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春の花嫁  作者: 夜凪
第1章 農村のお姫様
3/9

お土産話

なんだかんだお父さんのお手伝いやらをやっていたら、あっという間に夜になってしまった。


「ねぇ、お姉ちゃん。次何手伝ったらいい?」

「アデルのこと手伝ってきて。なんかちょっと大変そうだから」


そういえばさっきからみてないな。なんかガタガタ音は聞こえるけど…


アデルが帰ってきた日の夜は、いつもより少し豪華な夜ご飯だった。

アデルが帰りがけに買ってきてくれた野菜やお肉を使ったグラタンやスープ、南の領地のフルーツまであった。たくさん食べ過ぎて太りそうだ。


お母さんは体調が優れないからと早く寝てしまった。母の代わりに姉が明日以降の分のパンを作っていて、アデルはと言うと…


「アデルー、入るよぉぉぉお???!」


え、何してるの…?


部屋に入って目に入ったのはとにかくたくさんの「モノ」だった。本人曰く旅のお土産を片付けているところだと言っていたが、私の体よりも小さな鞄にこんなにたくさん入るとは思えない。というかさっき見せてくれたお土産よりも量が増えてる気がする。


そういえばアデルの部屋って時々めちゃくちゃ汚くなってて、そうかと思えばいつのまにか綺麗になってた気がする…


部屋中を見渡しながらふと、足元に落ちていた紙の束に目を止めた。


「ねえねえ、これなーに?」

「あぁ、これはね…」


そういいながら私をベットに招いてくれ、二人で腰を掛けて座りながら、旅の思い出話を聞かせてもらった。

どうやら今回の旅は昔のお友達に会うことが目的だったらしい。この紙の束はそのお友達との手紙だといっていた。


まだ字が読めないからなんて書いてあるかはわからない。なんか大事そうな手紙だけど、床に置いといていいのかな…

なんとなくダメな気がして、そっと机の上においておくことにした。


お友達と会ったのは5、6年ぶりで、昔話に花が咲いたと微笑みながら教えてくれた。

アデルのお友達ってどんな人なんだろう。なんとなく美人でお金持ちそう…


「そのお友達ってどんな人なの?」

「そうねぇ、とても頭のいい人ね」

「頭がいい…お勉強ができるってこと?」

「それもあるけれど、何というか賢い方なのよ」


ふ~んと返事をしたものの、あまりよくわからない。いつか機会があれば合わせてくれるらしいので、楽しみにしておく。


お友達の話以外にもよその街のお洋服屋さんが素敵だったとか、お菓子が美味しかった話とか、踊るクマさんに出会った話とか不思議な話もたくさん聞かせてくれた。


「そうだ、忘れていたわ。リーゼに渡したいものがあったのよ」


えーっと、どこだったかしらとぶつぶつ言いながら、アデルは再びカバンを漁り始めた。まだ鞄から物が出てくるとは信じられない。


「はい、これをあなたに。」

「うそ、信じられない…」


恐る恐る手を伸ばし、アデルからのプレゼントを受け取った。


「綺麗…こんな素敵な靴もらっていいの?」

「もちろんよ」


刺繍の入った革靴なんて履く機会もなければ、見る機会もほとんどない。アデルはよく履いているが。


「とある街の商店街でたまたま見つけたのよ。リーゼに似合いそうだと思って買ってきたのだけど、すっかり忘れてたわ。気に入ったかしら?」


あまりの嬉しさにわたしはアデルにとびついてハグをした。


「ありがとう」

「いいのよ。せっかくだから履いてみる?」


うん、と首を縦に大きく振り、恐る恐る足を入れる。


「大きさもピッタリね。素敵よ、リーゼ」

「なんか、お姫様みたい」

「あら?リーゼはこのお家のお姫様だってリュークさんが言ってるじゃない」

「そうだった」


浮かれて踊っているとお姉ちゃんにはやく寝なさいと怒られてしまった。明日森に行くことをすっかり忘れていた。


「アデルー、今日は一緒に寝たいー!」

「いいわよ。そろそろ私も寝ないといけないし、枕を持っておいで」

「はーい!」


アデルと一緒になるの久しぶりだな〜。靴はなくなさいようにちゃんとしまわないと。はぁ、ほんとに綺麗…


アデルの部屋に戻ると、アデルはもう寝る支度を終えていた。準備早いなぁ。というか少しお部屋が片付いてる気もする。


「さぁ寝ましょう」

「うん」


