プロローグ:男装の陰陽師は運命と出会う
目に留めていただきありがとうございます。まずは完結を目指します!
※本作は同タイトルの通常版をベースに、文体をライトノベル調にリライトした“別バージョン”です。通常版はカクヨム様とnoteに掲載中。noteの通常版は有料でSS(キャライメージイラスト付)と用語解説も付いてます。
“ツグナエ。ソノ死ヲモッテ――”
……は? なんすかそれ。いきなり物騒すぎない?
気がついたら、甘ったるくてなんか神聖っぽい香りが漂ってた。
あれ? これ……白檀?
っていうか、やたら静かじゃない? 時間止まった? 世界止まった?
(……ここ、どこ?)
見渡すと、白木の神殿みたいなとこ。
古びてるけど、月明かりがいい感じに差し込んでて……うわ、幻想的。
で、そのど真ん中に――金髪の女神?
キレイ……てか彫刻みたいに動かない。え、息してる?なんか怖っ……
でも……なぜかわかんないけど、足が勝手に前に出そうになる。
行けって、誰かに言われてるみたいな、そんな感じ。
って、次の瞬間。
ズンッって、空気が震えた。
女神の後ろにあった鏡が、バッ!て光り出して――
「うわっ、まぶっ!」
反射で目を細めたけど、その鏡の中に映った“誰か”を見た瞬間――
ドクンって、心臓がヤバい音立てた。
銀髪なびかせて、キリッとした男装の誰か。
めっちゃキレイ。オーラある。なんかこう、凛としてて、でも儚げで――
で、めちゃくちゃ僕っぽい。
いや、顔がっていうか……仕草とか、雰囲気とか、空気のまとい方が、完全に“僕”。
(……誰? これ、僕じゃないよね?)
でも目が離せない。心の奥が、ぞわぞわして、なんか懐かしいような、怖いような……
深すぎて底の見えない井戸、覗いたときみたいなゾクゾク感。
「ツク……ミ……」
風の音……? いや、違う。女神の口、動いた?
今、何て言った? “もうひとりの僕”の名前……?
「姉様……?」
思わず、僕の口からそんな言葉がこぼれた。なんで“姉様”?
僕に姉なんて、いな――
女神が、ニヤァって笑った。
その笑顔がね、ヤバいの。神様っていうより、むしろ……魔。
ゾワッと背中が総毛立って――景色が、ぐにゃって揺れた。
“ツグナエ。ソノ死ヲモッテ――”
(ちょ、またそれ!? てか、僕に言ってる!?)
鏡の中の“僕”の耳を通して、声が頭ん中に直撃してきて。
バチッと、何かが身体を貫いて――
――気づいたら、目が覚めてた。
暗い天井。涙が一筋、頬を伝ってた。
(なんで……泣いてんの、僕?)
意味はわかんないけど、ただの夢じゃないってのは、わかる。
あれは、きっと――僕の宿命に、繋がってる。
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