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転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)  作者: 水無月 星璃
第9章:烏兎相剋、神々の奸計

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第3話:男装の陰陽師は策を練る1

山奥に響き渡っていた槌音は、七日七晩続いた後、ぴたりと止んだ。

工房から現れた宗近さんの顔には深い疲れが刻まれていたけど、その瞳は職人としての誇りと達成感で満ちていた。


彼が恭しく差し出した白木の鞘に収められた一振りの刀。

対アマテラス用の切り札、「月影刀」。


危険を承知で、命がけで打ってくれたその一振りを受け取ると、ずしりとした重みが腕に伝わってきた。


(みんなの想いと、守るべき人たちの命の重みだ……)


気の引き締まる思いでゆっくり鞘から抜き放つと、刃が月光みたいな青白く澄んだ光を放つ。

刀身には、空にたなびく雲みたいな美しい刃文が走っている。


「……すごいな」


刀に意識を集中すると、二つの相反する力が流れ込んでくる。

一つは、全てを薙ぎ払おうと荒々しく猛るスサノオの神力。

そしてもう一つは、全てを包み込んで鎮めるような静かな神力。

僕自身の内に眠る、ツクヨミの力だ。


二つの力を完全に調和させて使いこなせなければ、この刀は僕を飲み込んで暴走してしまう。

完成したからって、それで終わりじゃないんだ。


だから、月影刀の作成中から完成後の数日間にかけて、僕たちはそれぞれの修行に明け暮れた。

僕は里の外れに結界を張って、月影刀との同化トレーニングに全力を注ぐ。

夜、月光を浴びながら刀を握って瞑想していると、刀に宿るスサノオの荒ぶる神力が、僕に牙を剥いてきた。


(落ち着いて……大丈夫……)


激しい力の奔流を、僕の静かな神力で包み込むように。

根気強くスサノオの神力との対話を続けた。


その様子を、夜刀は一瞬も目を離さず見守ってくれている。

万が一の時は、彼が命を懸けて僕を守るつもりなのが、ひしひしと伝わってきた。


真白も、自分の役割を果たすために全力を尽くしていた。

苦手な瞑想で精神力を高め、その合間にものすごい数の霊符を書き上げている。

一枚一枚に強い想いが込められた霊符は、前とは比べ物にならないくらい強力な霊力を帯びていた。


夜刀からの報告によると、都に残った仲間たちも、それぞれできることをして過ごしているらしい。

竜胆丸は陰陽寮に協力しながら都の異変を調査し、狗と狛の双子は連携技の修行に励んでいるそうだ。

みんな、僕たちの「居場所」を守るために戦ってくれているんだ。

僕も、頑張らないとね!



