88 久しぶりなのんびりタイム
誤字報告いつもありがとうございます。
「毛布の作成には5日かかるって言われたけど、その間どうする?」
「俺のせいでミスリルが減ってしまったからな、80階層をやれば良いのではないか? 5日もあれば使った分の半分は取り戻せると思うが」
「まぁそうだな。このダンジョンではもう新規で探索する場所は無いから、転移陣で行き来できる場所で狩れば良いんだもんな」
「そこでじゃ! 主に頼みがある」
「お? なんか嫌な予感?」
「違うぞ。毛布が出来るまでの間は二手に分かれて狩りをしたらどうじゃろう、ミスリル組とケルベロス組で分かれて狩れば、素材と経験と稼げて良いと思うのじゃが」
ふむふむ、まぁケルベロスの毛皮はいくつあっても良いとは思うしな。なんならオルトロスじゃなくてケルベロスの毛皮で毛布を作ったっていいくらいだ。
「そうすると飯はどうするんだ?」
「転移陣で移動をすればすぐじゃろう? 時間を合わせてどちらかに集まれば良いだけの話じゃ。主はミスリルゴーレムに張り付くとして、私達3人の中から交代でミスリルゴーレムを狩るという事でどうじゃろ」
「グレイはともかく、アイシャはミスリルゴーレムをまだ倒せていないだろう。クローディアとグレイで交代するって事?」
「いや、アイシャもそろそろ倒せると思うのじゃ。すでにケルベロスは倒せているわけじゃしの」
「えっ? アイシャってケルベロスを倒したの?」
「倒しておるのじゃ。まぁ主が寝ている間にやっていたからの、知らんのも仕方のない事じゃが」
「ほっほーぅ。そしたらとりあえず試験的にやってみてだな、問題無く倒せるならそうしようか」
「うむっ!」
いやぁ知らんかった… 確かに昨日はすぐに寝てしまったから、その間グレイは狩っているとは思っていたよ。でもアイシャまでやっていたとはね、まぁ数段格上のケルベロスを倒せるならイケるのか? でもあの防御をどうやって抜くんだろうね… それも見れば分かるか。
そんな感じでとりあえず街の外まで出て、ケルベロスの毛皮を地面に敷いて座りこむ。そして無言でモリモリ食べるこの3人… まぁ旨そうに食べているから良しとしよう。
「しかしギルドマスターが言っていた事… どうしようか」
「例の勇者の事か? なに、絡んでくるというのならば俺が相手になってやるぞ」
「ちょっと止めてくれよ? 最低でも相手側から手を出してくるまではな。それ以外にも他所の街から流れてきたと言う集団の話もあっただろう、まぁそっちは気にしなくてもいい感じだと思うけど」
「まぁそうじゃの。どうせ今日は宿に泊まるのじゃろ? そうであれば少し探りを入れておくかの」
「お、そんな事ができるんなら頼むかな。無理はしない程度でね」
「うむ、任せておくのじゃ。聞いた話じゃと魔法使いばかりじゃったという事じゃ、基本的にエルフは魔法の使い方が非常に優れていると言われておるからな、放っておいても向こうから話しかけてくるじゃろう」
「そういうもん? エルフって排他的な種族じゃなかったっけ?」
「む? 確かにそういった者もおるが、特に排他的というわけではないのじゃ」
そうなのか… まぁ排他的とかっていうのは日本で得た知識の話だったな、こっちでもそうだとは限らないよな。というか、俺は妄想でそんな話をしちゃったんだな… 恥ずかしいねこりゃ。
昼食も終え、ついでに1時間ほど日光浴を楽しんでから町へと戻る。
一応クローディアだけだと不安だから、グレイも付ける事にした。クローディアは不満そうな顔をしていたが、奴隷の首輪が付いた貴重なエルフが1人でふらついていたら、良からぬ者に狙われる危険性もあるからね。まぁ危険なのは良からぬ者の方だけど、奴隷の証言と普通の者であれば、どちらが優先されるかって事だよね。
その点グレイにも奴隷の首輪はついてるものの、その体躯を見ていちゃもんつけてくる者はかなり減るだろうという判断だ。まぁこの2人はいつも俺と一緒にいるところを周囲に見られているし、特にギルド関係や冒険者達には以前の決闘のイメージが残っているだろう… まず喧嘩は売ってこないと思う。
「じゃあほどほどで戻って良いからね。一応銀貨と銅貨を渡しておく、使い切って構わないから買い食いでもすると良いよ」
「うむ、せっかくだから色々と食べてみるぞ」
「宿はいつものところじゃな?」
「ああ、そのつもりだ」
「了解したのじゃ」
2人はギルドの方向へと行ってしまった。じゃあ俺とアイシャは宿に行きますかね。
「じゃあ行こうかアイシャ。グレイ達が戻ってきたらどこで買い食いしたか聞いてみて、旨かったっていうなら食べに行こう」
「はいっ! ご主人様の出す食べ物の方が美味しいに決まってますが、他の食べ物にも興味があります!」
買い食いの話をした時に、ちょっと羨ましそうな顔をしていたからな… うちの子達は食べ物には貪欲だから差別化は止めておいた方が良いだろう。うん、絶対。
そして安心安全のいつもの宿、更に言えばいつもの部屋が空いていたのでその部屋を確保する。3人部屋というのは、割と中途半端であまり借り手がいないらしいね。まぁ確かに冒険者パーティとかなら4人以上はいるだろうし、商人とかならもっと多い人数で動くものだからな… まぁ空いているのなら問題は無い。うちは俺とグレイで2人分、アイシャとクローディアで1人分だからちょうどいい広さなんだよね。
ベッドの上にケルベロスの毛皮を敷き、2人でゴロゴロしながらポテトとナゲットでおやつにする。気がつくとアイシャは寝てしまっているが、せめて俺くらいはグレイ達が戻ってくるのを起きて待っていないとな。
うつらうつらしながらも、猛烈に襲い掛かってくる眠気と戦う事数時間? いや、そんなに時間は経っていないな… だが眠気と戦っている時の時間の流れはとても曖昧だ、体感的には数時間だったとだけ言っておこう。
部屋の扉の向こうから、ドスドスと重そうな足音が聞こえてきて意識が浮上! こんなに重そうな足音はグレイで間違いない!
すると間もなく扉が開かれ、グレイとクローディアが入ってきたのだった。
 




