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26話 為になる話を聞く

近くにある初心者ダンジョンに来ている。


そこで早速問題が発生した。敵が全く近寄ってこないのだ。正確には、ルキナが3人と一緒に行動しているせいで魔物が離れていく。


「まさか…俺が強い事が仇になるとは…。」


「まぁまぁ…気を落とさずに。対策を考えようよ。罠を張るとかさ。」


「いや、ひとつだけやってみたい事がある。」


「なんかやるのか?」


「まぁ見ててくれ。」


【深淵の鐘】を発動させる。常時発動型ではあるがオンオフの切り替えはできる。今回はオフだったのでオンにした。


すると、ウルフが続々と近寄ってくる。


「なんだなんだ!めっちゃ近寄ってくるぞ!」


「もしかしてセレス自身の気配を薄くしたのかな。」と俊介が。


「レベルの差がでかいから、俺だと掠りで一撃になってしまう。なるべく相手を逃がさないような立ち回りをする。」


「了解!それじゃあ3人で立ち回るよ!」とリサが合図を出す。


ウルフが2体突撃をしてきた。天弥がすかさず盾を構えて防ぐ。盾に激突したウルフは頭をクラクラさせている。混乱状態なようだ。


そこで動いたのはリサだ。持っているレイピアで混乱しているウルフ2体を高速で突く。脳天を突かれた2体はバタリと倒れる。


横から迫ってくる3体に対して天弥が技能スキルを使う。


「ヘイト!」


3体は天弥に目線を変え、迫る。リサがすかさず天弥の防御力を上げる。


「ディフェンスヒート!」


俊介はヘイトを稼いで体力を減らした天弥に回復を施す。


「【水魔法】水治癒アクアヒール!」


しかし、3人もまだ連携が取り慣れていない。3人の後方からウルフが2体近づく。しかしそこはルキナが蹴りをかまし、ウルフ2体を爆散させる。


「あ、加減間違えた…。」


「なんにせよ8体のウルフ討伐完了だね!」とリサが喜ぶ。


「俺盾騎士として動けてたんじゃね?」と天弥も自画自賛する。


「後方の監視を怠ってしまったよ。」と反省する。


そんな3人が後ろを向くと、爆散して血が飛び散ったウルフ2体の死骸がある。わりとグロテスクだ。


「あちゃぁ〜。セレス、元気出して。」


「済まない…。こんなつもりではなかったんだ。何とか原型を留めて倒すつもりだったんだ。」


「レベルの差がやばいとそんな事になるんだな…。」


「セレス、弱体化の腕輪とかを買ったらどう?高ランク探索者が低ランクダンジョンに向かう際によく用いられる魔道具みたいなんだけど、セレスに割と合うんじゃない?10%のステータスダウンの腕輪で2万円で、ステータスを最高値の10%まで落とす腕輪で100万円だってさ。」と俊介が提案する。


「さすがに高いな…。防具なしにするか…?」


「それはダメ!せっかくセレスは綺麗なのに防具なしは良くない!」


「俺ら4人チームの隠し球にして最高戦力だもんなー!セレスは。」


「なら、防具は付けるが…。ガントレットは外しておくぞ。これをつけてるだけで威力がかなり上がってしまうからな。」


「蹴りでやらかしたんだから靴の装備外さないと…。」


(確かにそうだった。忘れていた。)