***



月影刀の完成から三日後。

ついに力の制御に成功した僕が、真白と夜刀を連れて屋敷へ帰ると、式神たちが温かく出迎えてくれた。


「朔夜様、お帰りなさいませ!」

「朔~!お帰り~!」


その声に、僕の頬が自然と緩む。

やっぱり、ここが僕の帰る場所だ。


一息ついた後、竜胆丸から報告を受けた。


「……そうか。やはり、上級妖魔が現れたか」

「うん。奴ら、神出鬼没な上に、やけに組織的に動いてやがるんだ」 4

「マジかよ。上級妖魔は知能が高いってのは、本当だったんだな」


真白がぼやく横で、僕は腰に差した月影刀を握りしめた。


「下級妖魔を操って襲撃を繰り返してて、陰陽寮も対処しきれてない。……朔夜様、どうする?」

「とりあえず、後で陰陽寮に顔を出してくる。ありがとう、竜胆丸。助かったよ」

「べ、別に、これくらいどうってことないし……」


耳を赤くしてそっぽを向く竜胆丸。

可愛いなあ……なんて思ってると、ツンツンと袖を引かれた。


「朔~!俺たちも、しぎょう、がんばったんだぞ!」

「狗兄、『修行』です。朔夜様、わたしたちの連携技、見て欲しいです!」


黒いフワフワの尻尾をブンブン振り回す狗と狛。

か、可愛すぎる……。


式神たちに癒されながら、僕は自宅に帰ってきた安心感に包まれていた。



***



翌日、僕の屋敷で作戦会議が開かれた。

いつものメンバーに加えて、今回は紅子さんにも参加してもらっている。

議題は、上級妖魔の討伐と、万が一姉様――アマテラスが顕現した時の対策についてだ。


「忙しい中、集まってくれてすまない。みんなの力が必要なんだ」

「水臭いこと言うなよ、朔夜」

「そうですわ、朔夜様。わたくし、頼っていただけてむしろ光栄ですもの」 4


真白と紅子さんが即答し、他のメンバーも当然とばかりに頷く。

その温かい想いに、胸の奥から力が湧いてくるのを感じた。


まずは上級妖魔の対処について、夜刀が役割分担を提案する。


「基本的に上級妖魔は、主と私。中級程度のものを真白殿と雅殿。下級のものを竜胆丸、狗、狛で対処する、という形でいかがでしょう?」

「ああ、いいんじゃないか。ただ……」


僕は紅子さんに笑顔を向けた。


「今回は、紅子さんにも前線で手伝って欲しいんだ」


そう言うと、紅子さんは「まあ!」と嬉しそうに声を上げた。


「わたくしにできることなら、何でもいたしますわ!」


紅子さん、いつも後方支援ばかりなのを気にしていたからね。


「助かるよ。紅子さんには、この屋敷の僕の仕事部屋で、水鏡を見ながら助言をしてほしいんだ」

「なるほど。それはようございますけれど、霊力のないわたくしに、そのような大役が……?」

「大丈夫。特別な術で、霊力がなくても水鏡が見えるようにしておくから」

「まあ、そんな術が……!」


素直に驚く紅子さんの隣で、真白がニヤニヤしながら茶化してきた。


「それをサラッとできるお前、マジでやべえわ」


僕は軽く睨みつけてから、話を続けた。


「今回は、僕も上級妖魔にかかりきりになる。戦場全体を俯瞰して見る余裕はないだろう」

「そうですね。上級妖魔を相手取りながら、同時にみなの状態を確認して指示を出すのは、主でも難しいでしょう」


さすが夜刀!

僕の言いたいことがよくわかってる。


「そこで、紅子さんの出番ってわけだ」


僕は鳥の形をした霊符を取り出し、その使い方を説明する。

紅子さんが霊符を介して水鏡に映った戦場の様子を把握し、危険があれば思念を飛ばして仲間に知らせる、という作戦だ。


彼女の冷静な観察眼と的確な判断力は、何度も僕たちを助けてくれた。

だから、適役だと思ったんだ。


「わかりましたわ!わたくし、しっかりお役目を果たしましてよ!」


頼もしい紅子さんの言葉に、みんなも納得の表情だった。



そして議題は、対アマテラスへ移る。


「万が一、姉様が顕現したら……いや、ほぼ確実に来ると思うけど」

「でしょうね。この神気の高まり方は尋常ではありません」


夜刀の言葉に、みんなの表情が引き締まる。


「アマテラス様ほどの神が本気を出せば、その余波だけで世界が崩壊しかねません……」

「そこで、アタシの出番ってわけよ」


雅姐さんが提案したのは、特殊な亜空間『幽玄領域』での決戦だった。


「アタシの力で空間に裂け目を作り、その『幽玄領域』にアマテラス様を誘い込む。そして、朔夜ちゃんと夜刀ちゃんごと、一時的に封じ込める。これが最も被害を抑えられる策よ」

「幽玄領域……?」


真白が眉をひそめる。


「ええ。時間も空間も、あらゆる理が歪んだ混沌の場所よ。神の力を持たない者が立ち入れば、一瞬で精神が崩壊し、存在そのものが消滅しかねない。だから、行けるのは神核を宿す朔夜ちゃんと夜刀ちゃん、あなたたち二人だけ」

「幽玄領域……良い案だな」

「でしょ?」


僕もその空間は作れるけど、空間操作は雅姐さんの得意分野だし、何より力は温存したい。

僕が姐さんの提案に乗った、その時だった。


「待ってくれ!オレも行く!」

「真白?お前、何を言って……」


僕の声を遮り、真白が切迫した様子で叫んだ。


「朔夜をそんな危険な場所に行かせられるか!」

「気持ちはわかるけど、無理よ、真白ちゃん」


雅姐さんが静かに首を振る。


「さっきも言ったけど、ただの人間のアンタがあの領域に入るのは自殺行為よ。アンタの力は、地上でこそ最大限に生きる。朔夜ちゃんたちが戦いに集中できるよう、地上を守るのが、アタシたちに残された重要な役目なのよ」

「……くっ……」


悔しそうに唇を噛む真白に、僕は優しく語りかけた。


「気持ちは嬉しいよ、真白。でも、お前には、僕が帰る場所を守っていてほしい」

「……わかった」


僕にそう言われては、真白も頷くしかなかった。

こうして作戦は決まった。


それぞれの戦いが、始まろうとしていた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

本作は同タイトルの通常版をベースに、文体をライトノベル調にリライトした“別バージョン”です。通常版はカクヨム様とnoteに掲載中。noteは一部有料でSS(キャライメージイラスト付)付いてます。※2話まではSSも無料で読めます!


もし楽しんでいただけたら、ブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけると、ありがたいです。

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