エピソード:1,死と自称神に、転生を?
(…ここは?)
ーーあ、目を覚ましたんだね☆
(…誰の声…)
ーーボクは神様だよ!すっごく申し訳ないんだけど間違えて君のこと殺しちゃった☆
(…死んだんだ、俺。つかカミサマとやらは人を殺しても反応は軽いんだな。)
皮肉を込めた声であざ笑うように言う。
ーーあたりまえだよ☆!!――所詮ヒトはヒト。だもん、ね?
顔こそ笑っているが目は完全にプッツンしてるそれだ。
(…―――...。悪かったって。)
ーーまぁいいさ☆これからのキミを創るのはボクでありキミだ。
ーーキミは...どうしたい?
(…ここがどこでお前が誰で、これから俺がどうなるのかすら俺自身は理解していない。詳細な説明をしてからどうするかを決めるよ。)
ーーふーん。賢いじゃん☆
考えを見透かし、神は思う。
この人間の今後は今決した、と。
[カミサマセツメイチュウ]
(…なるほど。実体を持たない概念的空間ともいえるこの空間に、確かに存在はするが何かに干渉することができず一定条件下でのみ干渉が許されるお前のようなカミサマが複数いると。)
(…さらにその制約ともとれる条件はお前らが担当する死者の魂を管理する管理者というポジションだけであって、お前らとは違うポジションのカミサマはまた異なる制約の元に仕事してるわけか...)
――無茶苦茶簡単に言えばそういうことだよ☆
――そしてここへ連れてこられた人間、まぁ死者の魂だけど、それは基本的にキミたちの言ういわゆる冥界や天国といった精神世界に送ることになるんだけど...
心底困ったような顔をするカミサマ。
だが笑みを含みいう。
――困ったことにキミは神様の存在を全く信じていないようだ。
そこに笑みがこぼれる。
――だから面白いんだ☆キミという存在は☆
ここへ来る死者の魂のほとんどが生きていたころに神様の存在を信じていなかった者だ。
だが実際にその魂自身が神の存在を感じれば必然的にあの神様も存在するかもという自己暗示にかかる。
――ボクらの仕事は自己暗示にかかった人たちが最も信じる神様のところに送ってあげる。つまるところHUBの役割ってことだよ☆
(…あぁ。だからそんな困った顔してんのか。どこにも送り返せないから。)
気分が下がる。
過去のトラウマがフラッシュバックして、お前はいつまで経ってもお荷物だと、無能だと、邪魔であると。
そう言われているような気になってしまう。
ーーなんだよ☆そんなに暗い顔しないでおくれよ☆僕はキミがとても面白いって言ったんだよ☆
理解能力は高いはずなのに、自身の事となると理解することを放棄する。この子は……きっとボクと同じ………………
(…で、結局俺はどうなれる?確かに俺は神という存在を信じていない。聴覚、視覚、感覚。それらでお前、神という存在と相対しているこの瞬間でさえ信じることは無い。)
…どこにも送られなければどうなる?仮に行き場がなくなればこいつと同じ状態のまま時間の感覚も消え去るほど長い期間を…………こいつと………
ははは…御免だよ…
ーーそんな状態のキミに選択肢を与えようじゃないか☆
ようやく本題に入ることを喜び神は提案する。
ーーボクとここで永遠に、終わりという概念さえないここで、生活とも言えないような生活をする。これが1つ目だよ☆
(……………………却下だ。)
ーーえぇー☆残念☆ボクと一緒に狂ってもらおうかと思ったんだけどなぁ☆☆☆
先程も見た、"マジ"の目だ。
ーーまぁいいけど。2つ目は、精神支配的にキミの元いた世界の神様たちを信仰させるっていう手段。これはあんまりおすすめしないかな、精神支配で人格が壊れたまま送ることになるから向こうの輪廻とかで面倒事になる可能性が充分有り得る。
(…当然それも却下だ。)
ーーだーよねー☆
イタズラする子供のような顔で、そんなことを提案するのはもはや狂気だろう。
その提案に乗る者はいたのだろうか……
(……というか、おすすめ出来ない事を提案するんじゃなねぇよ………)
呆れ顔で言うが、冗談と理解しているから言える愚痴だろう。
ーーいやぁ☆合理主義者なキミならワンチャン?
(…合理主義を履き違えんなー………)
ーーでで、最後の提案だけど…
これこそおすすめ出来ないような提案なのだろう。
あからさまにこれはしたくないという顔をしている。
しかし神を信じない死者の魂を面白いと言ったのはここにある事もまた真実。
ーーキミ…別の世界……行かない…………?