靴の装備を外そうと前かがみになる。すると、何故かリサが前に立つ。


「なんで前に立ってるんだ?」


「え、見えちゃうから。」


「かがむと何か見えるのか?そっちから。」


正直よくわからん。見えたらまずいものでもあるのだろうか。


天弥と俊介の方に目線を合わせると、2人は慌てて後ろを向いた。男女関係なく見えたらまずいものらしい。


拳と靴の武具を外し終えたセレスは空間に仕舞う。


「ほんと、いつ見ても不思議だよね、その空間。荷物要らずじゃん。」


「確かに楽だな。結構愛用しているぞ。そうそう、リサに俊介、天弥。最近練習してて身に付いたことがあってな。見ててくれ。」


「お?なんかやるのか?」


「この前1人で外出してたけど練習しに行ってたの?」


「そうだ。」


セレスは壁の方に向かう。壁に左足裏を合わせ、そのまま右足を上げる。右足を壁に付けると、次は左足裏を離す。それを繰り返して天井までたどり着いた。


「これだ。」


「「「すご!!」」」


「天井も壁も空中も歩けるようになったぞ。」


「天井とか壁はともかく空中も!?見せて見せて!」


リサがとても大興奮気味だ。


「それってなんかの技能なのか??」と天弥が聞く。


「いや、単なる技術だぞ。」と返答してやると、


「尚更凄かった!」とリサが喜んでいた。


「鬼族ってそんな事もできるのか〜。知らなかったや。」と俊介が感動している。


(実際、鬼族はどの程度できるのか分からんができる者もきっと居るだろう。)


「とりあえず依頼を達成出来たし帰るか。」と提案すると3人とも同意した。


帰り道、特に魔物とは出会うことなく戻ってきた。当然ながら【深淵の鐘】を発動していないからだ。


拳と靴の武具を装着して、協会へと戻ってきた。


受付嬢の所に向かう。


「おや、依頼を終えられましたか?」


「はい!ウルフ討伐依頼終わりました!これが証明の魔石です!」


「はい、ありがとうございます。皆さんも知っていると思いますが、魔物は倒すと魔石が出てきます。強い魔物ほど大きな魔石が出るとされていますが体積が小さいにも関わらず大きな魔石が出た時など、どこに魔石が仕舞われているのかなどは謎に包まれていますけどね。とりあえず、倒した魔物の魔石は回収をきちんとお願いしますね。魔物の中には魔石以外にも素材となるものが多いですから。今回のウルフの毛皮なんかは乾燥させれば服の生地としても使えます。それでは、換金所に行って取った魔石や魔物の毛皮などを渡してください。お金に変えてくれますよ。」



4人は礼を言い、換金所に向かう。そこには何人か並んでおり、ガタイのいいお兄さんや眼鏡をかけた魔法士のような服装をしたお兄さんもいる。みんな各々のランクに合わせた魔石を換金しに来ているようだ。

4人は換金を終え、帰る準備をしている。


すると、前に居た人から話しかけられる。


「お、坊主ら4人、新参か?」


「そうだ。」と天弥が言う。


「正直言うがEランクの探索者が換金で稼げる額なんて1万円あればいい方だからな。」


「教えてくれてありがとな!おっちゃん!」


「俺はまだおっちゃんって歳じゃねぇ。まだ23だ。」


「すまねぇ。」


「それにしても坊主は威勢もあるな。俺は天堂新てんどうあらただ。ランクはBだな。職は武闘家だな。レベルは76だ。」


「かっけぇ!俺は新参のEランクで伊崎天弥だ!盾騎士だぜ!レベルは14だぜ!」


「お!盾騎士か!それならみんなを守ったり敵のヘイトを集めたりするのが基本だが、敵から食らった攻撃を蓄積させて放つシールドショットなんかも覚えて損は無いからな!防具もがっちり重めのやつにしとけよ?その分、ダンジョン探索の移動速度は下がるからそこら辺も計算に入れとけよ?それで、後ろの3人はどんな職なんだ?パッと見、4人でパーティーを組んでるみたいだが。」


「真城梨沙です。職は杖剣士です。レベルは昨日11に上がりました。」


「おぉ、魔法も使う感じのレイピア使いってところか?レイピアの腕にもよるが貫通力とスピードは上げといた方がいいだろうな。あと、レイピア使いが狙われやすいのは横だからな。横に障壁を張るのは忘れんなよ?防具も重めの奴じゃなくて軽めのやつにしろよ?レイピア使いのやばい所は機動力にあるからな。」


