第2話:男装陰陽師は常世に堕ちる
今回も「あとがき」で遊んでおります!(笑)
夕暮れの西市の空気って、まるで水の底に沈んでるみたいに重たい。
仕事場のある大内裏のきらびやかさが夢だったみたいで、ここには足りないものが多すぎる。
特に、光。あと希望。あと、空気の質。
屋敷の裏門に立つ篝火が、風に揺られて今にも消えそうで、ちょっと不気味。
僕――朔夜は、人気のない路地裏を音も立てずに進んでいた。
市場って夕方には閉まっちゃうから、この時間は人の気配ゼロ。
足音も殺して、まるで幽霊。いや、盗人? ……あー、比喩が暗いな。やめよう。
……と、思った瞬間。
鼻先をかすめる、鉄のような匂い。あと、濃い妖気のにおい。
「……あ、なんかある」
嗅覚と霊感、ダブルで反応。間違いない。
そっと方向を変えて、臭いの発信源に近づく。
で、見つけたのが――
袋小路の奥にある、壁に彫られた奇妙な紋様。なんか……すごく嫌なやつ。
「呪文? 儀式の痕跡? いや、これは……呪いとか?」
知らない紋様なのに、見た瞬間、背中に鳥肌。
警告アラート100%。何これ怖い。
しかもそこから、むせかえるような妖気。しかも超濃縮タイプ。
どんなヤバい術者がやったのか、ちょっとだけ興味わいた、そのとき。
――風が吹いた。
香りが流れてくる。白檀、伽羅、乳香。
懐かしくて、高貴で、なんか神殿っぽい匂い。
「この香り……まさか……!」
思わず深く吸い込んだ瞬間、世界がひっくり返った。
***
――眩い光。神殿。女神。そして、鏡。
夢の中で見た、あの光景が、パッとフラッシュバックした。
白木の神殿、太陽をまとったみたいな女神の衣。
その奥にあった鏡には、神代風の衣装を着た――男装のキレイな人。
……え、僕!?
「ツク……ミ……」
女神がぽつりと呟いた。聞き取れない。
でも、それ、僕の名前じゃない。
「姉様……! どうして……!」
鏡の中の“僕じゃない誰か”が叫ぶ。
胸がぎゅっと締め付けられて、思わず胸元を掴んでた。
女神が、ぞっとするほど冷たい笑みを浮かべて――
“ツグナエ。ソノ死ヲモッテ――”
パーンッ!と、目の前が真っ白に弾け飛んだ。
***
「ッ……!」
息が詰まる音が喉を突いて、そこで意識がビシッと戻った。
壁の不気味な紋様が、はっきりと目に飛び込んでくる。
(……あれ、夢じゃなかった……?)
いや、違う。
むしろ前世?みたいな感覚が、胸の奥をじわじわ侵食してくる。
(僕に……何を“償え”と……?)
意味は分からない。
でも、それが確実に“僕”に向けられたものだってことは、なぜか分かってしまった。
手が震えてる。ギュッと握りしめて、深呼吸。
「落ち着け、僕……今は、目の前のことに集中……!」
気を取り直して、ふわっと漂ってきた香りの方を向いた。
袋小路の一角に、ひっそりと祠。
その中に、白和紙に包まれたなにかが置かれていた。
おそるおそる手に取ると、白檀の香りがふわぁぁっと広がる。
(香料も和紙も……どう考えても高級すぎる!)
ゆっくりと和紙をめくる。
中身は――
「……髪?」
いや、束? まさかの女性の髪の束だった。
「うわ、しまっ――!」
触れた瞬間、紫の炎がブワッと燃え上がる。
同時に、壁の紋様が妖しく輝き出し、術式が起動。
地面がぐにゃりと歪み、僕の足元が崩れ落ちる――
――闇に、落ちた。
***
気がつけば、まったく別の場所。
ぬるっとした湿気。腐臭。どこからか聞こえる水音。
ぽっ、ぽっ……と青白い鬼火が宙に浮かんでいる。
「ここ、どこ……?」
天井からは鍾乳石、壁には脈打つような紋様。ヤバすぎる。現世のものじゃない。
(って、この感じ……まさか、常世!?)
