75.善(ぜんちょう②)
昼下がりの午後。いつもの通り書店を訪れる客はない。数日前に変わった娘がガイドブックを購入したくらいだ。ちなみに半年ぶりの売り上げであった。店主は本が売れなくとも生活していける金はある。此処は趣味の延長、本の贈与者の遺言を守っているだけだ。
それにしても、せっかくあれだけ絵本を用意してやったというのに絵本は購入しなかった。ただ娘の話はとても興味深かった。できることなら、あの娘ともう一度話してみたい。
この書店には、ある聖法が掛けられている。「真実を追い求めようとする者しか認識できない」という阻害効果のある聖法であった。
ドアベルが、カラン、と軽やかな音を立てた。
おや、とニーカ・フォルツはドアに視線をやれば、珍しい客が立っていた。
「やあ、ニーカ。久しぶりだね」
「そりゃ、こっちの台詞だよ。街まで降りてくるなんて珍しいじゃないか」
「今日は麓の教会で説諭を頼まれてね。それが終わって寄ったのさ」
トリトは昔は長身の麗しい顔立ちの好青年で貴賤問わず老若男女、犬猫鳩など慕う存在が絶えない磁石のような人間であった。貴族、金持ちに誘拐されかけたことは両手の数では足りない。そのたびに、ニーカとギーランで救出に向かったものであった。人誑しの天才でもあったことから誘拐されても自分で帰ってくることもあった。犯人からもらったと思われるゼロが続く小切手を片手に。これと引き換えに、犯人を追及しないで欲しい、と当代教皇と渡り合った。あの時のレイルル教皇の青筋の数は幾つだったろうか。
何度目かの拐かしで、毎度おなじみ捜索隊が組まれた。もちろん、ギーランとニーカもメンバーに入っていた。いよいよ出発という時、トリトはふらりと戻ってきた。
それを目にしたとき、ギーランは、街中であるにもかかわらず吠えた。
「もう探さなくて良くない?自分でハウスできるならよくなくない!?」
捜索隊の面々は、拍手喝采でギーランの意見を支持した。トリトはへらへら笑っているだけであった。
その後、正確に言えばギーランが教皇に即位してから本格的な捜索隊は組織されず、3ヶ月経ったら探しに行くか程度まで優先順位が下げられた。自力で帰ってくる度に寄付金を携えてくるのだ。探さない方が良いと判断されたのだろう。
さすがに今は誘拐されることもなく、順調に歳を重ね、修道女たちからは「可愛らしいおじいちゃん」と人気があるくらいに落ち着いている。
「相変わらずすごいね。落ちてこないのかい?」
トリトは鷹揚に言って、「よっこらせ」と奇跡的に本が積み上げられていない丸椅子に座った。それは、先日、ラティエースが座った椅子で、本を積み上げられることはなかった。
「何がどこにあるか分かっているんだからいいんだよ」
ニーカは顔を背けて言った。
「この間、ラティという娘が来なかったかい?女神様や聖女様のことについて調べている娘なんだが」
「なんだい。あれ、あんたの紹介だったのかい?」
「違う、違う。ラティエースに付けていた追跡の護符が此処で途切れたからね。あの子は自力で見つけたのさ。此処を」
「なるほどね・・・・・・」
此処にある書籍のほとんどは、ギーランの形見だ。ギーランは元々、教皇になるつもりもなかった。女好きで、教典で禁止されていることを率先してやるような男であった。10年の奉公期間が過ぎれば、国に戻って家族を作ると公言してはばからない男であった。それが、育ての親であるレイルルの変節により、ギーランは将来プランを捨て、教皇になることを選んだ。レイルルが戦争を呼びかけるわけがない。レイルルの人柄を知るものならば、彼はまるで別人だと口にするだろう。
レイルルの最後も不可解なものだった。聖女召喚・秘術行使の失敗続きの後、辛うじて息のあったレイルルは単独で聖ケイドン魔法国へ赴いた。数日後、魔法国のトップの死と、彼の亡骸が還ってきた。それはまるで、獣に食いちぎられたような有様で、首から上だけがきれいに残っていた。
