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菊花

男は笑っていた。紅を塗った唇。薄く染まった頬。気弱そうな瞳は綺麗に飾られている。


男は笑っていた。視線の先には枯れた菊の刺さった花瓶が1つ。殺風景な部屋にそれだけが存在感を示している。


男は笑っていた。目の前の静寂を無視する音楽が頭の中に鳴り響く。楽器はない。歌はない。音はない。彼以外には聴こえない音楽。


男は笑っていた。赤く染めた爪先をあなたに向けている。紅の塗られた唇を歪めている。飾った瞳を細く輝かせている。


男は笑っていた。


「 」


男は笑い続けていた。それからあなたに出来たことといえば、結局鏡の中で崩れ落ちることだけであった。


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