40話 せんそうまえのかいぎ〜
一時的に休校となったことで自由時間ができた。
中部地方にある、リサの家は無事だった。他の4人の家も関東にはなかった事で被害を受けることは無かった。
どうやら【妖煉団】という組織が表立って動き始めたことで、SSランク探索者達が忙しくしている。
それだけではなく、世界各国から高ランク探索者が入国しており、関東地域に徐々に集結しつつある。
アメリカ、中国、イギリス、ロシアなどだけでなく、チェコ、ニュージーランド、アルゼンチンなどからも探索者がやってきた。以前、話していた【純潔】の2つ名を持つ聖騎士も居るようだ。
恐らく、妖煉団という組織は世界的に被害を出しているのだろう。その幹部が現れた事で各国にやる気が表れているのだ。
ニュースの報道陣が映したのは各国の探索者だけでは無い。
エルフが沢山いるようだ。映像に映っているだけでも100は優に超える。
これ以上、動くのは不味そうだ。
レベルの上昇についてだが、984レベルで止まった。今から【強欲】と【暴食】を使うので、またレベルの通知ラッシュが始まる。結構頭痛がしたが、成長のための試練として受け入れる事にした。
次に考えるべきことは遠隔の攻撃手段だ。
魔法は基本的に自分の近くから放たれる。【深淵】や【混沌】もまた、ある程度範囲があり、超遠距離は使えない。
なので遠隔攻撃手段の確保が【怠惰】獲得に向けて最優先で行うべきことだ。
とは言うが、そんな技能があればいいが、思いつかない。
最初は傀儡を使って魔物を倒す事なのだが、【生命操作】を使う際、操る側が経験値を獲得できるかどうかが分からないのだ。
そして、ニュース速報が出たのだ。
『探索者の行動制限令の発令だ。Aランク以上の探索者のみ行動可能。』
要するに雑魚は引っ込んでろ。だそうだ。
まぁ、この状況ならば仕方の無いことだ。無駄に被害を出すのは国としても良くないのだろう。
すると、リサが話しかけてきた。
「当分探索者活動できないね〜。」
「そうだな…。学校も休校になったし、何をすればいいんだ?」
「ん?でもその間に課題出てるじゃん。」
「それならもう終わったぞ。」
「はやっ!いつやったの!?」
「夜中とかだな。(レベルアップの通知音がうるさくて寝れなかっただけなんだが…。)」
「ちゃんと寝ないとダメだよ!」
「分かってる。」
「これは、分かってない顔だねぇ…。」
「それで、何をしようか…。」
「じゃあさ!ゲームしようよ!スマホゲーム!対戦でも協力でもいいよ!」
「じゃあ協力で。」
(今はレベルアップだけ気にしてたらいいか。)
ルキナはリサとスマホゲームをすることになった。
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関東地域だった場所のとある廃墟ビルに集められた探索者達とエルフ達。
序列1位から6位が揃い踏み。
序列1位 【覇王】イラ・ダナウ
序列2位 【絶命】スーヤ・フェブラ
序列3位 【空撃】大川哲郎
序列4位 【純潔】アレックス・ドリートン
序列5位 【天剣】チェン・コールゥ
序列6位 【魔女】飛鳥憐黎
イラが発言する。
「敵はカオスグラウンダーだけか?」
妖煉団は外国からは【カオスグラウンダー】と呼ばれている。
「恐らく、というのが今の見解ね。ただ、幹部が4人現れたのは事実だわ。」
「それは腕が鳴るアルネ。」
イラの質問に対し、飛鳥が答え、チェンが興奮している。
すると、普段からあまり喋ることのないアレックスが喋った。
「ときに、メトーデは来ないのか?」
メトーデとは序列7位 【軍師】メトーデ・ポラニオ。アレックスと同じくアメリカ出身である。
「メトーデは能力的に後方に居る方が安心できるわ。今も遠隔で話を聞いているから気にしなくていいわ。」
「そうか、分かった。」
「それじゃあ俺が今回の敵について大まかな特徴を説明するっすよ。」
