39話 厄災を起こしてみた
家に帰ってきて夜中1時頃、ルキナは無事に6つ目の大罪技能である【色欲】を獲得したことで、残り1つの【怠惰】について調べることになった。
「とは言うものの、獲得条件すら分からないのが難点だな。」
だらけていればいいのだろうか。よく分からないな。
そうそう、この前、戸塚明を誘惑した煙だが、あれは【罪禍之息】の応用だ。あれを無害なものに変えれるんだ。
そして今は自分の部屋で動画を見ている。ダンジョンの魔物の解説動画や立ち回りの解説動画などだ。
その中でも特に重点的に見ているのは、仲間と実力が掛け離れている時の連携方法の動画についてだ。リサ達とは圧倒的に実力が離れているのもあってか、連携を取り慣れておらず苦労する事があった。
(わざわざ協会を介してダンジョンに行かないといけないのがめんどくさいな。そもそも空間を裂いてダンジョンに入れるんだから関係ないだろうに、協会の手続きは面倒だ。それに学校に通い始めてから平日の午前中はダンジョンに潜れなくなった。これからは育成状況も気にする必要があるな。)
手っ取り早く経験値を獲得する方法…。
既に【人族の殺戮者】を持っているわけだから問題ないだろう。今はリサも母も父も寝た。そして人々の大半は家にいる。なるべくリサ達の家から離れて行いたいところだが…。
とりあえず人が集中してそうな所を調べるところからだな。決行は2日後だ。
【終焉魔法】を試す時だ。1番低い火力の魔法でも都市が崩壊するらしいからな。放つ場所は考えねば余波でリサ達の家が飛ばされかねないな。
ルキナは人が集まってそうなイベントが2日後に無いか調べる事にした。
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この2日間、明と帰る日々が何日か続く。自分としては恋愛というものを学べる良い機会だ。それに既に交尾を済ませているのだから気負う必要は無い。
最近、セシリアがリサ達とチームを組んでいるらしい。俺がいない時のカバー要因としているようだ。ランクもCと俺より1つ上なようで、ダンジョンに関してもかなり知識を有しているようだ。
セシリア含めた5人でCランクダンジョンに潜った際にセシリアの動きを見たところ、弓使いでありながら魔法も詠唱し、罠の感知もできるときた。
確かに今のチームには罠感知の役割を担う人が居なかったので大いに助かっている。
自分も魔物を倒すが、人間を殺すのとは違い、雑魚の魔物を倒しても経験値がほとんど手に入らないので、困っている。
未だにレベルは27だ。
そして、今日の夜は決行日だ。使う場所は東京だ。夜中なのに人が大勢おり、首都な事もあり、強い探索者も多い。ということはだ。経験値イベントである。
今は姿を完全に変えている。
【深淵操作】を使い、体全体を覆い、【罪禍之息】を使い、モヤを生成する。瞳の色が目立つので黒色に変え、髪の色も黒色に変えた。
東京の上空に着く。
さぁ、経験値イベントの始まりだ。
「【終焉魔法】暗黒球爆」
夜12時頃、空に黒い大きな球が生成される。スマートフォンの普及により空を見上げた者が、物珍しさにスマートフォンをかざす。
その黒い球は地上に落ちてくる。
その異常さに気づいた東京に住まう者たちはパニックに陥る。異常に気づいた探索者の中でも上位の者はその黒い球を止めようと試みる。
「待つんじゃ!皆の者!できるだけ多くの人民を都外へ飛ばすんじゃ!」
なんと、そこで声を出したのは序列8位の大道寺靖隆だ。
【転移】、【転送】の技能を持つ者はできる限りの人間を都外へと移動させる。
しかし、無慈悲にも【深淵球爆】は探索者達の行動を待ってくれなかった。
その時、東京はとてつもない音により、静まり返る。その後、東京のスクランブル交差点を中心に大規模の爆発が起きる。その規模は凄まじく、東京、埼玉、神奈川の1都2県が巻き込まれる。
爆風によりさらに広範囲にわたりガラスが割れる。ビルが倒壊するなどの被害が出る。関東全域に被害が及ぶ。
そこかしこで火災が発生し、生きている者が瓦礫に埋もれている人を助けようともがく。夜中な事もあり全容の把握が難しく、困難を極めた。
そして、国会議事堂に集う政治家も巻き込まれた。強固に張っていたはずの結界も無惨に破壊され、その日集まっていた政治家の9割が死亡。
最後まで人民の避難誘導を続けていた大道寺靖隆の行方が分からなくなった。
朝になり、報道ヘリが続々と集まる。テレビで続々と報道され海外のテレビ局もまた反応した。各地に散っていた他のSSランク探索者達もまた東京の救援に到着している。
その被害人数、述べ2000万人以上。
日本国における20%ほどの人民が死亡した。
そして1人の市民の投稿により犯人と思われる者が知れ渡る。
協会本部が粉々になった事で大阪本部へと集まったSSランク探索者の面々。
「今回の被害、戦後最大の被害ですね…。」
「御老公の行方が分からないっすね。恐らくはもう…。」
「敵は絞れそうなのかしら。」
「恐らくですが死に際で撮ったであろうとある写真が投稿されていましたね。」
海斗がその写真を集まった者たちに見せる。
