第3話:男装の陰陽師は絡み合う宿命に巻き込まれる4
「あとがきカオス会議」あります!
今回はちょい長めです。
「……とりあえず、今日の話し合いはこれまでとしよう」
僕の言葉で、会議はお開きになった。
真白が結界を解くと、外からぶわっと新鮮な空気が入ってきた。
沈んだ空気がちょっと軽くなる。
「では、わたくしは仕事に戻りますわね。みなさまは、お好きになさって」
そう言って、紅子さんは女官の仕事に戻っていった。
忙しい中、ここまで協力してもらっちゃって、ホント頭が上がらない。
「じゃあ、オレは陰陽寮へ行ってくるわ。報告のふりして、様子見てくる」
「うん、頼んだ」
僕に軽く手を挙げてあいさつし、真白も部屋の外に出る。
その時、風に乗って嗅いだことのある香りが漂ってきた。
(この香り……常世の!)
それは、あの常世の洞窟で対峙した、声の主が纏っていた、あの白檀の香りだった。
僕はすぐさま部屋の外に出て、香りの出所を確認しようとした。
「お、おい、朔夜、どうした!?」
「主、まだ安静になさってください!」
「常世で嗅いだ香りがするんだ!」
驚く真白と夜刀を尻目に、素早く周囲を見渡す。
傷がめちゃくちゃ痛いけど、それどころじゃない。
すると、遠くに、部屋のある建物の角を曲がって歩いていく、女性の後ろ姿が見えた。
数人の女官を従えているところを見ると、身分の高い人――帝の后妃のうちの一人かもしれない。
それに、あの着物の柄にも見覚えがある。
洞窟でちらっと見えた袖だ……
追いかけないと!
走り出そうとした僕を、真白と夜刀が即座に止める。
「ちょ、どけって!見失っちゃうだろ!?」
「落ち着いてください、主!」
「朔夜! 気持ちはわかるけど、あれは相手が悪いって!」
「……!」
真白に言われて、踏みとどまる。
「あれ、たぶん后妃様方のうちの一人だろ? オレじゃあ誰かまではわかんないけど」
「……ああ」
「証拠もなく突撃したら、後々面倒なことになるぞ」
「……」
ごもっともな意見に、僕は黙るしかなかった。
まさか、真白に言われるとは……
悔しいけど、今はまだ直接接触するのは無謀だ。
紅子さんが居てくれたら、誰かくらいは、わかったかもしれないのに。
タイミングが悪かったな……
「主。今はとにかく、傷を治すことに専念してください」
「夜刀……」
心配そうな夜刀の顔を見ていたら、申し訳ない気持ちになってきた。
「そうだぜ、朔夜。お前はちゃんと傷を治せ。その間、オレが情報収集しておく」
「真白……うん、ごめん。ありがとう」
「いいってことよ!相棒!」
真白はそう言ってニカッと笑い、陰陽寮へ向かった。
頼りになるじゃん……相棒。
変わらない友情(?)がうれしかった。
僕はみんなのお言葉に甘えて、とにかく傷を癒すことに専念することにした。
夜刀が安心したような顔で、僕を抱え上げて、寝床まで連れて行ってくれた。
無茶したせいでちょっと開きかけた傷を、再び術で治療してくれる。
「ごめん、夜刀……」
「本当に、貴女は毎回、無茶をしすぎです」
ピシャリと怒られた。
式神に怒られる僕……
主として情けない。
うん、ちゃんと反省しよう。
しょんぼりうなだれる僕を見て、夜刀はふっと笑った。
あ、その顔、かっこいい……
そんなことを思いながら、夜刀の治癒の術の温かさに身をゆだねて、僕はウトウトと眠りに落ちて行った。
***
夜刀のお陰で穏やかな眠りについていた僕は、夢を見ていた。
それは、暖かくて、優しい光に包まれる夢。
大切な仲間たちの、温かい笑顔に囲まれてる、そんな幸せな夢だった。
(僕は、一人じゃない……)
胸がじんわり温かい。
仲間っていう、かけがえのない心強い支えを得て、僕は、改めて心の奥底で、強く、固く決意した。
(必ず、この都を蝕む黒幕を突き止めて、その邪悪な野望を打ち砕いてみせる。そして、この都と、僕の大切な人たちを、この力で、必ず守り抜く!)
僕の瞳に、どんな困難にも負けない、迷いのない強い光が灯る。
よし、やってやる!
でも、複雑に絡み合い始めた宿命の糸は、否応なく、僕をさらなる過酷な試練と、激しい戦いが待つ運命へと、ゆっくりと、でも確実に導いていくのだった。
【あとがき】
カオス会議:第3章第3話「男装の陰陽師は絡み合う宿命に巻き込まれる」編
登場人物:
朔夜:男装陰陽師。最大の秘密バレでメンタルHP限界突破中。
真白:親友兼爆弾魔。照れと茶化しのデュアルモード搭載。
夜刀:寡黙系剣士式神。でも今回は執事モード。嫉妬の炎が密かに燃える。
紅子:お嬢様かと思いきや、実は激アツ情熱派。恋も忠義も全力投球。
玄道:陰陽寮トップ。……って、それ本当に味方ですか?
