⭕ 投稿メール 2
杜代加有明古
「 えぇと…………読むね。
──初めまして。
初めて投稿させていただきます。
これから書くのは( 打ち込むんだけど… )、僕が祖父から聞いた話です。
僕の祖父は何故かラジオを収集するのが趣味だったみたいです。
骨董店へ行っては変わったラジオを買って来てコレクションしていたみたいです。
本当に骨董店にラジオをが置かれていて、売られているのかは骨董品や骨董店に興味の無い僕には分かりません。
祖父の話では骨董店でラジオを買っていたらしいので、取り敢えず信じる事にして、投稿したいと思います。
祖父のラジオコレクションの中には変な──、珍妙なラジオがあったらしくて、それが祖父の御気に入りだったようです。
写真でもあればアップしたかったんですけど、生憎と珍妙なラジオの写真が無いので諦めてください。
僕が祖父から聞いたのは珍妙なラジオの話ではなくて──、祖父が押し入れの奥で見付けた隠されていた怪しいラジオの話です。
そのラジオは布でグルグル巻きにされていて、段ボールの中に入れられていたそうです。
僕は実物を見た事は無いんですけど、祖父がラジオを見付けた時も同じ状態で押し入れの奥に入れられていたそうです。
祖父は『 父親が隠していたラジオなのかも知れない 』と言っていました。
孫の僕にはラジオが曾祖父の持ち物だったのか分かりませんけど…。
──祖父は家に誰も居ない時、暇過ぎて押し入れの中を漁ってる時に段ボールを見付けたそうです。
段ボールを開けると布が巻かれていて、その布を捲って見るとラジオが出て来たそうです。
ラジオは壊れている訳ではなく、ちゃんと使えるラジオだったらしく、どうして使えるラジオなのに布でくるまれていたのか祖父は不思議に思ったそうです。
電源を入れてから、ラジオに付いているつまみを回して選局を変えていると電波を受信したらしく、声が聴こえて来たそうです。
ラジオから聴こえて来た問題の声なんですけど……、これって書いても( 打っても )大丈夫なんでしょうかね??
R18な内容になっちゃいますけどOKですか??
………………どういう事かしらね??
18禁の内容って事ならアタシが読む訳にはいかないんじゃないかな? 」
児野豈德
「 …………た、確かにな。
アリコちゃんは未だ16歳の未成年だもんな?
…………よし、僕が読むよ 」
投稿メールの印刷用紙をアリコちゃんから受け取った僕は、アリコちゃんの代わりに投稿メールの内容を読み上げる事にした。
内容が18禁ならアリコちゃんに読み聞かせるのもアウトだと思うけど……。
杜代加有明古
「 何て書いてあるの? 」
児野豈德
「 えぇと…………、ラジオから聴こえて来た声は──、どうやら際どい喘ぎ声と荒い息遣いや厭らしい吐息,卑猥な音だったそうです。
まぁ、言うなれば──男女のムニャムニャの最中みたいなのが聴こえて来たもんですから、当時の祖父はとても興奮したそうです。
押し入れの中に居る事も忘れて祖父はラジオから聴こえて来る卑猥な行為の一部始終を食い入るように聴いていたそうです。
──両親が朝方まで帰って来る事がなかった事もあり、ずっと押し入れの中でラジオの声を聴いていたそうですが、ラジオの声に夢中だった祖父は両親が帰宅した事にも気付けなかったそうで……、押し入れを開けられた祖父は両親に見付かりこっぴどく怒られ、父親からは殴られた程だったそうです。
ラジオは両親に没収され、布でグルグル巻きにされた後、段ボールに入れられて物置小屋の中へ入れられてしまったそうです。
男女の卑猥な行為を聴ける不思議で面白いラジオの存在を好奇心旺盛( 思春期ですかね? )な学生の祖父が諦める訳もなく、両親が居ない時を見計らい物置小屋からラジオだけを抜き取って拝借したそうです。
それからはラジオを自室に隠して、両親が居ない日は夜な夜なラジオを聴いていたそうです。
ラジオから聴こえて来るのは男女のムニャムニャだけではなく、選局を変えれば男同士のムニャムニャや女同士のムニャムニャも聴けたそうです。
不思議なラジオですよね?
