第3話:男装陰陽師は式神・夜刀に救われる
「あとがき」に恒例の(?)カオス会議付いてます!
僕が死を覚悟した刹那、空間を切り裂く白銀の一閃。
「どけ、雑魚どもッ!」
雷鳴みたいな怒号と共に、妖魔たちが風のように吹き飛んでいく。
「――夜刀!」
銀の髪、紅の瞳。僕の式神(使い魔)にして、頼れる相棒(たまに過保護)な夜刀が、音もなく膝をついた。
「主、遅れて申し訳ありません」
その声はいつものクールな調子なんだけど――なんか、焦ってる?
しかも、妙に優しい視線を投げてくる。
「霊気の乱れは察知していたのですが……所在の特定に少々、時間を要しました」
立ち上がった夜刀が、スッと僕に近づいて、いきなり頬に指先を添えてきた。
「ちょ、なに?」
「傷の手当です。微細ですが、出血が確認できたので」
その言い方、めちゃ事務的。
でも、触れ方が……なんていうか、やたら丁寧で。
「……ありがと。助かった」
夜刀の掌から、あたたかな霊気が流れ込んでくる。
すうっと、心まで癒されていく感じ。
僕が礼を言うと、夜刀はほんのちょっとだけ微笑んだ。
あ、それズルい。かっこいい。
「急ぎ、ここを離れましょう」
状況を即座に判断した夜刀は、僕の手をとって走り出そうとする。
彼の手は冷たくて、でも不思議と安心感がある。
(――え、ちょっと待って。この手、前より長く握ってない?気のせい?)
……いや、たぶん気のせい。
けど、そんな空気を裂くように、洞窟の奥から声が響いた。
「邪魔が入ったか。まあ、良い」
同時に、妖魔たちの気配が一瞬で霧散する。
ぞわっと背筋を撫でるような低音ボイス。
「だが陰陽師よ。運命からは誰ひとり逃れられぬ」
(なんか……声だけで嫌な予感しかしない)
けど、退くわけにはいかなかった。
「西市で女性を攫ったのは、お前なのか」
夜刀の制止を振り払って、声の主に向かって一歩踏み出す。
「クク……そうだ。“計画”に必要な者を探していた。あの女――顔は似ていたが、神核は宿していなかった」
やっぱり。志乃さん、巻き込まれただけだったんだ……!
「貴様を見つけられたのは僥倖だ」
「志乃さんは無事なんだろうな!?」
思わず詰め寄る僕に、声の主は愉快そうに笑った。
「無事か否かは、貴様次第よ」
うわあ……嫌な感じしかしない。
「我らの計画に協力するのであれば、無事に返してやろう」
「……協力って、何を?」
「それは、いずれわかる」
ますます怪しい。夜刀が鋭く声を放った。
「主、お耳を貸してはなりません!」
でも、僕は彼に目で合図して――止めた。
「……まずは、彼女の無事を見せてくれ」
「よかろう」
呪が唱えられ、空気が震え始める。
(……あれ?この術、陰陽術じゃない。違う、もっと……別物だ)
貴族女性が着る十二単の袖が、ちらりと見えた気がした。
(まさか……高位貴族の女性の術者!?)
その瞬間、目の前に倒れ込んだのは――
「志乃さん!」
僕が駆け寄ろうとしたそのとき。
「返答が先だ!」
怒鳴り声が響いた。
「主、いけません……!」
夜刀が僕の肩を掴んだ。その手が、妙に強くて――でも、震えていた。
「主、彼女から“気”が感じられません。……すでに、逝ってしまったのでは」
「……何……?」
僕は目を閉じて、集中する。けれど、どこにも志乃さんの気配はなかった。
(そんな……)
「やはり……もう……」
夜刀の声が、僕の胸を深く貫く。
(……救えなかった……)
怒りと悲しみが渦を巻く。そんな僕を、あの声が愉快げに見下ろした。
「見事な下僕だな。鋭い察知力だ」
「貴様……っ!」
怒りで霊力が暴れかけたそのとき――
「主! おやめください!」
夜刀が、僕を後ろから強く抱きしめてきた。
「今はまだ……勝てません」
その声が、どこか震えていた。
(……そうだ。夜刀の言うとおりだ。今はまだ――)
「……わかった」
声の主の気配が、すうっと消えていく。
「“彼の者”に似た、月の力を持つ者よ。いずれ、また相まみえようぞ」
白檀の甘い香が残り、転移陣が足元に浮かぶ。
「行こう、夜刀」
「はっ」
志乃さんの亡骸を抱きながら、僕たちは路地裏へと戻った。
***
月の光が冷たく、静かに背を押してくる。
(“彼の者”って……誰?)
その時――
“ツク……ミ……ツグナエ。ソノ死ヲモッテ――”
耳に直接響く声。
「……っ!」
頭を抱え、思わずその場に膝をつく。
「主!?」
夜刀の声が、遠く響いた。
駆け寄ってきた夜刀に、僕は小さく首を振る。
「……大丈夫。ちょっと、考えごとをしてただけ」
志乃さんをそっと見下ろす。
「……ちゃんと家に、帰してあげないと」
声が震えないように、がんばった。でも、夜刀にはバレてたかも。
じっと黙って、でも僕の隣にいてくれる夜刀。
(……その瞳、なんでそんなに……切なそうなんだ?)
