表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)  作者: 水無月 星璃
断章:神代の章3

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/84

在りし日の追憶2

「あとがきカオス会議」あります!

しばらく景色を堪能した後、私はキラキラと輝く水面に惹かれて湖岸に近づいた。

澄んだ水の匂いが鼻腔を通り過ぎ、頭がすっきりとしてくる。


「わあ……きれいな水!」


しゃがみ込んでその清らかな水を掌で掬うと、心まで癒される気がした。


「姉様、冷たくてとても気持ちが良いですよ」


無邪気に笑う私に、姉様は苦笑を漏らした。


「あまりはしゃぎすぎて、湖に落ちるでないぞ?」

「大丈夫ですよ! 子どもじゃあるまいし!」


私が頬を膨らませた、その時だった。


穏やかだったはずの湖畔に、突如として荒々しい風が巻き起こった。

森の木々が不気味にざわめき、湖面がさざ波立つ。

これは、自然の風じゃない。

何者かの悪意を含んだ神力を感じた、その瞬間。


「あ……っ」


しゃがんでいた私は、不意の強風に体勢を崩し、ぐらりとよろめいた。

水面がすぐそこに迫る。


「ツクヨミ!」


姉様の鋭い声が響く。

彼女は咄嗟に手を伸ばし、湖に落ちそうになる私の手を力強く掴んでくれた。


風はさらに勢いを増し、嵐のように吹き荒れた。

必死に姉様の手を握り返したけど、抗いきれずにその体はついに湖へと引きずり込まれた。


「きゃあ!」


冷たい水が、一瞬にして装束に染み込み、体を絡めとる。

濡れて重くなった着物が私を水底へと引きずり込み、思うように手足を動かせない。


(神力さえ使えたら……)


力を集めようとしてみるけれど、うまくいかない。

月の女神である私は、太陽が天高く輝く日中だと神力が著しく弱まってしまうから。


(だめだ……自力では上がれない……!)


焦りが胸を締め付ける。

でも、それ以上に私を恐怖させたのは、岸の上から私を掴んで離さない姉様の存在だった。


(姉様は……泳げない!)


このままでは、姉様まで巻き込んでしまう。

私は必死の思いで、繋がれた手を振りほどこうとした。


「姉様、手を……! 手を放してください!」

「嫌じゃ! そなたを見捨てられるものか! 今、助ける!」


姉様はその手を決して放さなかった。

掴んだ腕に力を込め、全身に神力を纏って私を引き上げようと試みてくれる。


でも、その瞬間、業を煮やした反体制派の神の一柱が、ついに森から飛び出してきた。


「ええい、まだるっこしい!」


仮面で顔を隠したその神は、獣のような雄叫びを上げると、無防備な姉様の背中に凄まじい勢いで体当たりを食らわせた。


「なっ!?」

「姉様っ!?」


私が悲鳴を上げるのと同時に、姉様の体は為す術もなく湖へと突き落とされた。

岸に立つ神を睨みつける姉様に、その神は氷のような冷笑を浮かべて言い放った。


「太陽神も水の中ではただの無力な女よ。そのまま大人しく、妹神と共に沈むがいい」


「あ、あ……」


足のつかない水底へ引きずり込まれる感覚に、姉様は完全にパニックに陥り、ただもがくことしかできなかったみたいだった。


(ああ……姉様……)


普段どんなに気丈に振舞っていても、姉様だって完璧な存在じゃない。

父神様の期待に応えるべく、“完璧で在らねばならぬ”と自分を叱咤して、折れそうな心を必死に隠しているだけなんだ。


姉様の顔に絶望と諦めと、それでも私を救おうとする想いが見えた。


(このままじゃ、二人とも……!)


沈みかけていた私は、最後の力を振り絞った。


(姉様は神界の至宝……絶対に、失わせてはダメ!)