「黒いモヤに黒い装備をつけた黒髪黒目の女。」
「黒髪黒目…。範囲が広すぎるっすよ…。」
「正直私もそんな存在が居るとは信じられないわ。だけど、その後にアイツらが現れたのは確かよね…。」
「えぇ、妖煉団の奴らが空間から現れてきた。構成員は少なくとも2000人は超えるぞ。」
「その黒髪黒目の女は今は居ないんすよね…。」
「えぇ、だけれど、妖煉団の中でも幹部が出てきているのは間違いないわ。私ですら見知った奴らがいるのは確かよ。海外への協力要請も済ませてあるわ。序列1位、2位、4位にも協力を取り付けたから、人手は足りると思うわ。」
「警戒すべきは黒髪黒目の女を第一に、【紫紺のクヴァレ】【緑水のウォータ】【安穏のデスメト】【終蛇のコヨック】の4人があの場に現れたのは確かだ。」
「へぇ〜、それって妖煉団十二幹部のうちの四人じゃないすか。」
「恐らく今後もどんどん追加されるかもしれないわ。今度こそ妖煉団を滅ぼしましょう。」
そこに集まっていた20人ほどは全会一致で了承する。
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レベルアップが鳴り止まない。夜中から朝になってもずっとだ。もう既にレベルが500を超えた。
知らぬ間に【怠惰】の解放条件が1つ達成されていた。
『睡眠、または昏睡している間、レベルが上がり続ける。を達成しました。残り2つの条件を表示します。』
『遠隔の攻撃手段を確保し、1万人殺害する。』
『ダンジョンを5つ踏破する。(現在2つ達成済み)』
今なお通知音が鳴り響く中、ステータスの確認をする。
名前:ルキナ(セレスティア・レブナント)
種族:罪禍の鬼神
ランク:SSS
レベル:524(進行形で上昇中)
技能:【神気】【加速】【変速】【睡眠学習】【熱無効】【透過】【滅撃】【霊之力】
固有技能:【鬼之力】【深淵操作】【混沌操作】【罪禍之息】【魔眼之力】【鬼神生命】【終焉魔法】
特殊技能:【反射】【無尽蔵】【確率操作】【粒子操作】【不死】【不老】【生命創造】【生命操作】
禁忌技能:【暴食】【憤怒】【強欲】【傲慢】【嫉妬】【色欲】
称号:終末者、六罪神覚者、武と魔の達人、深淵奏者、影の帝王、踏破者、生命殺し、不死体、罪禍之�力、神話創始者、生命創造者、遊人、従鬼者
現時点でこれか。主に称号が増えたり変わったりしてるな。技能もそうだが。まず、【確率調整】が【確率操作】に、【ウイルス操作】が【粒子操作】に変わっているな。【光沢】と【法術省略】が無くなったみたいだ。もちろんだが【色欲】が増えているな。【不老】が追加されたことで色々動きやすくなったか?もし時間の操作で肉体を老化させられることがあっても【不老】が機能するなら問題ないだろう。
称号も著しい変化があったな。終焉を告げる者、禁忌の使い手、深淵を蠢く者、侵略者、簒奪者、鏖殺者、慈愛の鬼神、魔の天敵、大地の破壊神、人族の殺戮者、英雄殺し、不死鳥殺し、霊体殺し、貴種殺しが無くなったな。
その代わりに、
【終末者】
【深淵奏者】
【神話創始者】
【生命創造者】
【遊人】
【従鬼者】
【六罪神覚者】
が増えた。
これらを見ていこう。
【終末者】
生命、魂、不死者、霊体、音声、文字、記録を無へと帰す者。
【深淵奏者】
深淵と混沌を操る者。操作性能が格段に向上する。
【神話創始者】
歴史的な記録を作り、既存の文明には不可能とされる事象を引き起こし、逸話が作られた者。
【生命創造者】
生命を作り出すことができ、記憶の植え付け、改変、削除などをこなす、まさにSSSランクに相応しい性能。
【遊人】
他者の精神、肉体を弄び、多大なる被害を出す者。道化として演じることも可能。
【従鬼者】
鬼以外の全ての種族を従える事ができる。配下に加える事とは別個である。
【六罪神覚者】
大罪技能を6種獲得し、操る者。
『レベルが700を超えました。進化先を固定しますか?』
ん?なんか違う通知が来たな。
進化先の固定?【怠惰】をまだ獲得していないからNOだ。
『進化先の固定が却下されました。』
まだレベルが上がるな…。どんどん強くなっていく感じがする。2000万人という人数の多さ、人間という経験値の塊、これらの影響で大小様々な経験値が入ってくる。
日本という国の機能が一部喪失した事で、首都が東京から大阪に移された。生き残った議員は、日本国の経済の立て直しと復興を目的とした政治へと移行していく。これまで裏金や汚職などを起こしていた大半の議員の死亡により、真っ当な議員が残っている。この事態を機に、残っていた汚職議員を一掃。ダンジョンに寛容な議員が集められた。消費税の減税が先ず執り行われた。それから食事の配給も行われた。家を失った者に地方の住宅への移動をしてもらう。その際のお金の工面を国主導で行う事に。
そして、とある種族が日本国へとやってきた。
現総理、奈多森総理の元にやってきたのは、エルフだ。
「此度の厄災で発生した被害地の復興の手伝い、並びに厄災の元凶の掃滅への協力をすることを誓う。」
「エルフの族長殿、誠に感謝を。」
ここにエルフと日本国との同盟が完全締結される事になる。




