09 ハンバーガーの効果を体験中
誤字報告ありがとうございます。
「この中には冷たいお茶が入っていて、温くならないように氷も入っているんだ。カップのように飲もうとしたら氷が邪魔になるからね、だからこのストローで吸うんだよ」
「「「…………」」」
「ああ、そういえば追加したい契約あったわ。俺の事… 俺の能力の事を俺の許可なく誰にも話さないって事を追加したい」
「それは… 知られたらまずい事という事か?」
大柄な角の男性が声を出す、しかしなんていうか… 大柄で骨太なんだけど肉が全てそぎ落とされたかのような容姿は痛々しくて見てられないな。この体格ならハンバーガーもたくさん食べそうだし、偏食になってしまうが食べ続けていればそのうち筋肉とかも戻ると思う。
「そうだね、知られたくないと思っているよ。ちなみにこの飲み物、飲んだら胃腸の調整とか内側から体の悪い部分を治療してくれる効果があるんだよ。まずは飲んでみて」
ずずいとウーロン茶のカップを3人の前に押し出す。狐っ子は恐る恐るという感じでストローを咥え、吸いだそうと頑張り出した。他の2名は… うん、普通に飲んでいるようだ。
「む? これは確かに慢性的にあった腹痛が急に無くなったのじゃ!」
「うむ、しかもこのお茶… 冷たくてうまいな」
「………」
角の男性とエルフらしき女性からは、ウーロン茶は好評のようだった。しかし狐っ子… 渋い顔をしているな、この子にはジュースの方が良かったか? まぁ飲み終えたら甘いのもあると勧めてみよう。
ウーロン茶を飲んだ事で胃腸が整えられたと思うから、いよいよ本命のハンバーガーセットを出しますか。とても満足な食事が与えられていたように見えないので、通常ハンバーガーとチーズバーガーの2セット出しても軽く食べてくれるだろう。
「よし、じゃあこれを食べてくれ。パンに肉やチーズが挟まっている物なんだが食べれない事は無いよな?」
「問題無い…」
ポテトもオニオンフライもまとめて2セット出し、3人の前に置く。
「こうして紙の包みを開けて… ガブっとやってくれ。足りないならどんどん出すから言ってくれよ、でも食べすぎて動けないってなるまではダメだからな」
俺の言葉に頷きながら、ガサガサと包みを開けていく。そして3人がそれぞれ見合わせながら、ガブリと嚙みついた。
「ん!」
エルフらしき女性が一言声を出したが、その後は黙々と食べ続けている… 旨いか? そうだろうそうだろう、途中の街の外にいた人達も黙って食い散らかしていたからな! 俺にとっては一番安いメニューのハンバーガーなんだが、この世界ではフワフワなパンがまず珍しいとの事だ。奴隷生活なんてやってたら食べる事は無かっただろう。
「ご主人、本当に好きなだけ食べても良いのか?」
「ああ、腹が減っていたら満足に働けないだろう? 腹が満たされるまで食ってくれ」
「そうか… では同じのを2つずつもらえるか?」
「あいよ!」
あれから大体1時間くらいが過ぎた。
好きなだけ食べても良いというのは本当に嬉しかったようで、大柄な男性がなんと8セット! 女性2人も3セットを平らげてしまい満足気な顔をしている。
「あっ、すまん大事な事を忘れていた。これを使ってくれ」
いやいや、早く食べさせてやりたいと思ったばっかりにすっかり忘れてたよ… お手拭きの事を。まぁバイ菌とかそういうのはドリンクで何とかなると思うからセーフだとは思うが。
「これにはクリーンの魔法が付与されている。だから手や顔だけじゃなく、服の上からでも全身これでなぞってみてくれ。そうすればスッキリするし臭くもなくなる」
全員がもそもそと体を拭き出し、手の届かない所は手伝いながらも拭いていく。
「おおー、尻尾、モフモフになったじゃん! ふかふかでいいね!」
狐っ子の尻尾、今までついていた汚れなどが綺麗に落ちて黄金色のふわもふになったのだ! クリーンの魔法ってすげぇな! それにエルフっぽい人の髪もグレーだと思っていたら銀色だし、どんだけ汚れてたんだよって感じだ。
「さて、じゃあこの部分を削ればいいんだな?」
「そうじゃ、そこを削れば我らにかかっている戒めは解除される」
よしよし、じゃあ早速削ってやるか。ゴリゴリゴリゴリ。
「そして追加の事だけど、さっきも言ったが俺は字を書く事は出来ない。代わりに書いてくれるか?」
「それは構わないが… 主の事を喋らないという事で良いのか?」
「それで頼む。書くのはこれでいいか?」
書類と一緒に入ってあった羽ペンとインク瓶、まとめて頂いてきてて良かったね! なければまた戻らなきゃいけない所だったよ。そしてエルフっぽい女性に書き足してもらう。
事が済み、彼らにかかっていた制限… というか戒めと言っていたが解放されたかな?
「どう? 体調の方は」
「うむ、もう魔力を吸われている感覚がなくなったのじゃ。しかし何じゃこれは、魔力の回復が速すぎる気がするんじゃが…」
「ああ、さっき食べたオニオンフライ… 輪になった食べ物が魔力回復の付与がついているんだよ。ちなみにポテトの方は体力が回復する… な? 誰にも知られたくないだろ?」
「ほほぅ、食べ物に付与をしてあるのか… 私も長い事魔法学に携わっていたが、聞いた事がないやり方じゃな」
ふむふむ、エルフっぽい人は魔法系なんだね。まぁ小柄だし首輪で魔力を吸われてたってくらいだから、そうなんだろう。
「ごっ、ご主人様… 久しぶりに声が出せました、ありがとうございます!」
「ん? 声を封じられていたのか?」
ここで初めて狐っ子が口を利いた! 久しぶりのお喋りという事で、なんとも弱々しいボリュームだけど元気は出たみたいだな。
「こやつはな、連れてこられた時からずっと泣いておったのじゃ… それを煩わしいと思った前の主によって声を出せなくされていたのじゃ」
「そりゃ酷いな…」
うるさいから強制的に黙らせる… あの王を思い出させるほど傲慢すぎる、ひどい奴もいたもんだ。
そういえばアレだな… 俺も名乗ってないしこの人達の名前も聞いていない。バタバタしてたとはいえこれは良くないよな。
「ああ、今更だけど… 俺はヒビキ・アカツキというんだ、よろしくな」
「む? 姓持ちという事は貴族なのか?」
「いや、俺の故郷ではみんな持っているんだよ」
「そうなのか… 私はクローディア、見ての通りエルフで元は魔導師をしておった。見た目はこうじゃが500年ほど生きている」
ほほぅ、やっぱりエルフだったんだね! しかも500歳? すげぇな…
「俺はグレイ、オーガの戦士だ。俺はまだまだ若造でな、150年程しか生きてはいないが戦う事なら他の種族には負けない。まぁ今の俺は衰えているからそこまで大きなことは言えないが」
オーガ! ゲームやなんかだと魔物とかに分類されてるよね? でもこうして普通に喋れるなら問題は無いのか。
「ボクはアイシャです。狐人族です… あ、12歳です」
なんと狐っ子はボクっ娘!?




