第1話:男装の陰陽師は金色の追憶に揺れる3
「あとがきカオス会議」あります!
常世は、相変わらず死の静寂に支配された世界だった。
空には月も星もなくて、ただぼんやりとした光が、荒れ果てた大地を照らしている。
その中心に、巨大な宮殿「常夜宮」がそびえ立っていた。
その壮麗な佇まいは、まるで忘れ去られた神様が、自分のためだけに建てた霊廟みたいだ。
石段を上がり宮殿の中に入ると、目の前にだだっ広い大広間が広がっていた。
突き当りには荘厳な玉座があって、その周りには数えきれないほどの亡者や妖魔が、静かに跪いている。
眼窩は空っぽなのに、どこか狂信的な光を宿しているように見えた。
更衣はその間をゆっくりと進み、さも当然というように玉座に腰を下ろした。
威厳すら感じさせるその姿には、これまで以上の力が満ちている。
彼女こそが、この宮殿の主なんだ。
「ようこそ、月神ツクヨミ。私の宮殿へ」
「やっぱり、僕の正体を知っていたんだな……。あなたの目的は、いったい何だ?」
僕の問いに、更衣はクツクツと喉を鳴らして笑った。
「前にもお話しした通り、私の目的は『黄泉返り』ですわ」
「死者を現世に蘇らせる……ってやつか」
「ええ。正確には、常世と現世の境をなくして、死も生もない、永遠に悲しみのない世界を創ること」
更衣は、たおやかな仕草で小首をかしげて微笑む。
「そのためには、覚醒したあなたの"神核"の力が必要なのです」
「主、"神核"とは……?」
夜刀が、警戒を解かないまま小声で尋ねてきた。
「神様の魂に宿る、神力の源泉みたいなものだよ」
夜刀に答えながら、僕は更衣を鋭く睨みつけた。
「……そのために……僕の力を目覚めさせるために、変異体を生み出して都に放ったのか?」
「ええ。そして私の願い通り、あなたは力を覚醒させた」
掌の上で踊らされて、まんまと罠にハマった。
そんな自分が情けなくて、悔しくて、涙が滲む。
「……藤原玄道も、あなたと同じ目的なのか?」
「正確には違いますけれど、“利害が一致した”というところですわね」
「……やっぱり、あの人と繋がっていたんだな」
「ええ。彼の協力のお陰で、妖魔の強化にも成功しましたのよ」
攫ってきた人たちを実験台にした成果だ、と更衣は自慢げに続けた。
「……なんてことを!」
身勝手な目的のために、たくさんの罪のない人たちが犠牲になった。
その事実が、鉛みたいに重く胸にのしかかる。
「あなたの力が覚醒するという大目的の前では、些末なことですわ」
「……些末、だって!?」
「ふふ、良いお顔。その怒りのおかげで、ずいぶんと力が安定してきたようですわね」
そう言って、更衣は満足そうに微笑んだ。
僕らが必死に力の制御を学んでいたことすら、すべて彼女たちの思惑通りだったなんて。
「くっ……!」
指が白くなるほど拳を握り締め、僕は強く唇を噛んだ。
そうでもしていないと、怒りで理性が吹き飛んでしまいそうだった。
「……協力なんて、絶対にするもんか!」
僕は血走った目で更衣を睨みつけて、震える唇で声を絞り出した。
でも、更衣はその敵意を、余裕たっぷりの笑みで受け流す。
「つれないことをおっしゃらないで。あなたのために、随分と骨を折ってさしあげましたのに」
「そんなもの、僕の知ったことじゃない!」
僕は怒りに任せて言葉を叩きつけた。
僕はこの力を望んだわけじゃない。
更衣や玄道の介入がなければ、今もただの陰陽師として、平穏に暮らせていたはずなのに。
でも、更衣はそんな僕の怒りも軽く受け流すと、続けて、抗いがたい誘惑の言葉を囁いた。
