89 クローディアの調査報告
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:クローディア
1人でも大丈夫じゃと言ってみたが、やはりそこは無駄に心配性の主にグレイをつけられた。まぁグレイはそこに立っているだけで威圧的であるからな、安全面というのであればこれ以上ない盾である事は理解しておる。
「さて… せっかく主から資金がもらえたのじゃ、何か見繕うとするかの」
「そうだな、俺は肉がいいぞ」
「そんなもん言われなくとも分かっておるわ!」
全くこやつは… 主から野菜も食えと毎日言われているというのに、まるで食おうとせんから困るのじゃ。まぁハンバーガーに多少なりとも挟まっておるから良しとするかの、趣味趣向は人それぞれであり、種族によってもそれぞれじゃ。エルフの中にも肉が好きな者もおるからの。
屋台にて串肉を数本購入し、それを齧りながらギルド方面へと歩いていく。もうすでに昼を過ぎておるからこの辺にいる冒険者は少ないが… おるおる、なにやら上品なローブを羽織った者までいるではないか。
「しかしあのローブについている紋章は…」
「知っているのか?」
「恐らくじゃがゴーマンレッド王国の紋章があのような模様じゃったと思うのじゃ」
「ほぅ? つまりなんだ? 奴らはご主人を追ってきた連中という事か?」
「そうかもしれぬが、それにしては少しおかしいの」
「ふむ… まぁ確かに誰かを追ってきたと言うにはギラついた雰囲気を出してはいないな、ただダンジョンに来ただけというかそんな感じに見えるな」
「うむ。まぁ何をしに来たのかを調べに来たのじゃ、これから探れば良いだけの事」
「まぁアレだ、話す事はクローディアに任せる。俺だとどうもな… ただ威圧して黙らせるだけだと思うからな」
「分かっておる」
最初からグレイにそういった事は期待しておらん。私だって慣れているから平気なだけで、これがどこぞの街で出会ったとなれば… 話をしようなどとは思わんじゃろうな。
ローブを羽織った集団は、チラチラとこちらの方に視線をくれてきているんじゃが… やはりグレイが恐ろしいのか、話しかけてくる者は誰もおらんようじゃの。まぁこれも分かっていた事じゃ、仕方がないから私の方から話しかけてやるとしようかの。
「偉そうな雰囲気の無い若造にでも声をかけてみるかの」
「なぜだ? 偉そうな奴の方が色々と情報を持っているだろう? そっちの方が良くないか?」
「何を言うか。偉そうな奴がホイホイと情報を漏らすと思っておるのか? それなら得られる情報が少なくともペーペーの若造の方が喋ってくれるやもしれんじゃろう。そもそも私達には奴隷の首輪がついている事を忘れたのか?」
「む… 確かにそうだな。どこぞの奴隷に話しかけられたとしても、役職のある者であれば何もいう事は無いか」
「その通りじゃ。全く… 腕は立つくせにどうしてこんな事も分からんのじゃ、これだからオーガは。グレイはすぐにでも騙されてしまいそうじゃの」
「む? その言い方は癪に障るな、俺は騙されたりはせんぞ」
「いいから黙っておれ、威圧もするではないぞ」
「むぅ…」
さて、誰に話しかけようかの… あまり集団ができていると向こうも気が大きくなるやもしれんからのぅ。
お、ちょうど2人で歩いておる奴がいるのぅ。年のころも主と似たような感じじゃし、かなり若い部類に入るじゃろう。あ奴に決めるとするかの。
「のぅ、そこの若いの… ちょいと聞きたい事があるのじゃが?」
SIDE:ヒビキ
「戻ったのじゃ」
「お、お疲れさん。何かいい話は聞けたかい?」
「まぁそうじゃの、それはこれから説明するつもりじゃが… そろそろ夕飯ではないか?」
「あー… そういえばおやつを食べたから腹が減っていないのか、まぁとりあえず飯にしようか」
迂闊だったぜ… おやつのつもりで食べたのはナゲットとかだもんな、そりゃあ腹に溜まるし腹時計の調子も悪くなるってもんだ。なによりアイシャが言ってこないくらいだからね…
いそいそと夕食の支度を始める。いつものようにハンバーガー全種類とナゲットはグレイ。テリヤキビーフとエッグチーズ、そして枝豆コーンサラダのクローディア。テリヤキビーフとライスバーガー、エッグチーズにナゲットはアイシャだ。もちろんドリンクも各種用意していますよ? そしてデザートは別腹。
「ご飯の匂い…」
お、さすがのアイシャも起きてきたか。寝ていても鼻は効くんだから大したもんだ。
「それで? どんな感じだったの?」
「うむ。他所から流れてきたと言う集団はゴーマンレッド王国の魔術師であったの」
「マジで? 俺を追ってきたとかそんな感じ?」
なんだか久々に聞いたゴーマンレッドの名前… やはりあのろくでもない王なら何かやってくるかもとは思っていたけど、こんなにあっさりと居場所を突き止められたって事か? そうじゃないと大勢で来るわけないもんな。
「いや、違うみたいじゃったぞ。あえて若造を選んで聞いてみたのじゃが、どうも宮廷魔術師団が丸ごと家族を連れて出奔したとか言うておった。それで一部の術師が家族を養うためにダンジョン都市にやってきた… との事じゃ」
「マジで? 宮廷魔術師団っていえば結構なエリート集団でしょう? それが丸ごと出奔って、あの王は何をやったんだ?」
「さぁの。そこまでは突っ込んで聞けなかったのじゃが、純粋にダンジョンアタックをしに来たという事らしいの」
「はぁ… まぁゴーマンレッド王国の宮廷魔術師団と聞いた時にはどうしようかと思ったけど、まぁ嫌われてそうな感じだったもんな。もちろん全部を信じられるかって言われればそうは思わないけど」
「うむ。所詮下っ端の若造の言葉じゃしの、嘘はついておらんと思うのじゃが嘘を教えられている可能性はあるかもしれん… まぁその宮廷魔術師団長とかいう奴もこの街に来ているらしいからの、最悪その者に直接問いただすしかあるまいの」
ふむ… 宮廷魔術師団長か。そういえば俺が召喚された時に魔術師っぽい服装の人が結構いたけど、師団長ってくらいならその時にいたのかもしれないな。
つまり、俺は全然覚えてないけど向こうは俺の事を知っているかもしれないという事だな! これは注意が必要な案件だけど、このままビビって後手に回るのもなんだか癪だな… どうするか。
「大丈夫だご主人、人間の魔術師なんぞ何人束になったところで俺が粉砕してやるぞ」
「粉砕はともかくどうせ明日にはまたダンジョンに入るのじゃ、その間に考えをまとめておけば良いじゃろ」
「それもそうか。とりあえず現在の目標はオルトロスの毛布を受け取る事だからな! これを放置して逃げ出すなんてあり得ないぜ!」




