8話 オークの集落にて
下層へとどんどん降りていく。魔力感知を使い敵を見つけては魔法攻撃や近接攻撃で敵を薙ぎ倒す。戦った魔物に対する感想だが、ランクは居てもBだろうと言う推測だ。それでもたま経験値が入るのでC以下の魔物が多いのだろう。巨大木人形のようなボスみたいな魔物が他にも居た。巨大狼や上位霊などだ。上位霊には物理攻撃が効かなかったので雷魔法の【電速】付与で倒した。
「下に潜れば潜るほど強い魔物が増えていくのだな。それぞれ倒し方があるのはいい。実力的に倒せない敵が現れた時はどうしようか。防御力や回避力を上げる技能が欲しいものだがそれを持つ魔物になかなか出くわさないな。倒せれば【暴食】でゲットできるのだが。」
途中、ルキナは宝箱を見つけた。宝箱を開けると、
篭手と靴を見つけた。
【白砂の篭手】:物理攻撃に20%のバフをかける。
【白砂の靴】:物理攻撃、移動速度に20%のバフをかける。
「これは使えるな。これがあれば更に強くなれる。」
そして下に20階層分降りたあたりでオークを見つけた。オークはダンジョンの中で集落を作っており、警備みたいなオークもいる。だが、オークも鬼に連なる者のため、同族みたいなものだ。
ルキナはオークが住む集落へと近づいた。
「そこのお前、止まれ。何者だ。」
オークの見張りがルキナに言う。
「俺は半鬼神のルキナだ。オークは鬼に連なる者のはず。同族だと認識しているがいかがか。」
「だがここは我々オークの集落だ。例え同族であろうともそう簡単には入れることはできない。」
「そうか。ここの集落の長はかなりの強さだと思ったのだが。」
「ビルマルキン様にお伝えしろ、ブルング。半鬼神のルキナが長に会いたいと。」
「かしこまりました。」とブルングと呼ばれたオークは集落の奥へと走る。
「少し待ってもらいたい。長との確認が取れ次第、入れてやる。」
「では俺は少しの間待たせてもらう。」
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「長との確認が取れた。ついてこい。」
ルキナは見張りのオークについて集落の中に入る。
集落の中に入るとかなりのオークの数がいた。200じゃきかないだろう。その奥に手作り感はあるが他の家とは比べ物にならない出来栄えの建物に到着する。
「ビルマルキン様!半鬼神のルキナをお連れしました!ワセッドです!」
「通せ…。」
ドアが開かれ、ルキナとワヒッドが入る。2人が入り終わったのち、ドアが閉まる。
中は至ってシンプルだ。玉座があり横には武装したオークが2体、その横には少し強そうなオークたちが右20左20と立っている。豪華にもレッドカーペットが敷かれていた。集落というよりか都市だろうか。
玉座に座る一際大きなオークがいる。恐らくやつがビルマルキンと言う奴だろう。はっきり分かる。こいつは強い。魔力感知にも気づいていそうだ。そしてその両脇にいる武装したオークもなかなかの強さだ。すると、ビルマルキンは声を上げる。
「お前が半鬼神のルキナか。実に60年ぶりに半鬼神を聞いたのでな、どんなやつか連れてきてもらったのだ。」
やはり半鬼神という種族が存在する以上、過去にも居たらしい。きっともっと強いのだろうか。
「俺はルキナだ。最初は小鬼として生まれ落ちたがここまで進化した。」
「ほぅ。小鬼から半鬼神まで…長かったのでは無いのか?」
「いや、どうやら俺は天才らしいからな。そこまで期間は掛かっていない。」
「そうか、お前が、いや、ルキナがそう言った以上、我の種族も言うとするか。我は豚鬼将軍のビルマルキン。我のそばに控えるこやつら2体は豚鬼騎士だ。ランクという格付けもあまり好きでは無いが、こやつらがAで我はSだ。半鬼神もまたSだろう。」