「協力してくださるなら、とっておきの褒美を差し上げましょう。あなたの大切な人、安部清耀を、完全な生者として蘇らせてさしあげますわ」
その名前を聞いた瞬間、僕の心臓が大きく跳ねて、時間が止まった。
安部清耀。
僕の師匠、安部清晄様の息子で、僕にとっては実の兄みたいな兄弟子。
美しい容姿と優しい心、陰陽師としての確かな実力を備えた、僕の憧れの人。
そして――僕が、淡い恋心を抱いていた、かけがえのない人。
彼の死は、今も僕の心に深く、決して癒えることのない傷として刻まれている。
でも、その言葉は同時に、僕の心の奥底に眠っていた怒りの炎に、油を注いだ。
前回、常世で戦った妖魔たちから感じた、霊気が混じった不気味な妖気。
あれは、師匠と清耀兄様の亡骸に絡みついていたものと、よく似ていた。
ツクヨミの力が目覚めて、感覚が研ぎ澄まされた今、それがもっとはっきりとわかる。
「さっきから勝手なことばかり……! そもそも、師匠と兄様を死に追いやったのは……あなたなんだろう!?」
抑えきれない怒りに、僕の声が震える。
でも、更衣は悪びれる様子もなく、むしろ楽しそうに唇の端を吊り上げた。
「あら、お気づきでしたの? ええ、そうよ。あの二人は、私の計画の邪魔でしたから」
「……貴様ッ!」
ここまで黙って怒りを押し殺していた夜刀が、ついに堪えきれなくなった。
僕が誰よりも大切に思っていた二人の死の真相を聞いて、怒りのままに更衣に斬りかかる。
「この外道が!!」
でも、更衣が優雅に掌を向けた瞬間、夜刀の身体は見えない壁に弾かれたように、後ろへ大きく吹き飛ばされた。
「……夜刀!」
僕は慌てて駆け寄って、その身体を支える。
「……くっ……主、面目次第もございません」
「ううん、無事でよかった……」
僕が安堵する一方で、夜刀は悔しそうに顔を歪めて、視線を落とした。
そんな僕たちを、更衣はつまらなそうに一瞥して、扇で美しい口元を覆った。
「犬の躾は、しっかりとなさって? まだ話の途中ですわよ」
そう言って不機嫌そうに眉を寄せたかと思うと、ふと何かを思い出したように目を輝かせた。
「ああ、そうそう。確か、玄道は清耀に恨みがあるようでしたわね」
「玄道が、兄様に……?」
また出てきたその名前に、僕は息を呑んだ。
「……どういうことだ?」
「さあ? 詳しくは存じませんわ。興味のないことですもの」
更衣は、心底どうでもいいって感じで肩をすくめた。
でも、僕が動揺している様子を、明らかに楽しんでいる。
「気になるなら、ご自分で直接お聞きになったら? まあ、その機会があれば、の話ですけれど」
袖で口元を隠してクスクスと笑った後、更衣はふと真面目な顔になった。
「……さあ、無駄話はここまでですわ」
すっと立ち上がった更衣は、僕に向かって甘く、甘く囁いた。
「ねえ、愛する人と、共に生きたくはない?」
更衣が掌を上に向けると、紫色の炎がゆらりと上がり、その中に、微笑む清耀兄様の姿が映し出された。
【あとがき】
カオス会議:第7章第1話「男装の陰陽師は金色の追憶に揺れる」編
登場人物紹介
朔夜:前世持ち陰陽師。神力制御Lv.1。恋の制御Lvも上げたい所存。精神は常にレッドゾーン。
真白:朔夜大好き犬系男子。親友ポジ脱却目指して奮闘中。魂ごと門に弾かれても諦めないワンコ魂に拍手。
夜刀:忠誠と愛がすべての過保護式神。命令無視できる謎のチート持ち。趣味は瞑想と主の隠し撮り。
萩壺更衣:妖艶さ&精神攻撃Lv.カンスト系寵姫。圧倒的な“上位存在感”を放つ謎の美女。でも怖い。超怖い。