レイルルの死後、ギーランはとりつかれたように研究に没頭した。トリトにも手伝わせ、また同時に終戦についても尽力した。ニーカは、新たに創設された天罰官という組織を任された。ニーカは己の得意分野を存分に天罰官候補に叩き込み、今の天罰官の基礎を作り上げた。
「で、ラティは真実に近づけたかい?」
「ああ。あの様子では秘術の実態にも気づいただろう」
「そうか・・・・・・」杖を立て、前屈みになったトリトは眉をひそめる。「ラティなら、自分で悪魔召喚をするって言いかねないんだよ」
「ほう・・・・・・。それだけの聖力があの子にはあると?そういった力は感じ取れなかったけどねぇ」
「あの子自身にはないよ。だから別の方法を模索するだろう」
「別の方法か・・・・・・。確か、あのミルドゥナ大公の孫娘だろう?3年前にもロザの危機を救ったっていうじゃないか」
「そう。レオナルドさんにそっくりなんだ、これが」
「やるね。気質がそっくりなら」
ニーカも何度かミルドゥナ大公と対峙したことはあったが、気高い獅子のような男だった。誰も自分の上には立たせないという帝室出身らしい選民思想があるかと思えば、敷居を低くし、親しみやすさを醸し出したりもする男であった。縄張りに入れるまではどんな道化でも厭わないが、一度入れてしまえば、食うのも生かすのも自分次第。そういうゲームを楽しむ男であった。縄張りに入れても自分に屈服しない相手に対しては二極化していた。とことんいたぶるか、とことん甘やかすか。トリトは後者であった。彼も何度かトリトの誘拐犯を捕まえるのに協力してくれたことがある。時折、大公自身がトリトを誘拐して、自身の領土で教えを請うたり、チェスの相手をさせたりしていたが。
「どうすんだい?個人的には応援したいところだけどね。三代に渡って続いた因縁を断ち切って欲しいもんだ」
「わたしもそう願っている。こうなった以上、年寄りは若者の邪魔にならぬよう隅っこで掃き掃除でもしていた方がいいかね」
掃き掃除。ギーランがよく使っていた言葉だ。一カ所にゴミを集め、最後にちりとりでゴミをまとめ、廃棄する。この場合、ゴミは長老会、特に最高メンバーたちだ。教皇たちの不幸の半分くらいは、あの狂信者どもに原因がある。
「おいおい・・・・・・」
トリトには似つかわしくない発言だ。そういう物騒なことを言うのは、ニーカかギーランの役割であった。
「この間、最高メンバーの何人かと話をしたけどね。魔法障壁を消すまで彼らは教皇を立て、聖女を召喚させ、秘術を発現させる。たとえそれが年若い元聖女でも、6歳の聖女でも関係ない。彼らはね、この国のために死ねるなら本望だろうと言ったよ。わたしは、久々に怒りを抱いたね。ギーランが死んだとき以来だ」
長老会のトップ、大老という地位に付いている男、フェネルは特に厄介な男であった。アカネという聖女を教皇に押し上げたのも、彼の強い推薦があってのこと。贄である聖女が同胞を呼び寄せ、秘術を発現させる。下手な教皇よりも成功率が上がるのでは、と周囲を説得したのだった。
――――――狂信者っつーのは、極限になると悪魔だな。
ギーランもフェネルにはよく手こずっていた。フェネルは聖戦を理由に、戦争の継続を強く訴えていたが、元々、魔法障壁発現というだけで喧嘩を売ったのはロフルト側なのだ。戦争が長引くにつれて、その意義も薄れつつあった。侵略者がロフルト側であることに協力関係にある国々も気づき始めてきた。ギーランが半ば無理矢理に神兵軍を下がらせたが、すでに当初の目的は彼方であり、ロザ帝国と共和国は泥沼の戦争に突入していた。
ギーランが聖女召喚を決断したのは、ロフルト教皇国と聖ケイドン魔法国の戦争の構図が変化し、各国が領土拡大やそれぞれが信じる神や信条を盾に○しあいをする場に成り果てた頃であった。再度、この戦いには聖戦だと内外に示すための聖女召喚であった。ギーランは、自分が聖女を召喚することも、また秘術を執り行うことなどできるはずがないと分かっていた。それでも、己が命を賭けて勝利のために聖女を召喚しようとした事実は、救いになるのではと考え抜いた結果であった。