陰陽師の世界でもタブーとされる場所。死者が集う、異界。話には聞いてた。
でも僕、まだ生きてるよね!? 頬をつねってみる。痛い。OK、現実確認完了。
と、そのとき――背後から、ぬるっ……と嫌な音。
条件反射で、腰の刀を抜く。
「誰だっ!」
声が震えそうなのを、全力でこらえた。
闇の中、赤い目が、ずらり。無数。え、マジやめて。
姿は黒い塊。形は曖昧で、まるで闇そのものが動いてるみたい。
「……低級妖魔か」
呟いた瞬間、スイッチが入った。
刀に破邪の力を注ぐと、銀の光が刀身を包み、全身にもふわりと宿る。
この力――僕が生まれつき持っていた、退魔の刃。
全部、こういうときのために鍛えてきた。
「来なよ……!」
一閃! 光の刃が闇を裂いて、妖魔を真っ二つ。
黒い液体が飛び散り、焦げた臭いが鼻をつく。
でも、止まらない。次から次へと、わくわく妖魔!
(もう、やめてよ……!)
でも、僕の体は止まらない。怖くても、足は動く。腕は振るえる。
――戦うんだ、僕は。
どんなに過酷でも、それが僕に課せられた宿命だから。
斬って、斬って、斬りまくる!
でも、さすがに疲れてきた……。
呼吸が浅い。腕が重い。刀が振れなくなってきた。
汗が目に入って、視界もぐしゃぐしゃ。
(ヤバい、集中が切れる……)
体勢を崩しそうになって、岩に刀を突き立ててなんとか立て直したけど――
「うそっ!?」
――刀、砕けた。
手の中に残ったのは、ただの柄。
え、いや、ちょ、待って!?
武器がない。敵が迫ってる。術を詠む余裕なんて、どこにもない。
赤い瞳が、獣みたいにギラギラと僕を狙っている。
「……終わった……」
力が抜けた。
(ごめん、志乃さん、師匠……)
そのときだった。
『朔夜』
耳元に、あの声。
温かくて、力強くて、心に火を灯す声。
『諦めるな。前を見よ』
(師匠……!)
あの日差し、あの木の床、塵が舞う静かな道場――
全部が、一気に胸に蘇った。
「僕、まだ……やれる!」
咄嗟に、手に残った柄を投げる! 妖魔たちの視線が一瞬だけ、逸れた!
今だ――!
目を閉じて、深く呼吸。胸に両手を当て、霊力を集中!
「――破邪、顕現せよっ!」
銀の光が、胸の奥からあふれ出す!
満月のような、でも鋭く清らかな光が、僕を包み、洞窟全体を満たしていく。
異形の紋様が、光に反応して明滅。そして――止まった。
空気が変わる。妖気が消え、清らかな空気が肺を満たす。
妖魔たちは、光に包まれて――消えた。音もなく。
……終わった、と思った。そのとき――
「ほう……これはまた、興味深い」
奥の闇から、誰かの声。低くて、乾いていて、でも圧がすごい。
香る白檀。漂う霊気。
(人間……?でも、只者じゃない)
「僕は陰陽師、安部朔夜!」
光をまとったまま、声の主に鋭く問いかける。
「お前こそ、何者だ!」
「ふむ……貴様の力、尋常ではないな」
答えを濁しつつ、さらに驚きの一言を投げてきた。
「探し人は貴様であったか?」
「僕を、探して……? まさか……志乃さんをさらったのはお前か!?」
でも、その問いには一切答えず、代わりにまた、妖魔をけしかけてきた。
「常世へようこそ、陰陽師殿。貴様の力、試させてもらうぞ。――やれ」
再び現れる、今度は一段と強そうな妖魔たち。
そのとき、僕の中の記憶がフラッシュバックした。
なんかこの気配、知ってる……
「一年前……師と兄弟子を襲ったのも……お前か!?」
「さて、どうだったか? くだらぬ者どもなど、いちいち覚えておらぬ」
「……くだらぬ?」
……胸に、ブスッと刺さった。
怒りが、背中からぐわっと込み上げる。
僕の刃が光を強め、妖魔たちを次々となぎ倒す。
でも、敵は止まらない。むしろ、どんどん強くなる。
「見事だ。だが――まだ足りん」
声の主が、不気味に笑う。
「この世界を、常世に変える。それが我らの悲願」
その言葉が、脳に焼きついた。
「生者と死者の境を壊し、永遠の夜を創り出すのだ」
「なんで、そんなことを……!?」
「裏切られたからだよ。生者に。……愛した人に」
声が震え、でも怒りに飲み込まれていく。
「我を拒絶し、辱めた! 忘却こそが、生者の傲慢だ!」
(……この感じ、女性……なのか?)
彼女もかつて、誰かを深く想っていた。
でも、それが壊れてしまった。
(だからって、世界を巻き込んじゃだめだろ……!)
「その力……異質なもの。常世と生者の世界を繋ぐ唯一の鍵。我らの悲願に必要不可欠」
僕の中の何かが、強く反応した。
(僕の力……? いったい、何を言ってるんだ……?)