そう言って2人でベットに横になった。2人だとほんの少しだけ狭い気もするが、それがちょっとだけ楽しくて良いのだ。


「おやすみリーゼ」

「うん、おやすみアデル」


ゆっくりと目を閉じると、わたしはそのまますぐに寝てしまった。


翌朝、いつものように今度は母に叩き起こされて1日が始まった。

「いつまで寝てるの!もう!みんなとっくに起きてるわよ!」

「あでるはー?」

「今日はお父さんと畑に言ってるわよ。寝ぼけてないでさっさと起きなさい!」


一晩寝たら体調も良くなったらしく、いつもの元気でわたしを叩き起こしている。お母さん恐るべし。


着替えを済ませ、のそのそと下に降りると朝ごはんが並べてあった。


「ほら、さっさと食べちゃいなさい!またリーゼが最後よ?」

「レオンがいるもん」

「レオンはいいのよ。アリシアはもう食べ終わったわよ?早くしなさい!」

「はぁい」


早く食べなきゃいけないことはわかってるけど、沢山食べようと思うとそれなりに時間がかかってしまう。美味しいご飯はゆっくりと味わって食べたいものだ。


「まったく…今日は森に行くんでしょ?もうみんな集合場所に来ちゃうわよ?」

「わすれてた!」


そうだ、今日は森に行くんだ!すっかり忘れてた。森に行くのはとっても好き!なぜなら、森には美味しい木の実と果物とそれからそれから…


「こらっ!早くしなさい!」

「はひっ」


あうぅ、母を怒らせてしまった。これはまずい、早くしないと…


「ごちそうさまでした!ねぇお姉ちゃん、何か手伝う?」

「洗い物お願い出来る?私レオン見てくる」

「はぁい」


洗い物嫌いじゃないけど、でればレオンと居たかった。洗い物以外にも森に行く支度だってしなければいけない。そうなると森に行くまでにはほとんどレオンと居られない。


はぁぁぁ、わたしの可愛いレオンはお預けかぁ…

そういえば朝起きた時、アデルのお部屋きれいに片付いてたな…アデルすごいなー。


「よし!洗い物終わり!次は支度だね!」


えーっと、籠と手袋と、あとはナイフとハサミだけだね。まぁ、ナイフはお姉ちゃんのだけど。もうちょっと大きくなったら私にもくれるってお父さん言ってたけど…


「お母さん、髪の毛結んで〜」

「ちょっと待ってね…」


髪の毛を結んだり、お洋服を選んだり、こう言う瞬間がわたしはたまらなく好きなのである。とは言っても今日は森に行く日なので綺麗なお洋服は着れないが。


「今日は何色のリボンにするの?」

「う〜ん、青!」

「はいよ、ちょっと待ってね」


少し癖のある自慢の長い白髪を櫛で梳かし、後ろでひとつにたばねてもらったら森に行く支度は完璧である。


「お姉ちゃん!支度できたー」

「はーい、今行くー」

「2人とも!今日は木の実と果物をお願いね」

「うん、わかった。私が木の実採ってくるから、リーゼは果物よろしく。お昼前には帰って来れると思う」


広大な畑を駆け抜けて広場へ向かうと、十数人かが既に待っているのが見えてきた。


「あ、もうみんな待ってるよ」

「リーゼ待ってよ!もう!相変わらず足は速いんだから…」


私は多分この近所でも足が速い方だ。それに木登りだってかなり得意だ。見た目からはあまり考えられないけれど、自分でも身体能力は高い方だと思う。


「みんなおはよう!遅れてごめん」

「いや、俺達もさっき来たところ。また寝坊か?」

「寝坊じゃない!と思う。うん」

「ほんとかよ」

「リーゼは寝坊ばっかりだもんね」


二人は私の幼なじみで親友のニックとマリア。

ニックはミルクティー色の癖毛にヘーゼル色の瞳を持つ、私と同い年の少年だ。寝癖をからかうと猫みたいにかみついてくる。ニックとは小さい頃から特に仲良しで、赤ちゃんの頃からいつも一緒にいた。家では出来ないからか、最近は少しお兄ちゃんぶってくる。ニックにはルーラって言うお姉ちゃんがいる。ルーラはアリシアと同い年ってこともあって、2人は親友だ。いつでも2人は一緒にいる。ニックの家族とは家族ぐるみで特に仲がいい。何かあればお互い頼れる素敵な関係性だ。マリアは私達3人の中だと大人しくって少しおねえさんっぽい。薄いピンク色の髪の毛に濃い赤ピンクの瞳を持つマリアは、ほわほわしていてつい守りたくなってしまう。実際はそんなにか弱くはないんだけどね。三人兄弟の長女で、喧嘩した私とニックの仲裁をしてくれるのはいつだってマリアだ。