ギーランの身を賭した聖女召喚の結果は世情を変えることもなく、戦争はそこかしこで継続された。やがて、疲れ切った国々が停戦や休戦に前向きになり、トリトをはじめとした聖職者が仲立ちして戦争終結条約が締結されたのだった。
終戦しても、ウィズのような戦火の爪痕が色濃く残った寒村の子どもは、今も売買の対象、口減らしが平然と行われている。トリトにとっては、戦争はまだ終わっていない。そこにきて、ビジーノによる聖女召喚と秘術行使ときた。もし、魔法障壁が消えたら、世界はまた戦争に突き進むのだろうか。そして、また、あの凄惨な景色を見なければならないのだろうか。
あの言葉に出来ない辛さ、喪失をレンや他の子どもたちにも体験させることになろうのだろうか。
「させないさ、二度と・・・・・・」
レイナードは王都にある小さな食堂の隅で、待ち人を今か今かと待っていた。レイナードの後ろと前のテーブルは護衛たちが占領していたが、他のテーブルでは食事をしている人々と給仕が行き交っていた。主人が前もって伝えてくれているのか、給仕はレイナードの正体を知っても、不躾に近づいたり、声を掛けたりしてくることもない。客たちも主人自ら説明しているのか、軽い会釈程度で横切っていく。
この食堂は、アマリアとその夫、クレイが営む食堂で、王都でも評判で、最近では観光客も食堂目当てに訪れるくらいの人気店であった。今はアマリアが不在だが、現行のメニューでも充分、満足させているようだ。賑わいが途切れることはなかった。レイナードはそんな人気店を自分の待ち合わせ場所に利用することに申し訳なさを感じていたが、店の主人はあっけらかんと言った。
「構いませんよ、それに、王子様がいらしゃったとなれば、うちの店はもっと繁盛しますから。ありがたく宣伝させて頂きます」
クレイの気の良さに、レイナードはすぐに彼のことは気に入った。
「遅くなってすんません」
ようやく現れた待ち人は、カスバートであった。身ぎれいにしているものの、彼の着ている旅装束は至る所に汚れやほつれなどがあった。臭いはしないが、服も彼自身も草臥れた様子は拭えない。かなりの強行軍でレイナードの頼みを聞いてくれたのだろう。
「いや、構わない。話す前に何か食うか?」
「ああ、いいっすか?王子は何か食べますか?」
「いや、俺はいい」
此処で飲食をすれば、護衛たちに迷惑を掛ける。此処では毒味はできないし、万が一、この店でぶっ倒れでもしたら、目も当てられない。
「すんません、カツ丼ください」
何かを察したカスバートはレイナードにメニューを押しつけるような真似はせず、手を上げ、給仕に向って声を上げた。給仕の娘は軽く頷いて、オーダーを厨房に通しに行った。
「じゃ、注文が来るまで報告しますね。まず、ロフルト教皇国ですが、王子の書状と賄賂用の宝石を持たせてくれなかったら入国すらできませんでした。降臨祭で、俺はラティエースについて廟まで行ってますし、聖女の姿も見てますから。しっかりブラックリスト入りしてましたね。ラティエースが直感を働かせて、すぐに出国するよう言って、手持ちの財布を持たせてくれたから、どさくさに紛れて出国できましたけど。
3ヶ月後に入国しようとしたら、すぐに衛兵にとっ捕まって尋問を受けました。書状があったから何とか許可が出ましたが、聖都では常に見張られている感じがしました。ギルドに立ち寄ったら、監視の聖法が掛けられている、と。解除するとますます疑われるから付けたまま動きました」
カスバートは元商人の息子だけあって、危機察知能力に長けている。監視があっても思い通りに動ける豪胆な処もある。やはり彼に任せて良かった、とレイナードは思った。
「ラティエースたちへの面会は許可されませんでした。賄賂用の宝石を使って情報収集に当たりましたが、聖女の世話をしている。それ以上の情報は得られませんでした。聖女のことすら知らない者も多かったです。ロフルトでは聖女召喚のニュースは全く流れていませんでした」
「そうか・・・・・・」
(何故だ。何故、隠す?秘術発現まで極秘にしておくつもりか?)
