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転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)  作者: 水無月 星璃
第6章:金烏玉兎、宿命との対峙

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第3話:男装の陰陽師は東離宮の罠にはまる1

みんなで決意を固めたのに、計画はあっさり崩された。

翌朝早く、宮中からの急使が僕の屋敷に飛び込んできたんだ。


「朔夜様、緊急事態でございます!」


息を切らした官吏が、慌てふためいて叫ぶ。


「東の離宮に強大な妖魔が出現し、居合わせた者たちが襲われております!陰陽頭・藤原玄道様のご命令により、至急出動していただきたく……」


(……来たよ)


玄道様…‥いや、もう敬称をつける必要はないか。

玄道からの、直接の指令。

このタイミングで?

どう考えたって罠だ。

僕のツクヨミの力を使わせようとしてるんだ。


傍にいた夜刀が静かに告げる。


「妖しいですね。罠の可能性が高いかと」

「僕もそう思う。でも、人が危険に晒されているのなら、放っておくわけにはいかない」


僕は覚悟を決めた。


「みんな、予定変更。一緒に来てもらえるか?」

「「「おう!/はい!」」」


式神たちが力強く頷いてくれる。


「主は私がお守りいたします」


夜刀が剣の柄に手をかけながら、僕に微笑んだ。

その視線に、僕は頷き返す。



東の離宮に急行すると、そこには……


「ほう、予想以上に早い到着だな」


薄い霧に包まれた中庭に、藤原玄道が一人で立っていた。

周りには異形の妖魔たちがうようよと蠢いている。


「玄道様……まさか、これは……」


僕の声が震える。

まさか、この人がこの妖魔を?

玄道は僕をねっとりと見つめたまま、呪文を唱えた。


「――火炎招来、急々如律令!」


霊符が燃え上がり、妖魔たちは一瞬で炎に飲まれて消滅した。


(これが、陰陽頭の実力……)


あまりの力に、僕は息を呑む。


「何を驚いている」

「いえ……まさか玄道様が直々にいらっしゃるとは思わず……」

「陰陽師失踪事件で手が足りぬのでな。私が来たまでだ」


そう言われたら、もう何も言えない。


「離宮にいる人たちは、ご無事なのでしょうか?」

「あらかた救出した。だが、まだこの先にある茶屋の確認ができておらぬ。付いてまいれ」

「……承知いたしました」


警戒しながらも、僕は玄道の後について歩きだした。


目的の茶屋に着くと、辺りはシンと静まり返っていた。


「玄道様、こちらは大丈夫です……」


そう言って振り返った瞬間、ハッとした。

そこに玄道の姿はなかった。


「いつの間に……やはり罠か!」


夜刀が忌々しげに吐き捨てる。


「朔夜様、どうしましょう!?」

「朔~……」


狗と狛が不安そうに僕のそばに寄ってくる。

僕は二人の頭を優しく撫でた。


「大丈夫だよ。慎重に妖魔の気配を探ってみよう」


僕が微笑むと、二人は少し安心したのか、尻尾を揺らした。


「待って、朔夜様!……何か……来る!」


竜胆丸が叫んだ直後、背後から巨大な妖魔が現れた。

気配からして、霊気混じりの妖魔だ。


「な、何だよアイツ!?」

「人間の……塊!?」


狗と狛が叫ぶ。

それは、何人もの人間を黒い粘土で固めて団子にしたような、おぞましい姿だった。

もがいて伸ばされる手足が宙を掻き、苦悶の表情を浮かべた顔が怨嗟の声を上げている。

悪夢みたいな光景に、僕は凍りついた。


「これは……まさか!」


よく見ると、中には見知った顔がいくつかあった。

行方不明になっていた陰陽師たちだ。


「なんてことを……!」


怒りで、身体の奥が燃えるように熱い。

これが玄道の仕業なら、絶対に許さない。


「主、どうされますか?」


夜刀の冷静な声に、僕は我に返る。


「人の部分を避けて攻撃する!まだ助けられるかもしれない!」

「御意!」


みんなが一斉に妖魔へ斬りかかる。

でも、どんな攻撃も決定打にならない。


「ちっ……これではこちらが消耗するだけだ」


夜刀が苛立たしげに呟く。


(やるしかないのか……!)