そのとき――待機していた妖魔たちが一斉に動いた!
「――ッ!」
反応が、間に合わない!
両手で身をかばいながら、死を覚悟する。
(志乃さん、師匠、兄様、真白……ごめん――)
【あとがき】
カオス会議:第2話「男装陰陽師は常世に堕ちる」編
登場人物:
朔夜:男装陰陽師。ギリギリ主人公してる。精神はもう限界突破。
真白:陽キャ親友。あとがき出演回数が主人公並み。
夜刀:式神兼ボディガード。主命至上主義。だが残念系。
女神:現世混乱メーカー。夢とトラウマのエキスパート。
???(新キャラ):第二話のラスボス感出してた謎の誰か。あとがき未出演(※無許可NG)
女神:(登場SE:無音+香煙)
「ツグナエ。再び堕ちよ……闇の深淵へ――」
朔夜:(即ツッコミ)
「また出たーーー!! いやもうさすがに慣れたけど、会議からも退いてくれません!?あとセリフ地味に変わってません!?」
真白:(うしろで爆笑)
「てか、“堕ちよ”ってアンタ本文で1回も言ってなくね!? 普段の口癖? それとも販促ワード!?」
夜刀:(静かに眼鏡を押し上げる※眼鏡は幻覚)
「主。女神の発言パターン、すでに4種確認済み。すべて呪詛系」
朔夜: ぐったり)
「え、そんなにあるの……?じゃあそのうち“堕ちよ(亜種)”とかも来るの……?」
真白:(指折り数える)
「堕ちよ・極、堕ちよ・裏、堕ちよ・ファイナル、とか来るな。絶対」
女神:(ニヤァ)
「……お楽しみに」
全員:
「やめろーーーーー!!!」
夜刀:(真顔)
「主。ところで“女性の髪の束”を握って異界転送とは、あまりにも危機管理が甘い」
朔夜:(涙目)
「いや、僕だってアレ触る予定なかったし!? ていうか、白檀の香りに釣られただけだし!?」
真白:(ド正論タイム)
「“お高そうな香りにつられて罠起動”って、映画やドラマで最初に死ぬ人のムーブだよな……」
朔夜:(崩れ落ち)
「やめてぇぇぇぇぇ……」
真白:(急に真顔)
「でもさ、刀が砕けたとき、オレ、マジ泣いたんだけど」
夜刀:(珍しく同意)
「私も。主の心が折れかけた瞬間、式神リンクがざわついた」
朔夜:(小声)
「……あれ、ガチで怖かった。てかもう、しんどかった」
女神:(遠くから聞こえる)
「苦しみは、神への供物……」
真白:(ツッコミ怒号)
「やかましいわ神ーーーー!!!!」
朔夜:(やや復活)
「でも、師匠の声が聞こえた時、ちょっと泣きそうになった……」
真白:(うなずく)
「“諦めるな”って、シンプルだけど強い。師匠……マジで師匠……」
夜刀:(硬い声)
「……主に再び刃が宿った時、私は確信した。次、主を傷つける者がいれば――」
朔夜:(慌てて遮る)
「ストップ!夜刀、ストップ!また物騒なセリフ禁止!!」
真白:(苦笑)
「ほんと、夜刀ってたまに過激派パパになるよな」
女神:(ラストだけしっかり現れる)
「それでも、運命はまだ始まったばかり――貴様の“鍵”としての意味……まもなく明らかになろう」
朔夜:
「……だから、ネタバレをやめろってば!!!」
真白:
「“次回予告 in あとがき”やめてくれぇぇぇぇ!!」
夜刀:
「常世は深い。されど、主の心はそれよりも――」
朔夜&真白:(同時に)
「ポエムも禁止ーーーーー!!!!」
朔夜:(深呼吸)
「というわけで……第2話、読んでくださってありがとうございました。
常世編、まだまだ続きますが……無事に帰れるよう頑張ります……」
真白:(軽く手を振り)
「次回、オレも出番あるって信じてるからな!? あと、陰陽師って命がけすぎじゃない!?」
夜刀:(刀を構え)
「次話までに、全式神を再構築しておく。防御力3倍だ」
女神:(にこっ)
「次なる“贄”を、お待ちしております」
全員:
「それが一番怖ぇぇぇぇぇ!!!!」
◇◇◇
書いてて本編より楽しい……だと!?
いや、本編も頑張ります(笑)
こんなところまで読んでいただき、ありがとうございます!
懲りずに第3話もやります(たぶん)
もし楽しんでいただけたら、ブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけるとうれしいです!




