⭕ 旬な体験談 1
──*──*──*── 1週間後
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「 おーおーお~~~、粘ってるねぇ。
掲載出来そうな面白いネタは集まってるかい? 」
児野豈德
「 セガ先輩!
まぁ、ボチボチですかね…。
セガ先輩がこんな時間に出社するなんて珍しいですね 」
セガ先輩
「 あぁ?
俺が正午前に出社するのがそんなに珍しいかよ? 」
児野豈德
「 すみません!
何時も15時過ぎに出社されてるので……。
今日は、どうされたんですか? 」
セガ先輩
「 いやね、後輩が新企画のネタ集めに奮闘してるって聞いてだよ、俺もネタ提供に貢献してやろうかと思ってな 」
児野豈德
「 セガ先輩がですか?
有り難う御座います! 」
セガ先輩
「 あ~~~それでだが……アリコちゃんは居ないのか? 」
児野豈德
「 アリコちゃんですか?
こんな朝っぱらから来ませんよ。
来るのは大体、11時前ですね 」
セガ先輩
「 マジかよ!
しくったぁ~~~!
早く来過ぎちまった訳かよ… 」
児野豈德
「 あの……ネタ提供は…… 」
セガ先輩
「 んぁ?
あぁ~~そうだな。
折角来たからな、確りネタ提供してやるから感謝しろぉ! 」
児野豈德
「 有り難う御座います! 」
僕はネタ提供をする為に態々早く出社してくれたセガ先輩の為に、抹茶ラテを淹れた。
市販で売られているスティック状のインスタント商品だ。
お湯を注いだら直ぐ美味しい抹茶ラテが出来る即席物だよ。
児野豈德
「 セガ先輩、どうぞ。
熱いんで火傷しないように気を付けてくださいよ 」
セガ先輩
「 おぉ、サンキューな。
お前、気が利くなぁ。
こういう時は無難な珈琲をチョイスされるもんだが、抹茶ラテを選ぶとか中々見込みがある。
出世したいなら女子力を身に付けると有利になるぞ~~ 」
児野豈德
「 そうなんですか?
女子力……難しそうですね 」
セガ先輩
「 出世したいなら手段を選んでる暇ないぞ。
何でも身に付けてモノにするんだ。
それが出来る奴が上がっていけるのさ 」
児野豈德
「 有り難う御座います!
参考にさせていただきます!
あっ、お菓子も食べますか? 」
セガ先輩
「 お前、用意が良いな。
サンキュ~~♥️ 」
セガ先輩は嬉しそうに僕が出したお菓子を受け取ってくれた。
引き出しの中に菓子類を常備しといて良かった。
因みにセガ先輩が、どうして “ セガ先輩 ” と呼ばれているのかと言うと、スティ●ブン・セガ●ルが好きだかららしい。
良作,駄作,珍作を引っ括めて好きなんだとか。
今日、セガ先輩が着ているTシャツの後ろにプリントされているニヒルなスティ●ブン・セガ●ルの写真もセガ先輩の自作らしい。
自作Tシャツは40枚以上あるんだとか。
セガ先輩
「 ラジオに関する内容だったよな。
俺の弟の友人が体験した話なんだが構わないよな? 」
児野豈德
「 はい。
大丈夫です 」
セガ先輩
「 弟の友人──そうだなぁ、イニシャルがLだから “ Lヤス ” にすっかな。
Lヤスはな、ラジオ放送を聴くのが趣味らしくてだな、毎週必ず聴いてるラジオ放送があるんだと。
番組名は知らねぇけど、番組中で人気があったのは出されたお題に対してリスナーのハガキを読み上げるコーナーだったらしい 」
児野豈德
「 何処でもされてる定番のコーナーですね 」
セガ先輩
「 そうだな。
Lヤスは聴き専だからハガキを出した事はないらしいぜ。
事が起こったのは、8月中の放送だったらしい。
夏だからだろうな、7月 ~ 8月末まで心霊特番コーナーだったんだと。
リスナーから届いた不思議体験や恐怖体験が書かれたハガキを読み上げらる中で、問題の体験談が読み上げられたんだ 」
児野豈德
「 問題の体験談ですか? 」
セガ先輩
「 あぁ。
まぁ、問題になったのは放送後らしいけどな。
──で、心霊特番コーナーで読み上げられたハガキの内容なんだが、【 1人かくれんぼ体験談 】だったらしいぜ 」
児野豈德
「 1人かくれんぼ体験談??