「ご指導ありがとうございます!」


「僕は野中俊介です。職は食医師です。レベルは10です。」


「ヒーラー系の職業か。しかも技能を使えば食料も生成できるやつか。素材の事をしっかり理解してないと生成できる食料の幅は広がらないって聞いた事があるからな。完全に後方支援型か、それなら動きやすい防護服と魔力を通しやすい杖なんかを使ったらいいと思うぞ。あとは魔道具をいろいろ使うことが多いのがヒーラー職とトラップ解除職の権利だからな。マジックバッグなんかを買っとくといいぞ。少し割高だが買って損は無いからな。」


「ありがとうございます!失礼ですけどどうしてそんなに詳しいのですか?」


「ん?それは俺がBランクだからってのもあるが、単純にこれまで色んな職業の奴とチーム組んだりしてきたからな。あとは俺の所属してるギルドが色んな職業が多いんだよ。それで連携を取るために仲間の職業の事を理解する必要があんだよ。だからだな。それで最後の外国人か?」


「まぁ、そうだな。」


「おぉ、男勝りみたいな女だな。」


「気にするようなことでは無いだろう。俺はセレスティア・レブナントだ。職業は魔体術士。レベルは221だ。」


「んな!まじかよ…。よりによって俺が唯一教えれねぇ職業か。それにめちゃくちゃレベルが高ぇな…。どこで鍛えてたんだよ…。戦争孤児にしたってそこまで高くねぇぞ。」


「そんなに珍しい職業なのか?」


「そもそも職業が魔体術士を選んでる探索者はこの世で3人しか居ねぇ。日本に1人、スイスに1人、ロシアに1人だな。魔法も体術も両方が高水準でこなせるやつしかなれねぇ職業だからな。一応日本の魔体術士は連絡は取れるが、確実に来れる保証はねぇぞ?なんせSランク探索者だからな。でもまぁ、同じ職業の新参がいるって聞いたら来てくれるかもしれねぇがな。それよりも、なぜそんなにレベルが高ぇんだ?」


「魔物を狩りまくっているからだな。」


「セレスの嬢ちゃん、人間族ではないだろ。」


さすがに気づかれたかと思ったので、


「天堂さん、こっちに来てくれ。」


5人は談話室に入る。周りにあまり聞かれたくない話をする時に使う場所だ。


「それで、人間族では無いのは正直分かるそ。なんせ今教えた魔体術士はレベルが187だからな。人間で200を超えるなんて、序列10位以内の化け物しか居ないからな。」


セレスは3人に確認を取り、了承を得る。そして、帽子を取る。


「ま、マジかよ…。鬼族か。しかも角が黒いな…。相当鍛えてるな。セレスの嬢ちゃんが3人と組んでる理由は何なんだ?友達付き合いか?」


「違うな。戦ってばっかりだった俺に生活や言葉、ファッションなんかを教えてくれた恩人だからだ。そんな恩人には報いたいからな。それだけだ。」


「鬼族は義理堅いとはたまに聞く話だが、まじな話か。」


「黒い角だと鍛えている事になるのか?」


「いや、角が黒い鬼族は初めて見たぞ。以前鬼族が集団で暮らしている集落に行ったことはあるが、あそこの奴らはみんな白い角だ。だから単純に角が黒くて驚いているだけだな。」


「色々教えてくれて感謝する。」


「セレスの嬢ちゃん、どっかのギルドに入る気は無いか?そのレベルなら実力もかなりのもんだろう。今のダンジョンとかなら威力をめちゃくちゃセーブしながら戦ってるんじゃないか?上のダンジョンなら手加減無しで動き回れるぞ。」


しかし、セレスは首を横に振った。


「済まない。その話は悪いが断らせてもらう。4人で探索するのが楽しいんだ。今はギルドの話は無しでお願いする。」



「意志は固そうだな…。おーけ!んじゃ未来の新人!活躍を待ってるぞ!」


4人は天堂さんに手を振ってそれぞれ家に帰った。







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