朔夜 (疲労困憊):
「……ねえ、いきなりボス登場とか聞いてないんだけど!?しかも兄様出してくるのズルい!やり方がエグい!」
夜刀 (怒り心頭):
「主の心を弄ぶとは……許せません……」
真白 (イジイジ):
「……オレだけ仲間外れ。いいけどさ、別に。役立たずでごめん。陽キャなパリピでごめん。あとイケメンでごめん」
朔夜 (ジト目):
「何だろう。友情に感謝すべきところなのに、微妙にイラッとする……」
夜刀 (意気消沈):
「私も今回はお役に立てず、面目次第もございません……」
朔夜 (ニコニコしつつ目が笑ってない):
「いや、夜刀は頑張ってくれたよ!命令ガン無視されて“主って何?”って思ったけど、全然気にしてないよ?」
夜刀 (目逸らし):
「申し訳ございません。主の御身が心配で……」
朔夜 (目が据わってる):
「うんうん、ありがとうね。感謝はしてるんで、隠し撮りした映像、全部出そうか?」
夜刀(さらに目逸らし):
「はて、ナンノコトデショウ?」
真白 (復活):
「何!?隠し撮り!?夜刀、それオレにもシェアしてくれ!!」
夜刀 (バッサリ):
「共有する気はありません。主の神々しきお姿は、私の心の書庫にだけ残しておきます」
真白 (ピキる):
「何でだよ!?ちょっとくらい、いいじゃんか!ケチ!!」
朔夜 (ジト目):
「いや、勝手に録画するのもシェアも禁止だって言ってるよね?」
萩壺更衣 (高貴な香りと共にいつの間にか登場):
「ふふ……相変わらず賑やかですわね。お可愛らしいこと」
全員:
「……って、えええええ!?!?!?」
朔夜 (絶叫):
「ちょ、勝手に出てこないでくださいよ!? ここはちょっとした息抜きパートだから!!」
更衣 (クスクス):
「ふふ……次の幕が開くまで、せいぜい休んでおきなさいな。でも“覚悟”だけは、しておいてくださいね……?」
朔夜 (ガタガタ):
「やだやだやだ!怖い!超怖い!僕、次回は病欠する!!」
真白&夜刀 (揃って前に出る):
「「待て!!」」
真白 (鋭く睨んで):
「朔夜に手出しはさせないからな!?」
更衣 (クスリ):
「常世に来れないのに?あなたは門の前で愉快に“バウンド芸”なさってれいばよろしくてよ?」
真白 (涙目):
「なっ!?……“芸”っていうなあああああ!!」
夜刀 (キリッ):
「主は私が命に代えてもお守りいたします!」
更衣 (耳元でヒソヒソ):
「……式神ごときが、大切な大切な初恋の人に勝てるかしら?」
夜刀 (動揺):
「……なにっ!?わ、私の想いは誰にも負けん!主だってあんな甘言に惑わされるはずは……」
更衣 (憐れむような眼で):
「だと良いわねえ?愛する主様……すご~く揺れてる感じでしたけれど……?」
夜刀 (大ダメージ):
「そ、そんなことは!そんな……ことは……」
朔夜 (大慌て):
「ちょっ、更衣様!? 場外でカウンター攻撃クリティカルヒットさせないで!?それ反則だからね!?」
更衣 (優雅に微笑んで):
「うふふ……“販促”にはなりそうですわよ?」
朔夜 (白目):
「だれうま……」
更衣 (とても楽しそうに):
「次のお話も楽しみですわ♡」
朔夜 (号泣):
「……お願いだから“あとがき”くらい平穏に過ごさせてぇぇぇ!!」
◇◇◇
更衣様、あとがきでも本領発揮。
朔夜たちVS.萩壺更衣、いったいどうなってしまうのか!?
初恋の清耀兄様は復活するのか!?
次のお話もお楽しみに!
引き続き、応援&感想&ツッコミお待ちしてます!