僕は静かに印を組む。

自分の内なる力の源泉を探り、慎重に気を練り上げた。

胸の奥で、あの月の光がうずきはじめる。


(ダメだ、抑えきれない!でも、ここで暴走したら、みんなを巻き込んでしまう……!)


必死にコントロールを試みながら、溢れ出た光のほんの一部だけを取り込むように、気を練り上げていく。

そして、極限まで圧縮したそれを、一気に解放した。


「――破邪、顕現せよ!」


僕の身体を眩い光が包み、瞳が月光色に輝く。

静かで温かな光が、妖魔を包み込んだ。


「ギャアアアアアアッ」


妖魔が苦悶の叫びを上げ、わずかに崩壊する。

でも、消滅させる前に、僕の方が限界になった。


「……くっ!」


内臓が引き裂かれるような激痛に、僕はその場に膝をついた。


「主! 無茶をなさらないでください!」


夜刀が駆け寄り、倒れそうな僕の体を抱きとめてくれた。


「あとは我らにお任せを」

「……すまない。頼む」


弱った妖魔は、もう夜刀たちの敵ではなかった。

狗が斧を振るい、竜胆丸が苦無を飛ばし、最後は夜刀がとどめを刺した。

黒い巨体が霧となって消え、地面には息絶えた人、かろうじて息のある人たちが横たわっていた。


「……すぐに治癒を……っ」


僕がよろめきながら助けに向かおうとすると、夜刀がそれを制した。


「まだお休みください。後は我々で」


夜刀は僕を抱きかかえたまま、額の汗をそっと指で拭ってくれる。


(近い……夜刀の匂いがする……)


その優しい仕草に、僕の心臓が大きく跳ねた。


夜刀の指示を受けて、狛たちが被害者の対処に当たってくれた。

ホント、良くできた式神だちだ。


「……ありがとう、夜刀。情けないな、この程度で……」

「何をおっしゃいますか。先ほどの術、見事に神気を引き出されておりました」

「でも、倒しきれなかった……」


悔しくて唇を噛みしめると、夜刀がその唇にそっと指を触れさせた。


「や、夜刀……!」


不意に触れた指の熱さに、心臓がもっと速く鳴る。


「あまり強く噛むと、綺麗な唇に傷がついてしまいます」


夜刀は優しい顔のまま、僕の乱れた前髪を手で優しく梳いた。

そんな甘やかすような仕草に、耳まで熱くなるのがわかる。


「も、もう大丈夫だから……!」


慌てて彼の胸を押し返すと、夜刀は名残惜しそうに身を離した。



そこへ、玄道が何食わぬ顔で戻ってきた。


「……これは、何があった」


僕の消耗した様子を一瞥し、その瞳の奥に異様な光が宿るのを、僕は見逃さなかった。


「何やら大きな力を感じたが……そなたか、朔夜」


どう答えればいいか、僕は迷った。

例え玄道がすべて見ていたとしても、素直に答えたくはない。

むしろ問いただしたいのはこちらの方だ。

そんな言葉が口を突いて出そうになる。

飄々とした玄道の顔を直視すれば、そのまま睨みつけてしまいそうだった。


すると、夜刀が僕を庇うように一歩前に出た。


「玄道殿、主は疲れております。申し訳ございませんが、今はご容赦を」


その鋭い視線に、玄道は一瞬だけ表情を歪め、ふっと息を吐いた。

「式神風情が」って聞こえた気がしたけど、気のせいかな。


「よかろう。そなたは休め。ここは後続の者に任せる」

「……はっ。ありがとうございます」


そう答えて、僕は被害者たちを振り返った。


(もっと、強くならなくちゃ……)


夜刀に支えられながらその場を後にする僕の背中に、玄道の刺すような視線が突き刺ささっていた……

ここまで読んでくださってありがとうございます!

本作は同タイトルの通常版をベースに、文体をライトノベル調にリライトした“別バージョン”です。通常版はカクヨム様とnoteに掲載中。noteは一部有料でSS(キャライメージイラスト付)付いてます。※2話まではSSも無料で読めます!


もし楽しんでいただけたら、ブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけると、ありがたいです。

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