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誤字報告いつもありがとうございます。

 SIDE:元宮廷魔術師団長ガラハド


 異世界人であるヒビキ殿との話を終え、自分達が拠点としている街の野営場へと戻ってきた。

 なぜ野営場を使っているのか? それは部下達とその家族に宿を取らせるためと、作戦会議などの際に近くに人がいるのはまずいからだ。まぁ聞かれて困る事は無いが、だからといって何でもオープンにするのとは別問題だからな。


「しかしヒビキ殿の配下に… か。あのエルフ、どこまで考えてあのような事を言ってきたのか…」


 白銀のような銀髪で、小柄であり美しい顔立ちをしているのに鋭い目つきのエルフだった。奴隷の首輪をしているところを見ると間違いなくヒビキ殿の奴隷のようだが、どうも見ていると将軍と参謀のような関係になっているとしか思えてならない。

 まぁヒビキ殿はこの世界に来てまだ数ヶ月、土地が違うだけで常識が違うというのに、世界まで変われば相当違っていると思われるから参謀が必要というのは頷ける。しかしどこであれほどの奴隷を買ったんだ? 以前王が人間種以外の奴隷を集めているという噂を聞いた事があるが、まさかそれが関係しているのか?


「いや、そこは詮索しても仕方のない事か。それよりもたった数ヶ月でレベル80を越えるという方法の事だ! もしそんな事が可能であれば、我ら魔術師団は今後ゴーマンレッド王国から何かしらの工作があったとしても跳ね返せるようになるという事だ」


 まぁ… あの王の事だから、我らが出奔したという事実に気づいていない可能性もあるがな。


 それはともかく、今後の舵取りを考える方が先決だな。

 うちの若い魔術師ならばこの話はすぐに食いつくだろう。経験が浅いため、こちらのメリットだけを大きく見て、デメリットを軽く見てしまう猪突猛進タイプの者が一定数いる…

 確かに得られるメリットは大きいし、ヒビキ殿を見る限り、俺の目には悪人には到底見えない。だが参謀を務めるあのエルフなら? 人間種に奴隷に墜とされた恨みをヒビキ殿を介して晴らそうとしているのではないか?


「まぁ一目しか見ていないのに全ての判断ができるわけもないか」


 とにかく皆を集めて会議をしなければいけないな、ヒビキ殿は明日からダンジョンに入るらしいからしばらくは連絡が取れなくなるだろう… その間にこちらも意見をまとめておかなければな。

 まぁ彼らも戻って来れば、誰か師団員に対してコンタクトを取ってくるだろうからな。









 SIDE:ヒビキ・アカツキ


 予定していたダンジョンアタックも後1日を残すのみとなった。つまり、明日には地上に戻ってミスリルの大剣を受け取りに行くって事だね!

 いやぁ俺が使う訳じゃないけど、ミスリルの放つ美しい輝きを纏った刀身… 早く見てみたいもんだな。

 まぁグレイが言うには、大剣に求められるのはとにかく強度だという事で、純ミスリル製では作られないだろうとの事。何かしらの金属と混ぜ合わせての合金になるという事だが、配合次第ではさらに美しく見える場合があるという。この辺は俺には理解できない範囲だね、まず鍛冶なんて見たこともないくらいだし。


 一応戻ってからの予定だが… 大剣を受け取った時に追加でアイシャ用のメイン武器と、クローディア用の護身用武器を注文するつもりだ。これは今後の事を考えた上での装備強化、俺達にとっての必要経費という事になる。

 本当は防具についても検討したいんだけど、クローディアとアイシャは重量のある防具はいらないと言われ、グレイには現在使っている腕当て等の防具で足りているとの事… まぁ早い話が断られたという事だ。

 かくいう俺も… ちょっとミスリル製の防具は目立つ事になりそうで使うのはなぁ。


「主よ、今日はなんだかミスリルのドロップ率が良いのぅ! これだけ出てくると気分が良いの」

「そうだな。まぁ戻ってからまた使う予定もあるし、空気読んでくれたんじゃないか?」

「そんな事は無いじゃろうがな。しかし主よ、本気か?」

「何がだ?」

「金棒の事じゃ。ミスリル製の鈍器など聞いた事も無いのじゃが」


 はっはっは! まぁこの話をした時もクローディアは『何言ってんの?』みたいな顔をしていたからな。だけど良いじゃないか! 頑丈なうえに魔力を通す事ができるなんて、きっと新しい攻撃方法が生まれる! …かもしれないぞ?


「本気も本気、打撃を与えつつも魔力を乗せて攻撃! なんて出来ればグレイの戦い方も幅が広がると思うし、物理アタッカーの欠点を補えるかもしれないじゃないか。物は試しというには高級素材だけど、都合よく手に入れられる場所に居るんだから試してみようぜ」

「はぁ… まぁ主がそういうのじゃったら」


 ため息をつきながらも俺の言葉に納得した体を見せるクローディア。長生きしているけど男のロマンに関してはまだまだ理解の外のようだな!



 そして翌日早朝、俺達はダンジョンアタックを予定通りに終了させて、地上へと戻った。











 SIDE:タケノ・コノサト


「どうした! 30階層は目の前なんだぞ!」

「すいません隊長、魔物達の猛攻がなかなか止められません!」

「たかがこの程度のモンスターハウスくらいどうにかしろ!」


 などと隊員たちに発破をかけながら考える。

 俺達は勇者様に選ばれた戦闘のエリートなんだぞ? しかも魔物に特化すべく鍛え上げられた戦士なのだ! しかしなんだ? 29階層にあるモンスターハウスでこれほど苦戦を強いられるとは!


 29階層モンスターハウス… ギルドで手に入れた地図でも回避推奨と書かれており、溢れんばかりのゴブリン、オークなどの魔物が詰まっている部屋だ。

 地図に書かれていた内容を見て、ゴブリンやオーク程度であればどれだけ数がいようと問題は無いと思ったのだが… まさかただの物量作戦がこれほど面倒な事になるとは。


 考えてみれば… 魔境の外周にいる魔物達はあまり群れる事はなく、自分達よりも強い魔物であっても囲みこんで攻撃すれば倒せていた。つまり集団で1体の魔物に対する戦いが多かったのだ。

 だがそれでも逆パターンの訓練だってやって来てるんだ、1人で多数の魔物に囲まれた時の対抗策としてな! しかも目の前にいるのは今まで弱いとされていた魔物しかいない…


「ダメです隊長! 前衛が崩されそうです!」

「中衛がしっかり支援をしろ! もうすぐ範囲魔法の準備が整うからそれまで耐えるのだ!」


 どうしてこうなった… 俺達は80階層でミスリルゴーレムを狩るために来たんだぞ? それがまだ29階層でこれほど苦戦を強いられるなんて…

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