第3話:男装の陰陽師は母神の願いを継ぐ3
「あとがきカオス会議」あります!
「……何よ、これ!?」
「主!」
「……朔夜!!」
仲間たちが、次々と渦に飲み込まれていく。
「今助ける!」
僕は呪文を唱え、光の玉で仲間たちを包み込み、渦の中から救い出した。
「母様! こんなことをしたら、世界が滅びてしまいます!」
僕の声は、もう届かないのだろうか。
どうすれば、狂気に落ちた母を、この世界を救えるんだろう。
「……母様」
僕は剣を下ろし、静かに彼女に歩み寄った。
「私だって、父様には愛されていません。姉様にも、憎まれています」
感情を抑えたつもりだったんだけど、その声は思った以上に悲しい響きになってしまった。
「前世の私は、母様と同じでした。孤独と哀しみに、ずっと苛まれていたんです」
「……」
「だから、私なら理解できます。あなたの孤独を。あなたの絶望を」
でも、と僕は続ける。
「今の私には、仲間がいます。式神たち、雅姐さん、真白、紅子さん……みんなが、私を支えてくれています」
僕は、光の玉の中から心配そうに僕を見守る仲間たちを見つめた。
「母様には、そんな存在がいなかった。ひとりで、あの深い絶望と向き合わなければならなかったんですよね」
「……黙れ」
僕は母様の前に膝をつき、深々と頭を下げた。
「だから、私があなたの最初の理解者になります。あなたの痛みを、一緒に背負わせてください」
「……」
「そして、約束します。現世の人々に、死者への敬意を忘れさせません。あなたの統べる魂たちを、二度と蔑ろにはさせません」
僕は顔を上げて、まっすぐに母様を見つめた。
「どうか、復讐をお止めください。あなたの本当の願いは、ただ愛されることだったはずです」
「黙れと、言うておる……!」
イザナミの瞳が、わずかに揺れた。
「生者が死者に向ける愛など、ありはせぬ……」
「では、私が証明します」
僕は立ち上がると、みんなの方を振り返った。
みんな、不安そうに僕を見ている。
うん、みんなが思っていることは正しいよ。
(……ごめん)
僕はそう呟いて、みんなに背を向ける。
そして、母様にゆっくりと歩み寄った。
「私が、あなたを愛していることを。娘として、あなたを心から慕っていることを、証明します」
「やめよ! 何をする気だ!?」
僕の腕が、母様へと伸びる。
「触れれば、そなたも常世から永遠に出られなくなるのだぞ!?」
僕は「わかっています」とだけ言って、微笑んだ。
「永遠に、私があなたのお傍にいます。それが、私の愛の証です」
そう告げた瞬間、みんなが口々に叫ぶのが聞こえた。
「朔夜、ダメだ!」
「主!お止めください!」
「朔夜ちゃん、止めて!」
「朔夜様!ボクを置いて行かないで!」
「朔!」
「朔夜さま!」
みんなの悲痛な声に、一瞬手が止まる。
でも、もうこれしか方法が思いつかないんだ。
意を決して母様に触れようとした瞬間、母様が後ずさりして、僕から距離を取った。
「やめよ、ツクヨミ!」
「母様……?」
「もう……よい……」
母様の瞳から、ついに涙が溢れ出した。
同時に、世界を飲み込もうとしていた瘴気の渦が、彼女の元に収束して、跡形もなく消えていく。
『黄泉返り』の術が解かれたんだ。
袖で涙を拭い、母様は深いため息をついた。
「……娘を本気で犠牲にしようとする母親が、どこにおる……」
「やっぱり、母様は優しいです……」
「このような仕打ちを受けて、よくもまあ、そんことが言えるものだ」
自嘲気味に呟く母様に、僕は笑顔を見せた。
つられて、母様もふっと微笑み返す。
母と娘の、和解の瞬間だった。
「ツクヨミ……愛しき、我が娘よ……」
「母様……」
母様の身体から、黒い瘴気がゆっくりと消えていく。
復讐という名の呪いから、彼女はついに解放されたんだ。
「……アマテラスとスサノオは、息災か?」
落ち着きを取り戻した頃、ぽつりと、母としての言葉が漏れた。
「……スサノオは、神界で大暴れして現世に追放された後、現世でも暴れて封じられたそうです」
「まったく、仕方のないやつじゃ……」
母様は疲れた表情のまま、懐かしそうに笑った。
「ならば、スサノオはしばらくそのまま反省させておけ」
「はい……それから、アマテラス姉様は、その……」
僕が暗い顔で言い淀むのを見て、母様は何かを察したようだった。
「……あの子は、支配者としての重圧に、ずっと苦しんでおったからのう」
母様の目から、また一筋の涙がこぼれ落ちた。
「どうか、あの子を救ってやっておくれ。そしてそなたも、どうか幸せに……」
その顔は、慈悲深く優しい、母の顔だった。
次の瞬間、萩壺更衣の身体から神核がするりと抜け出し、光の玉となって常夜宮の奥深くへと吸い込まれていった。
母様は長い苦しみから解放されて、安らかな場所へと還っていったんだ。
母様の支配から解放された更衣は、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
僕は、彼女の乱れた着物を整え、その肩にそっと上着をかける。
「さあ、帰りましょう」
こうして、常世で起きた事件は、本当の終わりを迎えた。
***
現世へと戻った僕は、常世へと繋がっていた壁に手をかざす。
ツクヨミの力で、二度と現世と常世が交わることがないように、強力な封印の結界を張った。
禍々しい紫の光を放っていた紋様は輝きを失って消え去り、後には埃っぽい壁だけが残された。
(母様、あなたの想いは決して忘れない。もう二度と、蔑ろになんてさせないから……)
夕闇が迫る金烏京の空を見上げる。
白い三日月が、まるで僕たちを見守るように浮かんでいた。
(兄様との約束も、絶対に守るから……)
僕は、愛する人たちとの思い出を胸に、新しい一歩を踏み出す。
――この穏やかな夜が、次なる嵐の前触れだと知るのは、もう少しだけ、先のことだった。
【あとがき】
カオス会議:第7章第3話「男装の陰陽師は母神の願いを継ぐ」編
登場人物紹介
朔夜:壮大な母娘喧嘩に終止符を打った神様系陰陽師。今日も今日とて満身創痍。
真白:親友ポジションから恋愛戦線へ駆け上がるワンコ系男子。でも強力なライバルが多すぎて震えてる。
夜刀:一途な忠犬系式神。今回、主に“置いていかれた感”MAX。珍しくスネモード。
雅:頼れるサバ女系舞姫姐さん。からかい甲斐のある子たちに囲まれてご満悦。
竜胆丸:ツンデレ半妖式神男子。本編ではずっとデレだったので、あとがきで本領発揮?
