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転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)  作者: 水無月 星璃
第5章:幻惑の白拍子、試される魂

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第3話:男装の陰陽師は心を試される1

(みやび)さんの幻術が作り出した世界は、僕の心の奥深くを映し出す、歪んだ鏡みたいな空間だった。

なんだか濃くて重たい空気がどんよりと沈んでて、周りの景色は、陽炎みたいに常にユラユラ揺れてる。

気持ち悪い……。


僕の記憶の断片が、色褪せた絵みたいにフワッと浮かんでは消え、また浮かんでくる。

時間の流れも曖昧で、一瞬が永遠みたいにも感じられた。

ここはどこ? 私は誰?状態。


目の前に、師匠の安部清晄(あべのせいおう)と、兄弟子の清耀(せいしょう)兄様の幻が現れた。

二人は、優しく手招きしてる。

師匠は、生きてた頃と変わらない、慈愛に満ちた微笑みを浮かべてるし、 兄様は温かい眼差しを僕に向けてくれてる。

でも、その姿は陽炎みたいにユラユラしてて、背後の景色が透けて見えちゃってる。


(師匠……兄様……)


幻だって、頭ではわかってる。

うん、わかってるんだ。

それでも、心の奥に無理やり封じ込めてた悲しみとか後悔とかが抉り出されちゃって、心臓がドクドク激しく脈打った。

喉がギュッと締め付けられて、息が苦しい。

師匠と兄様を失った時の、あの絶望感。

自分の無力さに対する怒り。

もう二度と会えないっていう現実への諦め。

それらが濁流みたいに一気に心を襲ってきて、僕の理性をグラグラ揺さぶった。

ダメだ、飲み込まれちゃ……


「もう、苦しむことはない。全てを忘れ、我らと共に、永遠の安らぎを得ようぞ」


幻の師匠が、まるで小さい頃に聞いた子守唄みたいに、甘く、優しく囁いてくる。

その言葉は心の奥深くにじわーっと染み込んできて、現実世界での苦労とか重い責任とかから解放されるっていう、抗えない誘惑となって、疲れ切った僕の心を蝕んでいく。

使命感、コントロールできない神の力への不安、男装してる窮屈さ、孤独感――

その全部から逃げられるっていう誘惑が、僕の判断力を鈍らせていった。


(もう、楽になっても……いいのかな……)


次に現れたのは、炎の中で苦しみもがく、僕自身の姿だった。

青白くて、時に緑色っぽくも見える、異様な炎。

異常な高温で、空気がぐにゃりと歪んでる。


「いやあああ……! 」


僕は絶叫してて、周りの建物や人々が、次々と炎に飲み込まれていく。

コントロールできない力が、全てを灰にしていく、悪夢みたいな光景。

それは、僕が心の奥底で抱えてる、力の暴走への恐怖そのものだった。

僕のせいで、みんなが……


内に眠る強大な神の力への畏れと、それを制御しきれない未熟さへの絶望が、目の前に突きつけられた感じ。

額に、じっとりと冷たい汗が浮かぶ。

これは単なる幻じゃない。

いつか本当に起こりうる、未来の可能性の一つなのかもしれない。

そんなの、絶対にイヤだ!


「お前ごときに、この力が扱えるものか。いずれ全てを焼き尽くすぞ」


嘲るような声が、四方八方から響き渡る。

それは僕自身の声のようでもあり、同時に、僕じゃない誰かの声のようでもあった。

まるで、僕の中にいる神様の力が意志を持って、僕を嘲笑ってるみたいだった。


やがて、神域――神様の世界の幻が現れる。

銀白色の大理石が敷き詰められただだっ広い空間に、巨大な満月が冷たく浮かんでいる。

寒々しい場所だ……


そこには、姉神アマテラスの、傲慢で偉そうな姿があった。

そして、傍らには月神ツクヨミとしての、孤独な僕がいた。

アマテラス姉様は眩い光を纏ってて、その瞳には妹である僕への愛情じゃなくて、冷たい警戒心みたいなものが宿っていた。


ツクヨミである僕は、常に姉の影に隠れて、その光を反射することでしか、自分の存在を示すことができない。

姉様への愛は、揺るがない。

それは本当。

でも、愛されることなく、自分らしく生きることさえ許されない。

その哀しみが、僕の心をじわじわと蝕んでいく。


「そなたは、所詮、太陽の光を反射するだけの月。影として生きるがよい」


姉様の冷酷な言葉が、前世からの諦めと一緒に、現世の僕の心をも凍てつかせようとする。

どれだけ頑張っても、僕は姉様に愛してもらえないの?姉様の影でしかないの?

その絶望感が、今この瞬間の僕の心をも、暗く塗りつぶそうとしていた。


これらの幻影は、僕の弱さ、恐れ、悲しみ、怒りっていうマイナスな感情をどんどん大きくして、僕を絶望の淵へと引きずり込もうとしてくる。

あるいは、神としてとんでもない力を振るう、甘美な快感を囁きかけてきて、僕から人間としての心を捨てさせて、力の化身へと変えようと誘惑してくる。


でも、僕の心の奥底には、絶対に揺らがない強い芯が通っていた。

幼い頃の過酷な経験。

師匠と兄様の教え。

そして何よりも、か弱き人々を守りたいっていう、純粋で、切実な正義感。

それが、僕を支えてくれていた。


脳裏に、師匠の言葉が蘇る。

『力とは、己のためではなく、守るべきもののためにこそ、使うものじゃ』

兄様の声が聞こえる。

『お前のその優しさこそが、最大の武器なのだよ』

そして、これまで出会った、名もなき人々の笑顔や、「ありがとう」って言ってくれた時の眼差しが、冷えかけた僕の心を温かく包み込んでいく。


「僕は……負けない!」


歯を食いしばって、幻惑の囁きに、真っ向から抵抗した。

震えていた声は、だんだん、力強さを増していく。


「僕には、守りたいものがある! たとえこの身がどうなろうとも、人として、彼らと共に生きると決めたんだ!」


その言葉と一緒に、瞳が月光の色に強く輝いた。

その光は、邪な幻影を、容赦なく打ち払っていく。

全身から銀色の光が溢れ出して、歪んだ幻術の世界を、聖なる光で浄化していく。


それは、邪悪を滅ぼす破邪の力とも、西市で見せた清冽なツクヨミの力とも違う。

僕自身の魂そのものが放つ、温かくて力強い輝き――人と神の力が調和した、本当の神聖な力の目覚めだった。

破壊じゃなくて浄化を、征服じゃなくて調和をもたらすその光は、だんだん幻術空間の全てを包み込んで、歪んだ現実を、あるべき正しい姿へと導いていった。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

本作は同タイトルの通常版をベースに、文体をライトノベル調にリライトした“別バージョン”です。通常版はカクヨム様とnoteに掲載中。noteは一部有料でSS(キャライメージイラスト付)付いてます。※2話まではSSも無料で読めます!


もし楽しんでいただけたら、ブクマや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎で評価していただけると、ありがたいです。

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