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転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)  作者: 水無月 星璃
第6章:金烏玉兎、宿命との対峙

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第1話:男装の陰陽師は前世を告白する1

忘却の彼方に沈んでいたはずの、遠い過去の記憶。

月の神、ツクヨミとして生きていた頃の断片が、このところ毎晩のように僕の意識を揺さぶってくる。


(……もう、全部、思い出しちゃったな)


その膨大な記憶の海に溺れそうで、自分が何者なのか、その輪郭がぐらぐらと揺らぐ。

人として生きてきた「僕」の記憶と、神としての永い「私」の記憶。

二つの人格がごちゃ混ぜになって、僕を混乱の淵へと突き落とそうとする。


(僕は……人なの? それとも、神様に戻りつつあるっていうの……?)


この前、都を騒がせた金烏との一件。

僕がアレを退けた時に発動した、尋常じゃない力。

全部、僕の中のツクヨミの魂が目覚めつつある証拠なんだって、もう認めざるを得ない。

同時に、その覚醒を利用しようとするヤツらの影も、はっきりと感じてる。


このままじゃダメだ。

力のコントロールもできないままじゃ、仲間たちを守るどころか、僕がみんなを危険に晒しちゃう。

何日も何日も悩み続けて、僕は、たった一つの結論にたどり着いた。


僕が何者で、何をすべきなのか。

仲間たちに全部打ち明けて、一緒に道を探してもらうしかないって。


ある日の夕暮れ時。

僕は真白(ましろ)紅子(べにこ)さんを自分の屋敷に呼んだ。

紅子さんは宮仕えの身だけど、僕の「ちょっとヤバいんで助けてください」的な文を読んで、特別にお休みをもらって駆けつけてくれたらしい。

本当にありがたい。

(みやび)姐さんにも声をかけたかったけど、あいにく白拍子(しらびょうし)のお仕事で貴族の宴に呼ばれてて、数日は連絡がつかないみたいだ。

残念。


簡素だけど、隅々まで清められた客間。

障子から差し込む夕日が、畳の上に僕たちの長い影を落としている。


僕の向かいに座る真白と紅子さんは、なんだかすごく緊張した顔をしてる。

ごめん、そんな顔にさせたくて呼んだわけじゃないんだけど。


部屋の隅には、僕の式神である夜刀(やと)竜胆丸(りんどうまる)(こう)(こま)が、僕のヤバい雰囲気を察してか、静かに控えてくれていた。


「急に呼び立ててごめん、真白、紅子さん」


僕は静かに頭を下げた。

改まった挨拶に慣れないのか、真白は目を泳がせながらぎこちなく笑った。

まあ、そうなるよね。

一方の紅子さんは……(あ、今はもう気安い間柄になって、「紅子殿」じゃなくて「紅子さん」って呼んでるんだけど、)小さく微笑みを返してくれた。

流石、宮廷女官。

どんな時でも上品だ。


それから、式神たちへも感謝を伝える。


「夜刀、竜胆丸、狗、狛も、集まってくれてありがとう」


声、震えてないかな。

覚悟を決めたはずなのに、気分がずしりと重い。


「朔夜、どうしたんだよ、改まって。何かあったのか?」


真白が不安そうな顔で僕を見る。

いつもの元気な笑顔はどこにもなくて、ただただ心配そう。

その顔が、逆に僕の胸を締め付けた。


「朔夜様、どうぞご遠慮なく。わたくしたちは、貴女の味方ですわ」


紅子さんも、真っ直ぐな瞳で僕を見つめてくれる。


僕は一度、深く息を吸い込んだ。

よし、言うぞ。

そして、ゆっくりと、言葉を紡ぎ始める。


「僕の……僕の、前世について、話そうと思う」


その一言で、二人の顔がこわばったのがわかった。

部屋に流れる、息が詰まるほどの静寂。

夕日の橙色が、どんどん薄くなっていく。


「僕の前世は――月の女神、ツクヨミだ」


しんと静まり返った部屋に、僕の声だけが響いた。

あまりにも突拍子もない告白。

みんなが息を飲むのがわかった。

やがて、真白が困惑したように口を開く。


「……は? ツクヨミって……あの、三貴神の一柱の?」


信じられないって顔に書いてある。


「でも、確か……ツクヨミって、男の神様じゃなかったか?」


うん、もっともな疑問だよね。

僕は静かに頷いた。


「うん。一般的には、そう伝えられてる」


やっぱり、思い出すとどうしても気分が落ち込む。

きっと、今の僕、暗い顔してるだろうな。


「でも、それには理由があるんだ。そして、その理由こそが、僕が……いや、かつて私が背負わされた、宿命だった」


僕はみんなの顔を見渡す。


「それは、姉である太陽神アマテラスとの……確執の始まりでもあったんだ」


みんなの驚きと戸惑いの視線を一身に受けながら、僕は語り始めた。

ツクヨミの記憶に引きずられるように、一人称は自然と「僕」から「私」に変わっていく。


「姉は……太陽神アマテラスは、初めから私を疎んでいたわけではなかった」


僕の瞳に、遠いタカマガハラの光景が蘇る。


「幼い頃、姉様はいつも私を気遣って、慈しんでくれた。あの日々は光と喜びに満ちていて……姉様と一緒に過ごす時間が、私にとって何よりも大切だった」


幸せな記憶を語るほど、胸が苦しくなる。


「でも……私の月を司る神としての力が強まるにつれて、周りの目が変わっていった」


静かな月の輝きは、太陽とは違うものとして注目を集めた。

それは、至高神として「完全であれ」と育てられた姉様にとって、きっと……嬉しくないことだったんだと思う。

妹への称賛が、自分の存在意義を揺るがす脅威に感じられたのかもしれない。


「姉様の視線に、時々、冷たい光が混じるようになった。それが、私には何よりも辛かった。私は、ただ姉様の傍にいたかっただけなのに。昔みたいに、一緒に笑いたかっただけなのに……」


握りしめた拳が、小さく震える。

私の存在そのものが、大好きな姉様を苦しめている。

そう思うと、胸が張り裂けそうだった。


「だから、私は……決めたの」


僕は顔を上げた。

胸の奥に、あの時の悲しい決意が蘇る。


「姉様を安心させるために、『女神ツクヨミ』を、この世から隠そうって……」


それが、男装の始まり。

自分の女性性を封印して、男の神として振る舞う。

強力な認識阻害の術を自分にかけて、周りに「ツクヨミは男神だ」って信じ込ませた。

愛する姉と一緒にいるための、あまりにも悲しくて、孤独な決断だった。


「そうして何百年も経つうちに、私が女神だった事実は忘れ去られて……ツクヨミは男神、それが当たり前になった」


語り終えた僕は、細く息を吐いた。

胸の中を、あの時の強烈な孤独感が支配している。

部屋はまた、重い沈黙に包まれた。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

本作は同タイトルの通常版をベースに、文体をライトノベル調にリライトした“別バージョン”です。通常版はカクヨム様とnoteに掲載中。noteは一部有料でSS(キャライメージイラスト付)付いてます。※2話まではSSも無料で読めます!


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