萩壺更衣:今章のラスボス・母神イザナミの支配から解放された寵姫。え、解放されたよね?
※狗&狛は疲れすぎてお昼寝中。寝る子は育つ。
真白 (元気爆発):
「いや~、めでたい!なんかわかんないうちに呼ばれて、ピンチになって、気付いたら終わってたけど、めでたい!」
竜胆丸 (ちょっとオコ):
「てかさ、ボクたち、萩壺更衣がイザナミ様だったなんて聞いてないんだけど?」
真白 (ビックリ):
「え、萩壺更衣がイザナミ様!?そうだったのか!?」
雅 (ケラケラ笑いながら):
「やだ、真白ちゃん、わかってなかったの?更衣が覚醒したときに、朔夜ちゃんが“イザナミ様の神核”って言ってたじゃない」
夜刀 (クールに):
「……頭の作りがシンプルな真白殿には難しい話だったようですね」
真白 (プチッとキレて):
「は!?夜刀、てめえ馬鹿にすんなよ!」
夜刀 (ニヤニヤ):
「すみません、つい本音が……」
真白 (顔を真っ赤にして):
「お、お前なあああああ!!」
朔夜 (うんざり):
「ああ、もう二人ともやめろって!ちゃんと説明しなかった僕が悪かった!ごめんて!」
萩壺更衣feat.イザナミ (湯呑片手にいつの間にか居る):
「ほんに仲の良いことよのお……ズズッ」
朔夜 (ビックリ):
「え、更衣様!?じゃなくて、母様!?常世で眠りについたんじゃないの!?なんでしれっとお茶啜ってんの!?」
萩壺更衣feat.イザナミ (そ知らぬ顔で):
「寝るのも飽きたわ。それに常世は暇すぎてのお」
朔夜 (困惑):
「だからって僕の渾身の結界、軽々越えて来ないでよ。自信無くすわ……あと、更衣様にちゃんと体返してあげて……」
萩壺更衣 (ニコニコ):
「大丈夫ですわ。私の意識もありますの。むしろイザナミ様のお陰でたまに“私TUEEEE”できて楽しいですわ♡」
朔夜 (引いてる):
「えええ……喜んじゃってるよ、この人……」
雅 (楽しそうに):
「まあ、朔夜ちゃんにも現世にも、ちょっかい出さないなら良いんじゃない?」
萩壺更衣feat.イザナミ (嬉しそうに):
「おお、そこの白拍子は話がわかるではないか!」
竜胆丸 (不貞腐れ気味):
「ねえええええ、ボクたちまた置いてけぼりなんだけど!?」
朔夜 (苦笑):
「ごめん、ごめん。後で甘味屋連れてくから、機嫌直して?」
竜胆丸 (実は甘党):
「甘味屋!?…‥ふ、ふん。そんなんじゃ誤魔化されないけど、まあ行ってやっても良いよ?」
真白 (目を輝かせて):
「はいはい!オレも!オレも甘味屋行きたい!」
朔夜 (ため息):
「わかったよ。もうみんなまとめて連れてく。式神全員と、雅姐さんと、今いないけど紅子さんも!」
雅 (はしゃぎながら):
「きゃ~!嬉しい♡さすが朔夜ちゃんね!」
夜刀 (珍しく不機嫌):
「……お供しますよ。もう主に置いて行かれるのはごめんですから」
朔夜 (焦り):
「えええ、夜刀怒ってる!?え、なんで!?」
夜刀 (ジト目):
「今回は特に、“お一人で” 色々と無茶をされてましたからね」
真白&雅&竜胆丸 (頷きながら):
「「「ああ、それは確かに」」」
朔夜 (めっちゃ焦って):
「えええ……だって、さすがに母様相手はさ、みんなには厳しいかなって……」
夜刀 (哀しそうに):
「御身を犠牲になさるのは、本当にやめていただきたい……」
朔夜 (滝汗):
「あ、あれはその、不可抗力というか……うう……ご、ごめん。もうしません……」
萩壺更衣feat.イザナミ (ニコニコ):
「ふふ……ツクヨミは愛されておるの。安心したから母は帰るぞ」
朔夜 (半泣き):
「ちょっ、母様、この空気の中置いてかないで!?ちょっとは助けてよ!」
萩壺更衣feat.イザナミ (ニコニコしつつ退場):
「自業自得であろう。自分でなんとかせい。ではまたの……」
朔夜 (涙目):
「ホントに帰っちゃったよ!もう!元はと言えば、母様のせいだからねえええええ!!」
◇◇◇
頑張ったのに怒られて納得のいかない朔夜でした(笑)
次章はついに玄道と対決!
怒涛のボスラッシュに朔夜のSAN値はガリガリ削られてます。
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