「やはり、A+以上はあると踏んでいたがSか。」
「お前はなぜここに来た。強さの為か?」
「生き残る為だ。ダンジョンの中は弱肉強食だ。強ければ生き残る。弱ければ食われる。それだけだろう。」
ふむ、とうなずくビルマルキン。どうやら話の通じる奴かもしれない。今まで鬼族を殺す事は1度もしていないが、こいつは強い。もしこいつを従える事ができれば己の実力上昇にも繋がるだろう。
「ではそうだな。お前の強さが見たい。ちょうど裏に集落内で大罪を犯した同族が居てな、そいつを殺せ。」
「わかった。引き受けよう。」
「侮ることは許さんぞ、たとえ大罪を犯したとはいえ、我の配下だ。それなりに強いからな。」
そうして玉座の間の裏にあるところに拘束されてる一体の豚鬼騎士がいる。ランクはまさかのAだ。確かに試すにはちょうどいいのかもしれない。
「おい、リザン。お前の処刑人が決まった。こいつだ。」
「誰だお前は…そんな小娘に俺を殺せると思っているのか。」
「それはやってみたらいいだろう。」
軽い挑発に乗ったのか拘束を解かれたリザンは金属の剣と盾を生成する。
どうやら、豚鬼騎士の持つ武器は魔力による生成らしい。魔力による生成で金属も出来るのか。それは試す価値がありそうだが今はいい。
リザンは盾を構えながら突進してくる。剣を横に構え、横薙ぎを仕掛けてくるのだろうか。まずは何も力を込めず素手で殴るか。
「おう?速すぎだろ。」
バキーン…
ルキナの殴り一発で盾が粉砕した。盾をつき抜けて、リザンの左肩を弾き飛ばす。
「次で仕留める…。【電速】。」
「な、ま、待て…。」
リザンの命乞いも虚しく、ルキナはかなりの速さでリザンの頭を飛び蹴りで吹き飛ばす。頭の無くなったリザンの胴体は力が抜けたかのようにばたりと倒れる。そして肝心のリザンの頭は壁にぶつかり原型を留めないほどぐちゃぐちゃにつぶれた。
「そこまでだ。」
そう、ビルマルキンが告げる。
「【暴食】。」
リザンの死体はルキナが手の中に吸い込んだのだ。
『ルキナのレベルが34から36に上がりました。』
『ルキナは【魔力生成】を獲得しました。』
その様子を見ていたビルマルキンは少し威圧の籠った声で、
「今何をしたのだ。」
ルキナは淡々と答える。
「死体を【暴食】で吸収して力を蓄えた。そして【強欲】を使って、【暴食】では奪えなかった技能を奪った。死体からなら奪い取っても影響は無いだろうと思っている。生きているものから奪うのはよろしくないだろうからな。」
すると、ビルマルキンから殺意の籠った目を向けられる。何かやらかしたのだろうか。自分は己のルーティンをやっているだけだが何か地雷でも踏んだのだろうか。
「ルキナ。お前、【暴食】【強欲】と言ったな。それかどんな技能か分かっているのか?」
「知らないな。どちらも【吸収】【強奪】からそれぞれ進化しただけだ。それの何が問題なんだ。」
「分かってないようだから教えてやる。【暴食】【強欲】【憤怒】【色欲】【嫉妬】【怠惰】【傲慢】。これら7つを『禁忌技能』と呼ぶ。それを持った魔物はそれぞれの罪に合わせた進化を遂げるのだ。たとえその気がなくともな。そしてこれらは災いを齎すことが多い。我はそれを止めるために成長しているのだ。【暴食】ならば【吸収】、【強欲】ならば【強奪】、【憤怒】ならば【怒】、【色欲】ならば【欲情】、【傲慢】ならば【欺瞞】、【怠惰】ならば【堕落】、【嫉妬】ならば【怨恨】という前提技能を持つものを大罪として処刑している。先程のリザンも【欲情】を持っていた。我々は災いの可能性を潰しているのだ。それなのにお前は【暴食】と【強欲】を持っている。これは災いだ。最初は悪くない、生き残ることにこだわるだけの半鬼神かと思ったが、もう終わりだ。全軍、ルキナを殺せ。」