3話 ルキナ、シャーマンから魔法を教わる
ルキナが鬼人になってからというもの、敵を倒すためにダンジョンの下にどんどん潜っていく。コボルトと呼ばれる魔物やトレント、ウルフなど徐々に種類が増えていく。トレントの放つ木の魔法をウルフがパルクールのように移動しながら爪で攻撃を仕掛けてくるなど敵が共闘してくることが増えてきたのだ。
「【電速】。」
移動して蹴る。移動して殴る。移動して斬る。吸収して移動する。それの繰り返しであった。
するとトレントやウルフ達が現れてから久しく見なかったゴブリンやその上位種であるゴブリンシャーマンや自分が拒んだゴブリンエージェントが居た。どうやら自分の生まれた集落より大きいところのようだ。
「そこの鬼さんや、非常に助かった。ウルフやトレントの数の多さのせいで食糧の確保ができなかったのだ。良ければウルフを少々くれないか。」
シャーマンがゴブリンにしては丁寧な言葉遣いで話しかけてきた。
「構わない。だが俺にも教えて欲しいものがある。等価交換になるだろう。」
シャーマンは快く受け入れてくれた。一呼吸ののち、聞いてきた。
「それで、何を教えて欲しいのだ、鬼さんや。」
「魔法だな。俺は武闘派なもので近距離戦闘は得意だが遠距離にも対応できるようになりたいのだ。【魔法の才】という技能が開花していたのでな。教えてくれないか。」
シャーマンは少し悩んだ後、こう切り出した。
「お主はまず魔力を感知するところから始めねばならん。才はあれども感知した事がないのであろう。」
「魔力の感知?それはどうやればいい。」
「まずは心を落ち着かせよ。それから意識を腹の辺りまで持ってこい。そうすれば体が熱く感じるはずだ。」
「心を…落ち着かせるのか。」
ルキナは心を落ち着かせるため、先程まで考えていた事を全て忘れる事にした。
それから意識を腹の辺りまで持っていく事なのだが、なかなか上手くいかない。
『ルキナは【瞑想】を獲得しました。』
スキルを獲得した途端、意識を腹の辺りまで持っていくことがとても容易になった。
「お、なんか腹のあたりが少し熱いな。これが俺の魔力ということか?」
「そうじゃな。魔力を感知したらその次はそれを継続させよ。一瞬だけ魔力を感知したとてなんの意味も無い。継続して感知する事で大元を追いかけるということも出来るぞ。」
「口調がコロコロ変わるシャーマンだな。まぁいい。継続…。分からんが薄く広げれば何かあるだろう。広げ続ければ継続とも言えるかもな。」
そうしてルキナは腹のあたりに感じた己の魔力を外へと広げるようにした。分厚く広げようとすると何かつっかえる感じがした。
「分厚すぎじゃ。もう少し薄く広げてみぃ。」
「薄く…こうか?」
先程よりかなり薄くなったがより確実に周辺へと魔力を広げることに成功した。
「お主分からんと言いながらも物覚えがいいな。」
「それは嬉しいものだ。」
「じゃがここからが本番じゃ。魔法を使う前に魔力で魔物を感知してみせよ。先程の魔力を薄く広げる動作を魔物がいる辺りまで広げてみぃ。失敗すればイラついた魔物が襲ってくるでな。相手を怒らせんよう感知してみせぃ。」
「魔物を感知…なるほどこう広げるのか。」
ルキナは薄く広げ続けると、黒い魔力やら白い魔力を感じ取った。
「シャーマン、広げてみたら黒や白の魔力が居たぞ。何だこれは…。」
「魔力感知は相手のおおよその魔力総量、そして色は感情が分かる。黒は敵対、白は温厚、赤は憤怒などじゃ。」
「なるほど、なら黒は魔力感知がバレたという意味か?」
「まぁ普通にそう考えて良いぞ。魔力感知とはバレなければバレないほど上手い。気づかれるようではまだまだじゃ。だが魔力感知を覚えたという事にしておこう。とりあえずこっちに来た魔物を倒しておしまい。」
「分かった。」
ルキナは迫ってきたウルフを蹴り1発で腹に風穴を開けた。
「お主もうひとつ言うことがある。魔力を体に纏ってみよ。簡素だか盾にもなる。そして拳や足に纏って攻撃すればより強い攻撃になるぞ。」
「なるほど…体に纏うというのは先程のように薄く広げれば良いのだな…納得だ。」
「あと最後にお主の適性見るとしようかの。」
「適性とはなんだ?」
「魔法には『火』『水』『土』『雷』『風』『光』『闇』『虚無』の八属性があってのう。今からお主の適性を見るんじゃ。」
「頼んだ。」
シャーマンは水晶を取り出すと、
「ここに手を置いてみぃ。」
ルキナは手を置く。
「魔力を少しここに入れてみな。」
「魔力を入れる…こうか?」
「そうじゃ。そのまま待っとれ。今見るからの。」
すると、シャーマンは感慨深そうな表情を浮かべる。
「お主には闇と雷と虚無の三種に適性があるのぅ」
「なるほど。それは今後、覚えていくのが楽しみだな。」
『ルキナは【魔力操作】【魔力感知】を獲得しました。』
『ルキナは【魔力障壁】を獲得しました。』