7話 進化とその先へ
ルキナは大広間を出た。道中、木人形が居たが、既にレベルが最大になっていたため、【隠蔽】を使いながら、上へと戻る階段を探していた。
「どこだったかな。上へと戻る階段は。」
ペタペタと歩くルキナ。
「ここか?」
と思い登ると上の階層には戻れたものの巣とは少し離れていた。なので【魔力感知】を使い、ジグー達のいる巣の凡その方向を探ることにした。
「うーん、こっち方面に進めばいいのか。よし、黒色は無いな。バレてないのかな。バレても敵対してないだけかな。」
一抹の不安を抱えつつもその方向へとくねくね進んでいくと、巣を見つける事ができた。
「戻ったぞ、ジグー。」
そう呼びかけると、奥から杖をついたシャーマンが現れた。
「おー、戻ったかの、どうじゃ、試し打ちは出来たかの。」
「巨大木人形も椅子に座ってた木人形も倒したぞ。それでどうやら進化が出来るらしくてな。進化するために戻ってきた。進化してから戻ってきても、もし姿や気配が変わっていれば警戒されるからな。」
「その気遣い感謝するぞ、ルキナ。進化するならあの部屋を使うといい。簡素だが考え込むにはうってつけだ。」
「ありがたく使わせてもらう。」
ルキナは案内された部屋に着く。中に入ると椅子と机が1つ、それと水がたんまり置いてあった。
入る前、ジグーから言われていた事があった。
「中に水があると思うが体の汚れを落とすのに使うといいぞ、戦いの後はよく使っておるからの。使った水は横の溝にでも捨ててくれると助かるのぅ。」
まずは汚れを落とす事にした。綺麗な水だが体を拭くのに使うと結構汚れていた。返り血などの汚れや木くずなどが付いていたようだ。それをきれいさっぱり落とし髪の毛も水で綺麗にする。髪の毛に着いていた木くずなどを取り除くとかなりスッキリした。
「さて、進化先について考えるか。」
『鬼人・闇雷』ランクA+
闇と雷の力をより高めた鬼人。それぞれ力を使う際、己自身へのバフがかかる。鬼人としての身体能力は持つも、それ以外をすべて捨て去るというデメリットがある。
『鬼人・隠遁』ランク:A+
隠密の力をより高めた鬼人。暗殺能力に長けているものの、魔法の幅が制限される。派手な技が使えなくなるデメリットがある。
『鬼人・虚無』ランク:A+
虚無魔法に高い適正を持つ鬼人。身体強化などの効果が上がるなど肉体性能で動く者にとってはメリット。虚無属性以外の魔法が使えなくなるデメリットがある。
『半鬼神』ランク:S
魔法、そして身体能力に高い適正を持つ鬼人。能力を並行して使う事が得意な者の進化先。性能で言うならかなり上位。そして鬼に連なる者を従えることができる。
今回はこの四種類か。
1つずつ見ていくが闇雷は魔法特化といえる。身体能力をそのまま使えるのは良い。だけど魔法は補助で本来は格闘だからな。これは却下だな。
2つ目の隠遁は暗殺向きか。そもそも移動の時しか隠蔽を使っていないからな。そんな趣味でもないからこれは却下だな。
3つ目の虚無は身体能力特化か。確かに力強い攻撃と言うのは魅力があるが、せっかく適正のあった闇と雷が使えなくなるのは痛い。
4つ目の半鬼神はまさに俺が求めてるものだ。ランクも1つ違うし、恐らくこの4種の中でも1番強いだろう。『半』がつくってことは『鬼神』にも進化出来るかもしれない。
「決めたぞ。半鬼神に進化するぞ。」
すると、ルキナを中心に繭が形成される。
そこから半刻後、繭が取れ、ルキナが外に出てくる。赤い角は先程より少し伸び8cmほどか。
体格に大きな変化はない。すると技能の成長通知が届く。
『ルキナは半鬼神に進化しました。』
『ルキナは【鬼体強化】を【鬼神強化】に成長しました。』
『ルキナは【隠蔽】を【隠遁】に成長しました。』
『ルキナは【拳術】を【拳神】に成長しました。』
『ルキナは【蹴術】を【蹴神】に成長しました。』
『ルキナは【強奪】を【強欲】に成長しました。』
『ルキナは【硬化】を【硬質化】に成長しました。』
『ルキナは【覇気】を【神気】に成長しました。』
『ルキナは【吸収】を【暴食】に成長しました。』
『ルキナは【鬼化】を【鬼神化】に成長しました。』
『ルキナは【言語理解】の理解範囲を拡張しました。』
『ルキナは【自己再生】を獲得しました。』
『ルキナは【状態異常耐性】を獲得しました。』
『ルキナはSランクに到達しました。Cランク以下の魔物を倒しても経験値は手に入りません。ご注意ください。』
名前:ルキナ
種族:半鬼神
ランク:S
レベル:1
技能:【拳神】【蹴神】【暴食】【威圧】【電速】【隠遁】【鬼神強化】【硬質化】【念話】【神気】【魔法の才】【腐敗無効】【憤怒】【鬼神化】【言語理解】【斬刃化】【強欲】【魔力操作】【魔力感知】【魔力障壁】【闇魔法】【雷魔法】【虚無魔法】【加速】【自己再生】【状態異常耐性】
これはかなり成長しているな。特に自己再生を覚えたのはでかい。今はまだ魔法の方が回復するだろうがいずれ再生スキルが成長したらもっと戦闘が楽になるだろう。それに状態異常耐性も有難い。きっと今後状態異常にしてくる魔物もいるかもしれない。
そうしてルキナは部屋から出てジグーとジルドの元に戻る。
「ジグー、ジルド。終わったぞ。」
「お?前とかなり気配が違うな。強くなったのが一目瞭然だ。」
「ルキナや、進化したのは良いが、今のままこの階層に居続けても成長には限度がある。もっと下層に潜った方が良さそうじゃの。」
「え、つまり俺はここの巣を出るのか?」
「そうじゃな。そもそもお主がここに来たのも我々と助けて貰ったお礼に鍛えたからじゃ。その役目は果たされたようじゃしの。ここを出てもええじゃろうて。」
「そ、そうか。じゃあジグー、ジルド、それにほかのみんなも達者で。」
そう言ってルキナはジグー達に手を振ると巣の中の小鬼達やジグーやジルドが笑顔で見送ってくれた。
「成長したらまたここに戻ってきてもいいかもな。」
ルキナは己の成長のため、どんどん下層に降りる事になるのだった。