哲郎が説明し始める。
「あ、スーヤは寝ちゃダメっすからね。」
「え、なんで。」
「勝手に突撃されるの困るっすから。今回はエルフ達とも協力関係にあるんで連携を密にしたいんすよ。」
「そ、そんな…。」
イラがスーヤを宥めるように言う。
「この戦いが終わったらアイスパラダイスツアーに連れて行ってやる。」
「よし!起きる!」
「そんじゃ、説明始めるっすよ。」
「まず、【紫紺のクヴァレ】っすね。こいつは毒霧を操るっす。この霧はやつ自身が身に纏う事で肉弾戦も可能になる厄介な能力っす。霧を払うことは基本的に不可能に近いっすね。でも霧の中まで攻撃を貫通させることが出来れば倒せる手立てはあるっす。」
「次に、【緑水のウォータ】っす。こいつは水魔法と風魔法、土魔法の3属性を操る魔術師っす。ただの魔術師と侮ったらダメっすよ。こいつには魔法の攻撃は全て遮断されるっす。魔法以外で攻撃しようとすると、途端に身体強化系の魔法で応戦してくるっす。それだけではなく【遅延魔術】も使えるっす。速度のある攻撃も遅くされる可能性があるから不意打ちなどを狙う方がいいっすね。さすがに対策はしてあるんだろうなと思うっすけど。」
「次に【安穏のデスメト】っす。こいつは半透明のイマジナリーハンドを駆使して戦ってくるっす。そのイマジナリーハンドは攻防一体だけではなく、幻術関連も全て遮断されるっす。それにあらゆる武器種を操ると言われてるんすよ。代わりに魔法関連は使えないと言われてるっす。」
「最後に【終蛇のコヨック】っす。こいつは蛇を操るっす。【ヨルムンガンド】も操る非常に危険な存在っす。そして操る蛇の総数に応じて身体能力が向上するとこまでは判明してるっすけど、それ以上はまだ分からないっすね。」
説明を終えて、一息つく。
すると、チェンが質問する。
「あれ?黒い女の説明、忘れてるアルヨ。」
「それに関しては全く分からないっす。そもそもやつが妖煉団の仲間なのかすら分かってないのが現状っすね。」
「その女の存在にも警戒したらいいって事アルネ。」
話を続けていると、エルフの族長がやってくる。
「会議中すまんの。挨拶が遅れてしもうた。」
「いや、構わないぞ。」とイラが。
「わしはシャラク・アールヴハイムじゃ。此度のカオスグラウンダーの掃滅への協力感謝する。」
「こちらこそだ。カオスグラウンダーは各地で被害を出している野蛮な奴らだ。十二人居る幹部のうち、四人だけというのは些か悩みの種ではあるが支援、そして遊撃に優れたエルフが居れば奴らも恐れ戦くだろう。それにエルフの英雄、シャラク殿とゼパル殿が居れば確実に勝てるだろう。」
「じゃが、奴らは十二人の幹部と一人の統率者とその配下で構成されておるのじゃ。統率者が現れないとも限らん。確実に勝てる。これは願いだけにしておくとするかの。この希望さえ捨てなければ勝機も見えてこよう。」
「そうよね、じゃあ上位陣は2人1組で行動した方がいいわね。」
そして、会議の後、イラが仕切る事になった。
「今こそカオスグラウンダーを滅ぼすぞ!」
その場に集まった者たちの大きな掛け声が響き渡る。
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関東地域のとある地下道にて
「クォータ様、各部隊、配置を完了しました。」
「うむ、我ら幹部は関東地域を4つに分割して攻める。【北部は我】【西部はデスメト】【東部はコヨック】【南部はクヴァレ】に分かれている。他の幹部達は戦況を見て来る手筈となっている。お前たち【カゲロウ】は敵の中心に潜り込み、内部分裂を引き起こすのだ。1番危険な任務ではあるが、成功した暁にはお前達の昇進を■■■様に上申してみよう。」
「は!ありがとうございます!」
【カゲロウ】と呼ばれた者たちは去っていく。
「我らの時代の復活だ。何者かは知らぬが、良く関東地域に風穴を開けてくれた。日本は我々が支配しよう。」