しかし、降臨祭で建物が崩壊し、けが人まで出たのだ。原因も発表せずに放置するのは悪手だ。聖女召喚の余波と言えば、誰もが犠牲に対して不服を言うとは思えない。
国の重鎮が列席していたにも関わらず、釈明も説明も、もちろん謝罪もない。レイナードとてミルカが無傷だったから事を荒立てるようなことはしなかったが、もし何かあったら正式な抗議とロフルト教からの離脱も考慮していただろう。
そもそも、レンの動きが気に入らない。レンの考えていることが分からない。ラティエースを巻き込むのはまだいい。それくらいの貸し借りはあるし、合宿メンバーはお互いそうやって助け合ってきた。だが、なぜ、エレノアやアマリアまで巻き込む。まるで、ラティエースに対する人質のようだ。レイナードを巻き込んで、聖女のケアを要請しておきながら、それを隠す。外部との連絡も断つ。レンのことは信じたいが、不信感を抱かない方が難しい。
「やっぱり、ラティの言うとおり緊急マニュアル通りに動くか・・・・・・」
「緊急マニュアルっすか?」
「ああ。もし、ラティたちが3ヶ月以上戻らない、さらに音信不通の場合は、孤児たちをミルドゥナ大公領に移動させる手はずになっている。あそこの孤児は、ロイネリウム王の庶子やら血筋や生い立ちが複雑な子どもしかいない。正直、此処で守るにも限界がある。その点、大公の城なら安全だ」
「なるほど・・・・・・」
ちょうど、カツ丼を持った給仕が近づいてきた。「おまちどおさまです」と言って、どんぶりとスプーンをカスバートの前に置く。揚げたてのカツと半トロの卵、そして甘辛いタレが掛けられた丼からは、かぐわしい香りが漂う。
レイナードは不覚にもつばを飲んでしまった。
「やっぱ、もう一個注文しますか?」
「いや、いい・・・・・・」
「俺が毒味したら、食えますか?」
「あっ、いや・・・・・・」
チラリと前の護衛を見れば、少し迷った後、人差し指と親指でわっかを作って「OK」のサインを示した。レイナードは思わずパアッと表情を晴れやかにする。
「小皿に少しくれ」
「うっす」
カスバートはカツと卵、甘いタレが絡まったご飯を均等に小皿に盛る。そして、先にカスバートが食べて、半分くらい食べ終わったところで、レイナードも口を付けた。
「さっきの続きっすけど、3人の存在も基本、極秘ですね。ロフルトの滞在期間いっぱいで、これくらいしか分かりませんでしたので、次の目的地、聖ケイドン魔法国の外郭都市パーバに向いました。こっちの方が俺は伝が使えますんで、わりと動きやすかったです」
過去の汚点ではあるが、カスバートは昔、人身売買に携わっていた。仲間を全て失うという制裁を受けた後、仲間の仇を討つために再び立ち上がり、ラティエースたちに返り討ちに遭った。
「で、魔法国の方は?」
「穏やかなもんでしたよ。聖女召喚の話なんてこれっぽちも噂されていませんでした。ただ、昔なじみから聞いた話で少し気になったことが一つあります」
「何だ?」
「・・・・・・奴隷たちの値段が1年前より3倍の値段まで上がっているそうです。こんなことは初めてだとぼやいていましたし、俺にももし売れそうな奴隷がいるなら融通してほしいと言ってきましたよ」
ちょうど1年前。ラティエースは共和国の人身売買組織を壊滅させた。やはり、魔法国が主な供給先だったということか。魔素の影響を受けていない国の出身者は魔法国の研究者に実験体として大いに喜ばれると聞いたことがある。
「ロフルトに備えて実験を加速させているとかか?」
「そんな感じに見えなかったんですけど、切実に人材不足って感じでした。ひょっとすると実験体ってのは噂だけであって、本当はもっと別の理由で使われているんじゃないかと思いました」