真白:(テンションMAX)
「はーい、注目〜!!皆さま、大・騒・動の第3章そして第3話、お疲れ様でしたー!!主役の秘密、大☆爆☆発☆記念祭の開催でーす!!」
朔夜:(顔を手で覆いながら)
「誰がそんな祭り望んだよ……ていうか、毎回僕だけ精神的被害がでかすぎるんだけど……!」
紅子:(うっとりと)
「でも朔夜様……涙ながらにお礼を言うそのお姿……まさに儚くも気高き月下の姫君……尊さが過ぎましたわ……!」
真白:(突然興奮し始めて)
「てか!てかさ!!あの涙のとこ、感動しすぎて録画100回見返してた!!妄想で脳内再生されて止まらん!!やば!!!」
夜刀:(ふっと微笑みながら湯呑を差し出して)
「主、白湯を。動揺は肌の調子にも響きます。あと、真白殿の不埒な鼻血の処理は私がしておきます(真白を睨む)」
真白:(鼻押さえながら)
「はっ!?出てないし!?ていうかお前、何その完璧執事モード!ずるいぞイケメン!!」
朔夜:(小声で)
「ていうか夜刀、ずっと僕の髪とか整えてない?気のせい?いや、そこは触れないでおこう……」
玄道:(いつの間にか背後に立っている)
「――秘密が露わになる時、人は最も脆くなる。だが、それを嘆く必要はない。脆さもまた、人の美しさよ」
真白:(ガタッ)
「ひっ!?玄道様!?ちょ、いつの間に!?登場の仕方がめちゃくちゃ怖いんですけど!?」
紅子:(涼やかな顔で)
「相変わらず、現れ方がホラーでいらっしゃいますわね、玄道様……」
夜刀:(いつもの無表情で)
「玄道殿、お言葉はありがたく。しかし、主の心を乱す言動はお控えください。ゲンドウだけに」
朔夜&真白(衝撃を受けて)
「オヤジギャグ!?」
玄道:(悪い笑顔で)
「ほう。君もそういうタイプか? 気が合いそうだ……クックックッ」
朔夜:(そろそろ限界)
「誰か玄道様の“ラスボス感”OFFにして!?ほんと怖いから!!」
玄道:(不敵に口元を緩めて)
「私がいる限り、君たちの進む道は……決して退屈にはならんだろう」
朔夜&真白&紅子&夜刀:
「そのセリフが一番怖いわ!!」
朔夜:(膝を抱えて小声で)
「今回、友情に泣いた感動回だったはずなのに、なんでエンディングにホラー混じってるの……?」
真白:(肩をポン)
「まぁまぁ、朔夜。オレは信じてるぜ?オレらの絆は最強ってな!」
朔夜:(涙目で微笑み)
「うん……ありがとう、真白……」
夜刀:(さりげなく毛布を肩にかけながら)
「今宵はどうか、穏やかな夢を……主。私はいつでも、貴女の傍におります」
紅子:(優雅にお辞儀しつつ)
「わたくしも、いつでも力をお貸ししますわ。朔夜様……そして、真白様の暴走の抑止にも」
真白:(即ツッコミ)
「なんで俺だけ監視対象みたいになってんの!?」
玄道:(最後に静かに一言)
「さて……次の幕が上がるのを、楽しみにしているよ。ふふ……」
朔夜&真白&紅子&夜刀:
「だから!!不穏な締めやめてぇぇぇ!!!」
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その夜、藤原玄道の私室にて――
静かに焚かれた伽羅の香が漂う中。
玄道は文机の脇に置かれた小さな匂い袋にそっと指を触れ、微かに笑った。
(安部朔夜……いや、“彼の方の器”。お前はもはやこの手の内)
香が揺れ、光がゆらめく。
(宿りしもの……未だ未熟。だがやがて、お前は目覚める。光も、闇も、すべて引き連れて)
口元に、不吉な笑み。
(そしてその時こそ、お前は――“供物”となる)
微笑みの奥、狂気は静かに息を潜めていた。
◇◇◇
以上、「涙と混沌と裏切りの匂いが入り混じる」カオス会議でした!
玄道様の不穏な発言の詳細はカクヨム様に掲載中の「通常版」の第3章第3話で明かされています。
気になる方はこちら→カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16818622174255043824
「ライト版」だと朔夜視点のせいで入れ込めないので、ここで特別出演してもらいました(笑)
次回も波乱とラブ(と陰謀)が渦巻く予感しかしません!
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