14話 どんどん危ない方向に進んでない?
さらに潜っていく。もう45階層辺りだろうか。
黒い靄を見つけたので、近付く。すると、その靄がひとの形をとる。そしてルキナの姿となった。
「え、俺の姿と全く同じだ…。もしかして…こいつが?」
ルキナの思考は正しかった。こいつがドッペルゲンガーだ。ドッペルゲンガーはルキナ本体を見つけると、高速で殴りかかる。
「はやっ!」
ルキナは咄嗟に構える。ドッペルゲンガーのパンチはルキナの腕へと叩き込まれた。おそらく魔力を体全体に流し込んでる状態なのだろう。
「そんな状態まで同じかよ。」
ルキナは痺れる腕を【自己再生】に任せ、後ろに下がって【加速】をつけ、前へと飛び上がり、その勢いのままドッペルゲンガーのルキナに向かってかかと落としを決める。
決めたと思ったら、足をドッペルゲンガーに掴まれ、蹴る勢いのまま壁へと投げつけられる。
「強っ…己を越えないとダメってことか…。今の俺の実力と同じって事はそれを闘いの中で超えないとダメなのか…相手は篭手をつけてない。もしも俺が篭手をつけたら相手も篭手をつけた状態になるかもしれないからな。」
今まで殴ってきたからわかる。もし当たりどころが悪ければそのまま体を貫通してしまうだろう。己の肉体の強固さに期待しつつも、何とか相手のパンチをいなす。とてつもない速さから繰り出されるパンチを見て、自分はこんな速さのパンチを相手にやっていたのかと自覚する。
すると、ドッペルゲンガーは地面の中に消える。
(これは【影移動】か!なら俺も!)
ルキナもまた【影移動】を使い、影の中に潜る。
影の中、それは漆黒の闇に包まれた空間。出入口は影があるところのみであり、空気なんて全くない。もちろん【空間操作】も併用すれば空気を確保することだって出来る。前回リザードマンにトドメを刺していった時は【空間操作】は使わなかったけども。
影の中で殴り合う。
このドッペルゲンガーはと言うと影の中での戦闘に慣れていないのか、動きが少し鈍い。その分こちらの攻撃が当てやすくなる。だが、流石は私の体と言ったところか。硬い。いくら攻撃をしてもなかなか傷がつかない。
なので少し考える事にした。
殴ってから蹴る。そして相手から離れた所を闇槍で攻撃する。さすがにこれは通ったようだ。傷がついている。だが【自己再生】のせいか、傷が塞がりつつある。
(相手の魔力の底が尽きるまでやるしかないのか?それ以外になにか方法は無いのか?)
ルキナは【斬撃】の構えを取り、腕を振る。すると、空気の刃が現れ、ドッペルゲンガーに向かって飛んでいく。魔力による攻撃では無いので【魔力感知】に引っかかる事は無い。
案の定、ドッペルゲンガーの土手っ腹に1発大きな傷ができる。さすがにヤバいと感じたのか、ドッペルゲンガーは動きを止め、回復に専念しようと逃げ回る。
「逃がさない。【空間操作】」
ドッペルゲンガーを【空間操作】で作った密閉空間に閉じ込める。そしてその空間を徐々に小さくしていく。そして空間の中に影が現れることを恐れ、【雷魔法】雷纏を空間のありとあらゆる場所に張り巡らせる。その雷が放つ光は空間内部にのみ広がっていき光が壁を乱反射し、空間が全て光に包まれる。
「終わりだ。くたばれよ、この紛いもんが。」
空間を完全に閉じ、小さくなった結果、小さな弾サイズになるまでになったので、それを掴み、飲み込んだ。
さすが、半鬼神の胃袋、飲み込んだ途端に胃の中に溶けていった。
「ビルマルキン以来の苦戦した戦いだったな…。」
そうして、ルキナはドッペルゲンガーに勝利したのだった。
『ルキナはドッペルゲンガーを倒しました。』
『ルキナのレベルが171から174に上がりました。』
『ルキナは進化条件その3をクリアしました。進化先を表示します。レベル150からの余剰レベル24は進化後に持ち越しが可能です。』
「これは進化するしかないな。だが今ここで進化してもいいのだろうか。」
(進化している途中を狙われるのは避けたい。あとは進化したてホヤホヤの時も気をつけたい。ここはやはりあそこに戻ろう。いや、そんなすぐに戻ってもいいのだろうか。あのリザードマンが居た階層ならば進化する場所に最適かもしれないな。)
ルキナは30階層へと戻る。
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リザードマンの住処だった場所に戻ってきた。以前はリザードマン達で賑わっていたであろう住処も今はただの廃村同然だ。近くに魔物の気配は一切感じない。あるのは量が多くて持っていけなかった食糧や誰かが使っていたであろう新品の武器などがあるだけだ。でも今なら空間操作を用いて全部回収することができた。これで魔物を倒しながら果物などを食べることが出来る。
「進化先を表示してくれ。大方4種類くらいはあるんだろう?」
『殺戮の鬼神』ランクS+
殺戮に特化した鬼神。相手を殺せば殺すほど己の物理攻撃、魔法攻撃が上昇し続ける。一対多に対して有効。
『深淵の鬼神』ランクS+
隠密、暗殺に置いて同ランク帯で右に出る者は居ないとされる鬼神。隠密状態の際、魔力、匂い、音の全てを遮断し、周りと同化させる事が出来る。一対一に対して有効。
『武極の鬼神』ランクS+
己の肉体による攻撃、防御、回避、援護の全てを最大限強化した鬼神。魔法を使う事が出来なくなるという大きなデメリットを有するが、たった一つのパンチで山を砕くほどの威力を持つようになる。
『軍勢の鬼神』ランクS+
半鬼神以下の全ての鬼に連なる者を従える事が出来る鬼神。従った者は裏切りと判断されるまで攻撃力、防御力、精神力、魔法力の全てを底上げする。また、従えた数が増えれば増えるほど己の戦闘力が上昇する。上昇の幅に制限は無い。
『魔法帝の鬼神』ランクS+
魔法1つで山を破壊するほど魔法に特化した鬼神。肉体能力は上昇するものの、同ランク帯の中では見劣りするが、魔法を使用した際の火力が大幅に上昇し、燃費がほぼ0になる。
『終末の鬼神』ランクSS
鬼に生まれた者は鬼に終わる。人に生まれた者は人に終わる。死に生まれた者は死に終わる。生に生まれた者は生に終わる。始点に始まり終点に終わる。全てを終わらせる鬼神である。
【 ※進化先は固定されます。】