――気のせいかな。
(夢で見たあの声……女神みたいな存在。それと、今回の事件。何かが繋がってる気がする)
「……絶対に、真実を暴く」
そっと志乃さんに手を添え、僕は立ち上がった。
「行こう、夜刀」
「……御意」
夜刀の返事は、静かで、でも優しかった。
たぶん――気づいてないふりしてるだけで、彼は今にも、泣きたそうな顔をしてた。
街には夕闇。ぽつぽつと灯る光の向こう――
都の闇が、音もなく動き出そうとしていた。
【あとがき】
カオス会議:第3話「男装陰陽師は式神・夜刀に救われる」編
登場人物:
朔夜:限界男装陰陽師。シリアス本編の反動でカオス会議では全力ツッコミ。
夜刀:式神。主を守るのが生きがい。でも感情だだ漏れ。
真白:親友。あとがき常駐メンバー。ギャグ担当。
女神:夢でしか出てこないのに存在感がありすぎる人。
謎の声:新キャラ。声だけ参加。あとがきでも声だけ。
志乃さん(回想):尊い犠牲枠。登場しないけど、みんなの心の中に。
朔夜:(開幕から疲労困憊)
「……ねえ夜刀。あとがきぐらい静かにできない?」
夜刀:(真顔)
「主が危険にさらされる限り、あとがきにも待機する所存」
真白:(飲んでた麦茶吹く)
「いや!そろそろあとがきにボディガード必要ってヤバいよ!? どんだけ命狙われてんの!?」
女神:(どこからともなく)
「ツグナエ……ソノ死ヲモッテ――」
朔夜:(即遮断)
「ちょっともう!あなた本編で喋ったでしょ!? もう一仕事終えた感出して退場して!?」
真白:(冷静に指摘)
「てか“死ヲモッテ”ってまた言ってる。語彙、少なくない?」
夜刀:(冷静に)
「現在までに確認された呪詛フレーズ:死・堕ちる・贄・運命。計4種」
朔夜:(ぐったり)
「小学生の黒歴史ポエムより少ないんよ」
女神:(逆ギレ気味)
「神にもスランプはあるのだ……」
真白:(優しく肩ポン)
「スランプなら黙っててよ神……あとがき荒らし、やめて……」
夜刀:(ふと真面目に)
「……それより主。志乃殿の件、無念でなりません」
朔夜:(ふと目を伏せ)
「……うん。でも、あそこで夜刀が止めてくれなかったら……僕、暴走してたかも」
真白:(珍しく真剣)
「オレも……“気”がないって聞いて、息止まった。優しそうな人だったのに……」
女神:(ぼそりと)
「……彼女の死もまた、運命の輪の中にある」
朔夜:(即ツッコミ)
「だから“なんでも運命”で済ますな!せめて供養ぐらいさせて!?」
夜刀:(ふと目を伏せる)
「主の悲しみ……リンクを通じて、私も共に感じました」
真白:(くすぐるように)
「てか夜刀、抱きしめてたよな……あれ、何?新機能?(ニヤニヤ)」
夜刀:(赤面しながら動揺)
「ッ……い、いえ。主の霊力暴走を防ぐための緊急措置であり……物理式符による安定化の一環であり……!」
朔夜:(真っ赤)
「長い!説明が長い!てか、僕の背中で震えてたの誰!?ねえ!?」
真白:(腹を抱えて笑う)
「それな!“震えながら抱きつく式神”って、保護者か恋人かどっちかにして!?」
夜刀:(そっぽ向きながら小声)
「……主の無事が、ただ……私にとっては、それだけで……」
朔夜:(照れて限界)
「やめて!? ここカオス会議だから!エモい空気NGだから!!」
女神:(満足げ)
「……愛は、時に呪より深く――」
朔夜&真白&夜刀:
「ポエムやめろォォォーーーッ!!!」
朔夜:(深呼吸)
「というわけで、第3話、読んでくれてありがとうございました……!志乃さんの死、絶対に無駄にしない。謎の声の主も……必ず突き止めるから」
真白:(腕まくり)
「次回はオレも出番ほしいぞ!?あとさ、“謎の声”ってあとがきにも来ないの!?」
謎の声:(闇の中から)
「……出演料が……未払いだ」
朔夜&真白&夜刀:(揃って)
「ギャラ発生すんのかよーーーーー!?」
夜刀:(静かに刀を構える)
「……主の次なる戦いに備え、物資補充と霊力調整を」
朔夜:(苦笑)
「ありがとう、夜刀。……でも、今は休もう。真白も、付き合ってくれてありがと」
真白:(にっこり)
「当然だろ?あとがき隊、次も全力で参加します!」
女神:(最後に)
「“運命”はもう動き始めている。いずれ、真白も――」
真白:(即叫ぶ)
「やだやだやだやだフラグ立てるなあああああああ!!!!」
朔夜&真白&夜刀:
「それが一番怖ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
◇◇◇
次回も、あとがきでお会いしましょう――。
真白の出番も、夜刀の情緒も、加速度的に増えていく予感……!?
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