私は姉様の背後に回り込むと、その体を後ろから強く抱きかかえ、必死に水面へと押し上げた。


「姉様、姉様! ……っ……し、しっかり、してください、大丈夫です!」


自分の口や鼻が水面に出るか出ないかの瀬戸際で、私は必死に姉様に呼びかける。

でも、パニックに陥った姉様は、その声にまともに応えることができない。


「……あ、あ……」

「私が、必ず……お助け、します! ですから、どうか……あなたの神力を貸してください!」


頭の先まで何度も水に沈みながら息も絶え絶えに言葉を紡ぐ。

私の切羽詰まった声が、かろうじて届いたのか、姉様が返事をしてくれた。


「神力を……?」

「そうです…… あ、あなたの神力を……私に、流し込んで、ください!」


姉様は、もはやそれに頷くことすらできなかったみたい。

姉様を抱きしめている腕を通して、太陽の神力を流し込んでくれた。

膨大な神力が流れ込むのを感じながら、私は自身のなけなしの月の神力を合わせ、術を紡いだ。


「……転移、します!」


反体制派の神々が「くそっ、失敗か! 逃げられたぞ!」と忌々しげに騒いでいるのを聞きながら、私たちの姿は閃光と共に水面から掻き消えた。



***



対岸の草むらに転移した私は、無理な神力の行使で消耗しきり、その場にぐったりと倒れ込んだ。

姉様は、逃げていく神々の背中を殺意のこもったひと睨みで射抜くと、すぐに意識を失いかけている私を抱き起してくれた。



「ツクヨミ、ツクヨミ! しっかりするのじゃ!」

「……ね、姉様……ご無事、ですか……?」


か細い声で問いかける私の姿に、姉様の張り詰めていたものが、ぷつりと切れたみたいだった。

その黄金の瞳から、とめどなく大粒の涙が零れ落ちる。


「ああ、ツクヨミ! よかった……! まったく、そなたという子は、どこまで無茶をする……」

「すみませ……ん……」

「いや、謝るのは妾の方じゃ。妾が不甲斐ないばかりに、そなたをこのような危険な目に……すまない、本当にすまない……」


姉様の無事に安堵しながら、その涙に胸が痛んだ。

私は震える手でその頬を拭った。


「いいえ……姉様が、ご無事でよかった……。それが、私の何よりの望みですから……」

「ツクヨミ……そなたは、妾の命の恩人じゃ」

「いいえ、違います。私が落ちなければ……そもそも、私がこの湖にお誘いなどしなければ、こんなことには……」


自責の念に駆られてうつ向く私に、姉様は濡れた頬のまま、精一杯の優しい笑みを向けてくれた。


「何を言うておる。そなたは、ただ妾を想ってくれただけではないか。悪いのは、あのような卑劣な罠を仕掛けた奴らじゃ」


姉様は、神々が消えた対岸の森を、再び鋭く睨みつけた。

その瞳の奥で、静かだけど消えることのない、烈火の如き怒りが燃え上がっているのがわかった。



「妾の可愛いツクヨミを傷つけ、このような目に遭わせたこと……ただで済むと思うでないぞ……」


でも、姉様も私も、まだわかっていなかった。

反体制派の神々の執念は、この程度の失敗で潰えるほど生易しいものじゃないってことを。

そして、彼らが仕掛ける次なる策略こそが、深い愛と信頼で結ばれたはずの私たち姉妹の仲を、無慈悲に、そして決定的に引き裂いていくことになるということを。


「……雲が出てきたな。ひと雨来るやも知れぬ。帰るとしよう、ツクヨミ」

「……はい、姉様」


そう答えながら、私は強い胸騒ぎを覚えていたのだった……。

あとがき

【カオス会議】断章:神代の章3「在りし日の追憶」編


登場人物

朔夜:ツクヨミの転生体にして本編主人公。あとがきではツッコミ担当の超苦労人。

真白:朔夜の同僚兼幼馴染兼親友兼恋人候補?な爽やかイケメン陰陽師。意外と鋭い。

金烏ミニ:久々に登場の手乗りサイズ金烏。なぜか呪いの影響を受けていない可愛いだけの存在。


真白 (不思議そうに):

「あのさ、朔夜。神様って、物理でいくタイプ多いのか?」


朔夜 (キョトン):

「え?」


真白 (話を思い出しつつ):

「だってほら、体当たりしたり、手で引っ張り上げようとしたり……」


朔夜 (手をポンと打って):

「あー、そういうこと」


真白 :

「念動力的なやつイメージしてたからさ。しかも湖に落とすとか原始的すぎじゃね?」


朔夜 (頷きつつ):

「確かに。まあ、神力って超能力のイメージで間違いはないんだけど……」


真白 (興味津々):

「うんうん」


朔夜 (眼鏡[イメージ]をクイッと上げつつ):

「神ごとに得意不得意があって、時期によっても力が強まったり弱まったりするんだよ」


真白 (ビックリ):

「そうなのか!?何でもありだと思ってた……」


朔夜 (苦笑して):

「そんな便利なものでもないんだよ。特に念動力系って燃費悪くてめっちゃ疲れるんだ」


真白 (首をかしげつつ):

「なるほど。じゃあ……眷属にやらせたらよかったんじゃね?」


朔夜 (首を振って):

「眷属の強さは神核の強さに比例するんだ。最高神である姉様にけしかけたところで、返り討ちに合うだけだよ。眷属は主人の神気まとってるから、犯人までわかっちゃうしね」


真白 (納得):

「なるほど、金烏みたいな感じか。だから気の緩んだところを不意打ちしたってわけだな」


朔夜 (頷いて):

「うん。正面から挑んだって勝ち目無いからね」


金烏ミニ (小首をかしげながら登場):

「……ピイ?(呼んだ?)」


朔夜 (速攻でメロメロになって):

「ピイちゃん!?久しぶりじゃないか!もう、相変わらず可愛いなあ♡」


真白 (驚きつつ):

「うおっ!?どっから出てきた!? てか、呼んでないし、今はまだ敵だし……くっ……で、でも可愛い……」


金烏ミニ (朔夜の手に乗ってスリスリ):

「ピッ♡」


朔夜 (溶けてる):

「はあああ……癒されるううう♡」


真白 (ため息をついて金烏を指で優しく撫でつつ):

「お前も大変だな。アマテラス様には逆らえないもんな……」


金烏ミニ (しょんぼり):

「……ピイ」


朔夜 (気合を入れて):

「ピイちゃんのためにも、姉様を助けないとね!」


真白 (こぶしを握り締めて:)

「優先順位が “金烏>アマテラス様“ になってる気がするけど、とにかく頑張ろう!」


朔夜 (こぶしを突き上げて):

「おー!」


◇◇◇


可愛いは正義。

本編よりめっちゃヤル気でた朔夜たちでした(笑)

次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