「・・・・・・。お前の仲間も実験で酷使された状態で見つかったんだろう?」
少し気まずそうにレイナードは言った。
「ああ、はい」
――――――死なせて。
リュークは、干からびた唇で、かすれた声で、言った。骨と皮だけの身体で、あばらが浮いていた。両手首には注射痕や縛られたり、暴行を受けた痕があった。
ただ、今思えば、実験されたかどうか分からない。本人の口から聞いたわけではない。あの状況からはそうしか思えなかったが、改めて考えると決めつけていたように思える。とはいえ、確かめる術もない。
光の入らないゴミ捨て場のような場所に、リュークたちのような人たちがたくさん転がっていた。施設にいた老婆が言っていた。
「こいつらはまだいいほうさ。五体満足で戻って来れたんだから」
そう聞いたから、ますます実験体にされたのだと思った。
(他に、何か言っていたっけ・・・・・・?)
リュークたちの姿に動転して、そのときの状況はあまり覚えていない。
――――――昊から・・・・・・神が墜ちてくる・・・・・・。
(いや、あれはリュークじゃなく、他の奴が言っていたんだ)
膝を抱え、片手の指を口に咥え、がたがたと震えていた。目の焦点はあっておらず、ただ何かにおびえていた。
(そうだ。皆、何かに怯えていた)
「聖ケイドン魔法国の内部で何が行われているか知る者はいないってことか……」
カスバートは小さくつぶやいたが、その呟きはレイナードの耳にしっかり届いていた。
「確かに、実際に目にした人の話って聞かないよな。共和国とは関係が深いみたいだけど」
「いや。共和国、連邦、その他周辺諸国と魔法国の関係は意外と希薄です。貿易とちょっとした技術協力くらいで、魔法国は閉鎖的な国です。国の外側にいくつか海外との窓口になる外郭都市と他国にギルドを置いていますが、実態は奴隷の買付窓口ですね。基本的に他国との積極交流はありません。ラティエースは魔法国ギルドと商売してたって聞きましたけど」
「まあ、な」
カノトの伝の伝を使って、数年がかりで転移装置設置契約にこぎつけた。まず手始めに、宝石の屑をやりとりし、その後、ラティエースは頻度を上げることと大型物資の転移を要求した。
契約の決め手は、メーン伯爵領の小麦の大量出荷だ。あそこは、ローエン伯爵領に卸さなくなった分、在庫を抱えて実は困っていた。ラティエースが通常の3割増しの値段でメーン伯爵領の小麦を買い付け、それを魔法国に定期出荷する条件を提示し、魔法国はギルドを通じて了承したのだった。あれで、転移装置の実験は加速し、宝石だけでなく色々な物を転送させるようになった。
相変わらず節操なく色々な商売に手を出しているな、とレイナードは内心呆れた。本人がいれば「柔軟と言ってくれ」と言い返してきそうだ。つまり、魔法国には、少なくとも食わせなければならない国民はいるということだ。
「とにかく、魔法国は通常運転。あそこはロフルトに興味がない・・・・・・?」
「ああ、そんな感じかもです」
ロフルトの魔法国に対する情熱と、魔法国のロフルトに対する無関心。このアンバランスな熱量は奇妙だ。どちらかが相手を打ち倒せば、魔法もしくは聖法を独占できるというのに、魔法国にはそんな野心すら見えない。それは、外よりも中に注力しなければならない問題があるということだ。もしくは外には全く興味がなく、外界をシャットアウトするためだけにあの障壁を作り上げたのかもしれない。
それまでは、あまり注視する必要のない国であったが、俄然、興味が出てきた。
(あの中には何が入っているんだろうか)




