第1話:男装の陰陽師は神々の終焉を見届ける2
「あとがきカオス会議」あります!
これは……姉様の記憶?
そこは、真っ暗で、腐った匂いが充満する死者の国、常世。
神様としてのオーラを全部失って、みすぼらしい老人みたいになったイザナギ父様がいた。
彼はまだ何が起きたか分かってないみたいで、裏切られた怒りでわなわな震えてる。
「イザナミ! 我が愛しき妻よ、どこだ! 何故我を助けぬ! あの忌々しい娘が、この父に刃向かったのだぞ!」
情けない叫び声に、闇の奥からゆっくりと現れたのは、かつて彼が愛し、そして見捨てた妻、イザナミ母様の変わり果てた姿だった。
体は腐ってて、八柱の雷神が黒い稲妻みたいに体に纏わりついている。
……んだけど、なんだか僕には母様が二重に見えてて、変な感じなんだよね。
腐った恐ろしい姿の奥に、生きていた頃の、キレイで優しい母様の姿が見える。
何でだろ?
「ひっ……!」
父様はそのおぞましい姿に、恐怖で顔を引きつらせて後ずさった。
「ま、まだそのような姿をしておるとは! 穢らわしい! 我に近づくな!」
なんて、自分勝手で残酷な言葉。
聞いてるこっちが辛くなってくる。
でも、母様の表情は変わらない。
ただ、唇の端に、氷みたいに冷たくて、どこか楽しそうな笑みが浮かんだだけ。
「まあ、懐かしいお言葉。それに、妾を呼びつけておきながら“近づくな”とは、おかしなことを仰いますこと……」
その声には、恨みも怒りも感じられなかった。
「う、煩い! 妻なら何とかしろ! さっさと我を神界へ戻せ!」
その傲慢な命令に、母様はクツクツと喉を鳴らして笑う。
「化け物……。ええ、確かにこの身は朽ち果てております。ですが、まことの愛があれば、妾の姿は魂の姿、つまり生前の美しい姿のままで見えるはずなのです」
そういうことか!
僕は母様をちゃんと愛してる。
だから、キレイなままの姿も見えるんだ。
二重に見えてるのは、父様の視界も共有してるからなんだろう。
母様は、腐り落ちた指先で自分の頬を撫でた。
「……貴方様の愛など、所詮はご自身の体面を飾るための、安っぽい見栄に過ぎなかったのじゃ」
父様は何も言い返せないでいた。
美しい妻、言うことを聞く子供、完璧な世界。
全部、偉大な創造主である自分を飾るための、ただのアクセサリーだったんだ。
「貴方様は、ご自身が生み出したもの全てを、愛しているのではなく支配しているだけ。そのことに、最後までお気づきになられなかったのですね。……ああ、お可哀想に」
その言葉を合図に、黄泉醜女たちが、狂気に満ちた目でじりじりと父様を取り囲んだ。
「や、やめろ、来るな! 我は万物を創りし父神ぞ!」
父様の命令は、死者の国では何の力も持たなかった。
醜女たちは一斉に彼に飛びかかり、その体に牙を立てる。
生きたまま喰われる。
それは、自分が産み出したものたちから完全に見放された、傲慢な神にふさわしい、あまりにも惨めな最期だった。
***
「……っ!」
姉様の記憶から意識が戻ると、僕は静かに目をつぶった。
想像以上にエグい光景だったけど、不思議と可哀想だとは思わなかった。
ただ、「因果応報」っていう四文字が頭に浮かんだだけ。
(母様との約束……姉様が、果たしてくれたんだ)
常世で母神様と交わした「イザナギ父様に償わせる」っていう約束。
まさか、父様が一番頼りにしてた姉様の手によって果たされるなんて、皮肉な話だ。
僕は心の中で、常世の魂たちが安らかでありますように、と強く願った。
「……そういうわけだ、ヤソマガツヒ。妾の境遇も、そなたの思うほど良いものではなかったのじゃ」
「は、はははッ! そうか、イザナギめ、常世に堕ちたか! ザマを見ろ!」
話を聞いてたヤソマガツヒが、狂ったみたいに笑い出した。
自分の手で復讐できなかったのは残念だと言いながら、この結末は最高に気分がいいらしい。
まあ、わからなくもないけど。
「聞いておるのか?イザナギを恨むのは良いが、妾たちまで巻き込むのはお門違いじゃ」
「ほざくな!それでも神界の中心であったことに変わりはない。お前らを倒して世界を手人れる!」
ヤソマガツヒが、狂気に染まった目を僕たちに向ける。
でも、姉様も、氷みたいに冷たい目でヤソマガツヒを睨み返した。
こいつを倒して、全てを終わらせる。
「仕方ない。さあ、終いにするぞ」
姉様の瞳には、もう迷いはなかった。
「終いなのはお前たちだ……! 我らの恨みを思い知れ!」
ヤソマガツヒが呪いの言葉を叫ぶと、洞窟の中に邪悪な妖気の嵐が吹き荒れる。
でも、心を通わせて、本来の力を取り戻した僕たちの前では、そんなのはただの負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。