「みんな揃ったみたいだし、それじゃあ行くか!」


彼はみんなのお兄ちゃんのルイ。赤毛のイケメンだ。下に兄弟が3人もいて、いつもこうして森に行く時はみんなを引率してくれる。ルイを嫌いな人はいないんじゃないかってくらいみんな彼が大好きなのだ。大体ここら辺の女の子達の初恋はルイだ。ちなみにうちのお姉ちゃんも例外ではない。


森までの道はそう遠くない。家から歩いていった方が近いとは思うけれど、みんなと行くから楽しいのだ。それに森には色んな動物が居るから大人数で行かないとダメだと周りの大人みんなが言っている。


「よし、12の鐘が鳴る前にここに帰ってくること!それと森での約束は守ること!いいな?」

「「はーい!」」


森での約束。1つ目は必ず2人以上で行動すること。理由は単純、危険だから。2つ目は森の奥のには行かないこと。奥に行けば行くほど危険な動物がいるらしい。3つ目は時間を守ること。いつも集合場所は同じ森の広場だから迷って時間に遅れることはほとんどない。そして最後は動物に会ったら近づかないこと。これを守らないとこの森から強制的にお家に帰らされてしまう。ルイお兄ちゃんのお叱りと共に…。

今日も私はニックとマリアと一緒に行動することになっている。


「2人とも今日は何採るの?」

「俺は果物ときのこかな」

「私はお姉ちゃんが木の実担当だから、今日は果物だけ。マリアは?」

「私も果物ときのこ。今日は早く済みそうだね」

「うん」


森の中は色んな木や草、花に囲まれている。お花畑のように綺麗に花が咲いているところもあれば、木が沢山生えていて薄暗くて少し怖いところだってある。私のお気に入りの場所は川の近くの丸太だ。そこから見えるお花畑はとってもキラキラしてて綺麗なんだよね。


今日の目的地はそこから少し離れた、日当たりが良く、少し背の低い木が多いところ。背の低い木とはいえ、登るのは少し大変だ。今はもう夏の終わりだからルーベルなんかの果物が取れると思う。


「ねぇねぇ、あの木登ったら楽しそうじゃない?」

「あんま寄り道すると怒られるぞ」

「少しくらい平気だよー。ほらっ!競争!」

「おい!待てよ!」

「ちょっと!2人とも!」


大きな木を目掛けて一直線で走り、あっという間に上り終えてしまった。


2人とも遅いな〜。あ、

ふと遠くに目をやるとお気に入りのお花畑が見えた。


この木からも見えるんだ…ほんとにいつ見ても綺麗。きっとあんなお花柄のワンピースがあったら素敵だろうなぁ。


「リーゼ、お前、早すぎ!」

「見て、ニック。マリアも」

「綺麗だね」

「だな」


もうちょっとだけ上の方登れたりしないかな。ここを登ってその後は…うぉ?!お宝発見!


「ふたりとも!世紀の大発見だよ!ザッツェの実がなってる!」

「まじか!リーゼ、俺らの分も取ってくれねぇか?」

「仕方がない、取ってあげよう!よいしょっ」


それにしてもこんなところにこんな立派なザッツェの実があるなんて知らなかった。お仕事完了だねん。


集合場所に戻る途中、他の果物もいくつかゲットできた。今日は豊作である。


「よーし、みんないるな!今日はこれで解散だ!気をつけて帰れよー」

「「「はーい」」」


いつものようにルイの声がけで解散だ。ちょうどお昼時なこともあり、私たちはみんな腹ペコだ。採ってきた果物たちを食べたいという衝動との戦いである。


「じゃあ、わたしこっちだから。2人ともまたねー」

「うん!気をつけてねー!」

「じゃあな」


途中までは3人一緒だが、マリアは私とニックのお家とは少し方角が違うから、ここでお別れだ。ニックのお家はわたしの家のほんとにすぐ近くなので、結局最後まで一緒だ。喧嘩した時はほんとに地獄である。まぁ、お姉ちゃんと喧嘩した時は1番の避難先だ。


「じゃ、またねー」

「おう!またな!」


「ただいまー!」

「2人ともおかえりなさい。家の中に入る前に汚れを落として来なさい。家が泥だらけになっちゃう」

「はーい」

「特にリーゼ、また木登りしてたんでしょ?服に汚れが着いてるわよ」


あぅ、バレてる…

お湯で濡らした布で髪や体を綺麗にしていく。月に数回街にあるテルマエに行くこともあるが、基本はこんな感じで綺麗にする。すっきりさっぱりしたらようやくお昼ご飯である。


頑張って取ってきてくれたからと、お母さんがパイを焼いてくれた。


う〜ん!美味しい!疲れが取れる〜!


リーゼの日常です。家族以外のお友達の登場です。この世界には地球上には存在しない動植物が出てきます。どんなものか一度想像しながら楽しんでいただけたらと思います。

(いつか説明とともにまとめようかなと思っております)

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