1人かくれんぼ……それって少し前に流行った事がありましたね 」
セガ先輩
「 そうだな。
色々と準備とか仕込みが面倒だから実際にする変わり者は居なかったんじゃないか? 」
児野豈德
「 仕込みって…… 」
セガ先輩
「 信憑性を出す為には必要だろが。
鬼気迫る臨場感とか、雰囲気作りに手抜きは御法度だ。
手間を惜しまず──まぁ、そんな事は別に良いな。
【 1人かくれんぼ体験談 】を聴き終わった翌週、ラジオ番組中にリスナーから苦情があった話題で盛り上がったらしい 」
児野豈德
「 リスナーからの苦情ですか? 」
セガ先輩
「 あぁ。
何でも【 1人かくれんぼ体験談 】を聴いていたリスナー達から、体験談を聴いてる最中に部屋の電球がパカパカしっぱなしだった──って報告が1週間の間に寄せられていたらしいぜ。
Lヤスの部屋の電球もパカパカしてたらしいが『 替え時なんだろう 』と特に気にしてなかったんだとよ 」
児野豈德
「 偶然じゃないんですか? 」
セガ先輩
「 そう思うだろ?
どうやらそうでもなかったみたいだぜ。
弟の話ではだ、当日や前日,1週間以内に電球を替えたばかりのリスナーが何十人も居たらしい。
『 替えたばかりの電球がパカパカするなんて可怪しいだろう! 』って事で【 1人かくれんぼ体験談 】をチョイスして読んだラジオ曲に苦情が殺到したんだと 」
児野豈德
「 電球がパカパカしただけならラジオ曲に苦情を入れるのは、やり過ぎな気がするんですけど…… 」
セガ先輩
「 あぁ~~~、それがそうでもないらしくてだな、大体は電球がパカパカしただけで済んだんだんだが……、中には電球が割れて怪我をしたリスナーも居たらしいぜ。
入院する程の大怪我をしたリスナーは居なかったみたいだが、電球が割れるなんて、よっぽどだろう?
事故になってたら訴えられてたかも知れねぇからな、苦情だけで済んだならマシなんじゃねぇかな? 」
児野豈德
「 確かにそうですね…。
ラジオ番組の心霊特番コーナーで【 1人かくれんぼ体験談 】を聴いている最中にリスナー達の部屋で異変が起きていた事件か。
ゾッとしますね。
それで、心霊特番コーナーは今も健在なんですか? 」
セガ先輩
「 いや、殺到した苦情が多過ぎて心霊特番コーナーは無くなったみたいだぜ。
ラジオ番組も9月末で打ち切られて、別のラジオ番組が始まってるんだとよ 」
児野豈德
「 そうなんですね……。
実際に起きた話ってリアリティーありますね。
やっぱり実話は強いです 」
セガ先輩
「 そうだろ?
採用決定だな! 」
児野豈德
「 はい!
是非、採用させて頂きます! 」
セガ先輩
「 ネタ提供は、もう1つあるんだが聞くか? 」
児野豈德
「 はい!
是非、聞かせてください! 」
セガ先輩
「 いよぉ~~~し、心して聞けよ! 」
児野豈德
「 はい!
お願いします、セガ先輩! 」
僕はセガ先輩に温かいカフェラテを淹れた。
お菓子も付けるのを忘れない。