姉様が天に掲げた手から、全てを焼き尽くす太陽の光が、凄烈な金色の濁流みたいに放たれる。
僕も手を掲げる。
そこから全てを洗い流す月の光が、清らかな銀色の輝きとなって溢れ出した。
太陽と月。
反目していた二つの力が、今は完全に一つになる。
金と銀の光が、綺麗な螺旋を描きながら、恨みの塊に降り注いでいく。
僕と姉様の声が、神々しく重なった。
「「滅せよ!」」
「ぐ、おおおおおっ! 我らの恨みは、消えぬ……消えぬぞぉぉっ!」
ヤソマガツヒたちの断末魔は、聖なる光の奔流に一瞬でかき消された。
歪んだ魂は、浄化の光に焼かれて、チリになって消えていった。
やがて、洞窟に完全な静けさが戻ってきた。
外に出ると、森はすっかり清らかな空気で満たされていて、木々の隙間から優しい光が差し込んでいた。
僕と姉様は、どっちからともなく顔を見合わせて、そっと微笑み合った。
長かった神様たちの因縁が、ようやく、本当の本当に、終わりを告げた瞬間だった。
【あとがき】
カオス会議:終章第1話「男装の陰陽師は神々の終焉を見届ける」編
登場人物
朔夜:最後まで希望を捨てることなく信念を貫いた、ザ・ヒロイン。大好きな姉が帰ってきて超甘えモード。
アマテラス:世界を統治する太陽神。生真面目な性格のせいで闇落ちしたが妹に救われた。実は妹にはかなり甘い。
真白:朔夜を全肯定し、支え続ける、頼もしい幼馴染イケメンヒーロー。まだまだ成長途中だけど将来の期待大。
???:朔夜を陰から見守る誰か。
朔夜 (猫のようにすり寄りながら):
「姉様、お疲れさまでした!」
アマテラス (穏やかに微笑みつつ頭をナデナデ):
「そなたこそ。苦労をかけた」
朔夜 (もはや喉がゴロゴロ鳴ってる):
「いいえ。優しい姉様が帰ってきてくれて嬉しいです……」
アマテラス (心底嬉しそうに):
「ふふ……優しいのはそなたの方じゃ。改めて、礼を言う」
朔夜 (同情して):
「全部終わって、本当に良かった。父様も、ヤソマガツヒたちも、ちょっと可哀想ではあったけど……」
アマテラス (威厳に満ちた表情で):
「致し方なかろう。自業自得じゃ」
朔夜 (ため息をついて):
「……ですね」
真白 (姉妹のイチャイチャを陰から見守りつつ号泣):
「……ぐすっ、朔夜、よがったなあああ。姉ちゃんにしっかり甘えろよ」
??? (いつの間にか真白の隣に現れ):
「……本当に、良かった。幸せになっていただきたいですね」
真白 (ぎょっとして)
「うお!?だ、誰!?」
??? (ニッコリ):
「さて、誰でしょう?」
真白 (ビクビクしつつ):
「え、何!?こわっ!幽霊!?」
??? (馬鹿にしたような笑みを浮かべて):
「おやおや、陰陽師が幽霊を怖がるなど……軟弱ですね」
真白 (イラッとして):
「は!?ビビッてねえし!?ってか、あんたどこかで会った気が……そしてやたらムカつくんだけど」
??? (冷笑しつつ):
「奇遇ですね。私もです」
真白 (睨みつけて):
「その顔、ホント腹立つ!」
朔夜 (きょとんとして):
「……ん?誰かいるの?」
真白 (サッと隠れつつ、ヒソヒソ):
「うおっ!あぶね、見つかるところだった。お前のせいだからな」
??? (呆れ顔でヒソヒソ):
「貴方が大きな声を出すからでしょう」
真白 (睨みつつヒソヒソ):
「お前がそうやって……」
アマテラス (念話で):
『そこでコソコソしておるそなたら。我が妹を煩わせるなら……処すぞ?』
真白&??? (ビクッとして冷や汗):
「「!?!?」」
朔夜 (目をパチパチさせて):
「……姉様、どうかしました?」
アマテラス (ニコニコしつつ):
「いいや、何でもないぞ。それより、今後のことを考えねばのう」
朔夜 (真面目な顔で):
「……そうですね。都の様子も気になるし」
アマテラス (目を伏せて):
「まあ、ともあれ。今は、この平和を喜ぶとしよう」
朔夜 (静かに目を閉じ):
「そうですね」
真白 (真っ青になりつつ):
「ア、アマテラス様……怖えええ」
??? (冷や汗を拭きつつ):
「まったく、とんだとばっちりを喰らいました」
真白 (口を尖らせて):
「オレのせいかよ!?」
??? (真白を横目で見つつ):
「……そんなことを言っていると、また睨まれますよ?これ以上巻き込まれたくないので、私はこれで」
(朔夜に優しい目線を送った後、フッと姿が消える)
真白 (腰を抜かしてガクブル):
「ヒッ!?消えた!?ま、マジで幽霊だったのか?……ってか、結局あいつ、誰だったんだ?」
◇◇◇
???の正体、みなさまにはおわかりですよね?
はたして、彼はどうなるのでしょうか……
次回もお楽しみに!
応援、よろしくお願いいたします!




