初デート?は怪異と共に
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時間軸やら世界観やら、細かいところは華麗にスルーして気楽にお読みください。
不憫可愛い真白が好きな方におススメです(笑)
金烏京の街中にひっそりと佇む、陰陽道具専門の店。
普段は静かな空気を纏う朔夜も、珍しい護符や道具が並ぶこの空間には、わずかに目を輝かせていた。
「わあ……こんなにたくさんの霊札、初めて見るかも……」
朔夜はそっと指先を伸ばし、棚に並ぶ霊札や護符を眺める。
その声音は、どこか浮き立つように弾んでいて、男を演じている普段の様子とは違う、年相応の少女のそれだった。
店内には奥に座した店主の他に人影もなく、気が緩んだのか地が出ている。
「な、な? いいだろ、ここ!」
真白は得意げに胸を張った。
今日は、あの夜刀もいない。これは、初めての――デート、なのだ!
もっとも、当の朔夜はそんな意図などつゆ知らず、ひたすら真剣な表情で道具を見比べている。
「真白、これ……見て。この結界符、すごく精緻な編み方してる……」
「だろ? ここの店主、すげー腕利きなんだってさ」
和やかな空気が流れる中――
ふと、真白は背筋を冷たいものに撫でられる感覚に襲われた。
(……ん?)
視線をそっとずらすと――。
棚の隙間、古びた壺の中から、ぎらりと赤い光が覗いていた。
――白蛇。
それも、見覚えのありすぎる、あの憎き存在。
(……夜刀⁉)
真白は一瞬、目を疑った。
入口の扉は閉まったままだったはずだ。誰も出入りした気配もない。
なのに、なぜ……どこから、どうやって……!
心の中で慌てふためきながらも、真白は必死に平静を装った。
(やべぇ、でも……今だけは。今だけはオレの時間なんだからな⁉)
それから20分ほど。
横目で白蛇――いや、夜刀を警戒しつつも、真白は何事もないふりを続ける。
朔夜は全く気付かず、「これ、持ち歩き用にいいかも……」と無邪気に微笑んでいた。
その姿が可愛すぎて、真白はさらに「今だけは邪魔されたくない!」という決意を強くする。
だが――
道具箱の陰、屏風の後ろ、時には天井近くの梁の上。
店内を移動するたびに、どこかしらから白蛇がぬるりと現れ、真白をじろりと睨んでくる。
知らず、冷や汗が額から流れ落ちる。
「真白、なんでそんなに汗かいてるの?」
「え⁈いや、その……な、なんかここ暑くねぇ?いやー、暑い暑い」
咄嗟に手でパタパタと顔を扇いで誤魔化し視線を逸らす。
朔夜は「えー、そうかな?」と怪訝な顔をしながら、これまた可愛らしく首を傾げる。
(グハッ……可愛いが過ぎる……!)
無自覚な”可愛いの暴力”に、真白は思わずデレデレになってしまう。
だがその視界の先――陳列棚には、堂々ととぐろを巻いた白蛇の姿が。
牙を剥き、長い舌をチラつかせ、シャーッという威嚇音まで聞こえてきそうだった。
初めこそ、主の邪魔にならぬよう息を潜めていたが、もはや隠れることすら止めたらしい。
(あからさまに監視してんじゃねーよマジで……!!!)
真白は内心で悪態をつきながらも、平静を装い続けた。
***
やがて、買い物を終え、二人は店を後にする。
「……まいど」という不愛想な店主の声を背に、店の戸を開け、陽光きらめく街の通りへ一歩踏み出す。
眩しさに一瞬目を眩ませつつ、朔夜に声をかけようと視線を上げた瞬間――。
「……!」
目の前に、墨色の衣を纏った夜刀が、仁王立ちしていた。
しかも、満面の笑みを浮かべながら、赤い目だけが全く笑っていない。
「……あれ、夜刀? どうしたの?」
朔夜が小首をかしげて問いかける。
その可憐な仕草に、真白は胸をぎゅっと掴まれ、密かに悶絶する。
夜刀は朔夜に向かって柔らかく微笑むと、恭しく言った。
「お買い物は楽しめましたか、主?」
「ああ!楽しかったよ」
無邪気に笑う主に、夜刀はさらににこりと微笑んだ。
だが、その穏やかな笑顔とは裏腹に、射抜くような鋭い視線が真白を捉える。
(……オレ、なんか、めっちゃ殺意向けられてる気がする……!!)
「では、帰りましょう」
夜刀は自然な動きで朔夜に手を差し出す。
朔夜はぱちぱちと瞬きをして、少し戸惑い気味に小声で言った。
「え、手……つなぐの?……人前で、恥ずかしいよ……」
その声は、ほんのりと羞恥を帯びていて、思わず真白は身を乗り出した。
「攫われては一大事ですから」
夜刀は微笑みを崩さず、朔夜の手をそっと取る。
「さ、攫われたりしないって!」
朔夜が慌てて言うと、真白もたまらず叫んだ。
「待て待て待て!朔夜はこれから、オレと甘味屋行くんだぞ!」
「え、そうなの?」
きょとんとする朔夜に、真白は全力でうなずいた。
「そうなの!!」
だが、夜刀は冷静だった。
「主にそのご予定はなさそうですが」
にっこりと答えるやいなや、夜刀は朔夜の手を引いて歩き出そうとする。
「え、えぇっ⁉ 夜刀、ちょっと⁉」
焦った真白は、朔夜のもう片方の手をがしっと掴む。
「だから待てって! 朔夜はオレと――!」
「……主の手を、放しなさい」
「お前がな!!」
火花を散らす二人。
その間に挟まれて、朔夜は困ったように顔をしかめた。
「……もう!喧嘩するなよっ」
ぷくっと頬を膨らませ、ふくれっ面で言う朔夜。
「なら、三人で行こう!」
「は⁉」
真白が間抜けな声を上げる。
「主がそれを望まれるなら」
夜刀はあっさりと了承した。
「な、何言ってんだよ……!朔夜、オレと二人で行こうぜ?」
焦った真白は必死で食い下がるが――。
朔夜は上目遣いで真白を見上げると、ちょっぴりすねたように言った。
「……三人じゃ、だめ……?」
その一言に、真白は完全にノックアウトされた。
「……ダメ、じゃないです……」
がっくりと肩を落としながら答える真白に、朔夜はぱあっと笑顔を咲かせた。
「よかった!じゃあ、はやく行こう!」
にこにこと朔夜が歩き出す。
夜刀も静かに微笑みながら「御意」と従う。
そして――。
真白は、心の中で絶叫した。
(オレの初デートがあああああ!!!)
<完>
ここまで読んでくださってありがとうございます!
もし楽しんでいただけたら、ブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけると、朔夜たちがより頑張ってくれます!




