、僕はまた涙が滲むのを止められなかった。
そこへ、全てを見届けた姉様の声が響いた。
「ツクヨミよ。そなたは現世を再生させ、新たな創世神となった。ならば、失態を犯した妾に代わり、そなたがタカマガハラにて世界を統べるが通り。そなたこそ、その地位に相応しい」
それは、神様の世界のトップへのお誘い。
でも、僕は穏やかに微笑んで、静かに首を振った。
「そのお言葉、すごく光栄です。でも、お断りします、姉様」
僕は自分の胸にそっと手を当てて、そこに宿るツクヨミの神核を静かに取り出した。
清らかな月の光を放つ勾玉が、僕の白い手のひらの上で淡く光る。
神核を手放すことは、神の力を捨てること。
『月神ツクヨミ』の僕との、さよならだ。
「私は、神様としてじゃなくて、人間として生きたい。真白、式神のみんな、雅姐さんや紅子さん……大切な仲間たちと一緒に、この大地の上で」
僕は深く息を吐き出すと、背筋を伸ばした。
「この神核は、姉様にお預けします。姉様こそ、これからの世界を照らし、導くべき、唯一無二の太陽神ですから」
差し出された神核を、姉様はびっくりした顔で見ていた。
でも、やがて全てを理解したように、慈愛に満ちた笑みを深くした。
「……そうか。そなたは、大切なものを既にその手にしているのだな。ならば、止めはすまい」
姉様が神核を受け取ると、その体から金と銀の二つの神気が溢れ出した。
傷ついていた太陽神の神核が、急速に回復していく。
これから姉様は、太陽と月の両方の力を持つ、もっとすごい神様として世界を治めていくんだ。
その神々しい姿を、僕は穏やかな気持ちで見つめた。
今の姉様なら、安心してこの世界を任せられる。
「たとえただの人間になっても、そなたは妾の、たった一人の可愛い妹よ。ずっと、この天から見守っておるぞ」
姉様は、そっと僕を抱きしめてくれた。
その腕は、泣きたくなるくらい温かかった。
「姉様……ありがとうございます」
こじれにこじれた神様の時代の確執を乗り越えて、僕たちはようやく本当の絆を取り戻したのだった。
【あとがき】
カオス会議:終章第2話「男装の陰陽師は愛を甦らせる」編
登場人物
朔夜:前回、前々回と、あとがきでは号泣担当なヒロイン陰陽師。泣きすぎで目が「33」になってるのはご愛敬。
夜刀:朔夜の願いで復活した元式神。ただの人間になっても朔夜の護衛は一生続ける所存。
アマテラス:すっかり“いいお姉さんポジ”を取り戻した太陽神。父&禍津神と、悩みの種を一掃できて上機嫌。
金烏ミニ:通称ピイちゃん。あとがきにだけ現れるマスコット鳥。朔夜に懐いている。
朔夜 (また夜刀にしがみついて号泣してる):
「うううっ……やあああとおおお!」
夜刀 (ニコニコしつつ背中をポンポン):
「はい、なんですか、主?」
朔夜 (しゃくりあげながら):
「じ、自己犠牲はあああ!僕の、専売特許、だからあああ!」
アマテラス (呆れて):
「それもどうかと思うがの、ツクヨミ……?」
朔夜 (鼻をぐすぐすしつつ):
「いいじゃないですか、健気なヒロインっぽくて……」
アマテラス (驚きつつちょっと引いてる):
「な!?まさか、計算ずくの行動なのか!?」
夜刀 (ニコニコを崩さず):
「さすが主。そんなところも好ましい」
朔夜 (嬉しそうに):
「うへへ。夜刀はホント、僕に甘いよね」
夜刀 (誇らしげに):
「主、全肯定派ですので」
アマテラス (困惑して):
「いや、間違ったことを指摘してやるのも愛ぞ?」
朔夜 (上目づかいで):
「姉様……ダメ、ですか?」
アマテラス (堕ちかけて):
「くっ、か、可愛っ……ええい!そんな目で見るでない!」
金烏ミニ (どこからともなく飛んできて朔夜の頭にちょこん):
「……ピッ!」
朔夜 (歓喜して):
「あああ!ピイちゃん!久しぶりだねえ。可愛いなあ……」
金烏ミニ (ご機嫌):
「ピッ!ピッ!」
アマテラス (白い目):
「金烏よ……そなたの主は妾なのじゃが?あと、カラスなのになぜ『ピイ』と鳴く?」
金烏ミニ (知らん顔で):
「……ピ~♪」
朔夜 (デレデレ):
「まあまあ、姉様。可愛いは正義ですよ!」
アマテラス (ため息をついて):
「……はあ、訳がわからぬわ」
夜刀 (ちょっとヤキモチ):
「んんっ、金烏。あまり主の頭を占領するなよ」
金烏 (なんとなく見下してニヤついてる感じで):
「……ピッ、ピピ~♪」
夜刀 (イラッとして):
「……なんでしょう、馬鹿にされているような」
朔夜 (慌てて):
「いやいや、気のせいじゃない!?」
夜刀 (薄笑いを浮かべて):
「……処してよろしいでしょうか?」
金烏ミニ (殺気で気絶):
「ピッ!?……キュウ」
朔夜 (オロオロしつつ、落ちてきた金烏ミニを両手でキャッチ):
「ちょっ!夜刀!ダメだってば!人間になっても迫力健在だなあ、もう!可哀想だし、愛護団体の人に怒られるからね!?」
夜刀 (しれっと):
「すみません、つい」
アマテラス (ガックリしつつ):
「いや、そもそも金烏は妾の眷属なのじゃが……?」
朔夜 (ハッとして、金烏ミニをアマテラスに返し):
「ああ、そうだった!姉様、うちの夜刀がごめんなさい……」
夜刀 (殊勝な様子で):
「姉上様、申し訳ございません」
アマテラス (金烏ミニを受け取りつつ、白い目で):
「いや、そなたの姉ではないのだが?」
夜刀 (ニッコリ微笑んで):
「いえいえ。そう遠くない未来に、そうお呼びすることになるかと」
朔夜 (きょとんとして):
「はえ?」
アマテラス (盛大なため息をつきつつ朔夜の頭を撫でて):
「はあ……そなたの将来が心配じゃ。これからも時々様子を見に来るかのう」
朔夜 (喜んで):
「え、姉様、会いに来てくださるんですか!嬉しい!!」
アマテラス (苦笑して):
「やれやれ、妾はこんな無垢なお子さまに嫉妬しておったのか。姉として、しっかり見守ってやらねばならぬな」
◇◇◇
姉様の苦労は続く。
次回は真白も登場します!
お楽しみに♪