そんなラジオが実際にあったんなら僕も聴いてみたかったです。
祖父に『 僕も聴いてみたい! そのラジオは何処にあるの? 』って聞いた事があるんですけど、どうやら空襲があった時に家が燃えてしまってラジオの行方が分からなくなってしてしまったそうです。
祖父はあの卑猥なラジオを探す為にラジオ収集を始めたそうです。
珍しいラジオや年代物の貴重なラジオとは出会えたらしいんですけど、祖父が1番見付けたい卑猥な行為が聴けちゃうラジオとの再会は果たせなかったみたいです。
空襲が起きた時に行方知らずになったなら、“ 壊れちゃった ” とか “ 他人に盗まれた ” とかそんな所だと思うんですけど、卑猥なラジオに御執心だった祖父はそうは思いたくなかったのかも知れません。
きっと何処かに有って、また会えると信じていたかったのかも知れませんね。
因みに祖父が生前に集めたラジオコレクションは【 ラジオ博物館 】にて展示されています。
【 ラジオ博物館 】の一角には祖父が諦められなかった “ 卑猥なラジオ ” を展示する場所が設けられています。
もしも、卑猥なラジオを所持している方や発見された方が居たら【 ラジオ博物館 】に寄贈してもらえると、亡くなった祖父も浮かばれると思います。
卑猥なラジオが存在している事を心から願っています。
──以上で僕の祖父と不思議なラジオの話は終わりです 」
杜代加有明古
「 ふ~ん…………期待してた割りに、18禁な内容じゃなかったね? 」
児野豈德
「 …………まぁ、これならセーフかな?
ちゃっかり番宣まで入れて来てるし、面白いから採用しようか 」
杜代加有明古
「 卑猥な行為が聴けちゃうラジオ……ねぇ?
そんなラジオが実際にあったらなら話題になってるんじゃないの? 」
児野豈德
「 昔はラジオでも際どいAV放送が聴けた時期もあるそうだし、大して珍しくはないのかも知れないね 」
杜代加有明古
「 へぇ?
ラジオでAV放送が聴けたの? 」
児野豈德
「 らしいよ。
だけどそれは昭和後期の事だから、投稿者の祖父さんが学生だった時代では有り得ない事だよね…。
空襲を体験してるなら昭和前期の体験だと思うし…… 」
杜代加有明古
「 嘘か真かなんて誰も気にしないよ。
不思議な体験や奇妙な体験を知りたいだけなんだから。
抑、オカルトに信憑性を求めるなんてどうかしてるし、ロマンを壊す行為じゃない? 」
児野豈德
「 まぁね。
確かにオカルトは “ ロマンを感じてナンボ ” の娯楽エンタメだもんな。
否定するのは野暮ってもんか 」
杜代加有明古
「 そうそう。
オカルト業界が盛り上がれば、沢山の視聴者に不思議とロマンを提供出来るじゃない?
現代人の干からびた心を潤せるのは、愉快で面白い娯楽エンタメじゃないかしらね? 」
児野豈德
「 オカルトは愉快で面白いものばかりでもないけどな~~ 」
杜代加有明古
「 他には採用候補の投稿メールはある? 」
児野豈德
「 う~~ん……これとかどうかな? 」
杜代加有明古
「 何れ? 」
僕は3枚目に選んだ投稿メールの印刷用紙をアリコちゃんに手渡す。
児野豈德
「 ラジオで放送されていたホラー特集をカセットテープに録音したのを後から聴いた時の話みたいだね 」
杜代加有明古
「 ふぅん?
定番っぽいね。
録音していたカセットテープに “ 変な声が入っていた ” とかそんな内容かな? 」
児野豈德
「 どうかな?
変わった内容の話も良いけど、定番の内容も入れときたいかな 」
杜代加有明古
「 これは18禁じゃなさそうだから、アタシが読むね 」
◎ ラジオでAV放送が聴けるのかは知りません。
創作なので、本気にしないでください。
◎ 訂正しました。
杜代加有明子 ─→ 杜代加有明古