86 帰還と忠告
誤字報告いつもありがとうございます。
夜が明けた… と思う。
相変わらずダンジョン内では昼夜の区別がつかないため、俺も含めて腹の減り具合で大体の時間を感じているのだ。
前にも言ったがメンバーの中で特にアイシャの腹時計は正確で、食事の時間を間違う事はそうそうないから安心だな。
そのアイシャが言ったんだ。
「朝ごはんの時間です!」
「お、そうか。じゃあ朝飯食べたら一度地上だな… ようやく太陽を拝めるよ」
「俺はダンジョン内でも平気なんだが、人間種は大変なんだな」
「何を言うかグレイよ。主の食事とドロップをしまえる収納があるからそう思うのじゃ。普通であれば10日も潜れば嫌になってくるもんじゃぞ」
「ふむ、確かにそれはあるな。食事の心配がないから、ダンジョン内でも普通に暮らせると思っていたぞ」
「アハハ… まぁ確かにこれで干し肉とか非常食ばかりだったら3日も持たないな、俺なら」
本当良いスキルに当たったもんだ。補給のできない遠征となると、普通は水も食料も予定日数分持っていかなければいけないから大変な荷物になってしまう。しかも干し肉などの乾燥食はともかく、水に関しては生ものだし時間が経てば腐ってしまう… ダンジョン内で腹痛に悶えるなんて自殺行為だぜ。
「ところでさ、ダンジョン100階層クリアの報告はいると思う? しかもそこが最奥で、ダンジョンそのものをクリアしちゃったって」
「ふむ… 確かに判断の難しいところじゃが、恐らくあのギルドマスターならば大丈夫であろう」
「その根拠は?」
「あのギルマス… 筋肉の塊に見えてもアキナイブルーの住民じゃ。今までの対応から見るに、ギルドの儲けを最優先している感じじゃの。じゃから私達がリャンシャンギルドの儲けになると思われている限り、浅はかな策を弄してくるとは思えんの」
「なるほど… 信用していいのかどうかわからんけど、金にまつわる事なら大丈夫って事か。確かに俺達は素材に関しては貢献してると思うしな」
「いやいや、貢献どころじゃないのじゃ! ただでさえ手に入り難いミスリルを安定供給しておるんじゃぞ? それだけでギルマスから見れば主は大事な金蔓に見えているはずじゃ!」
「なんだか哀れになってくる人物評価だな、あのギルドマスターは。まぁでも、そういう事なら報告しておくか。そうしておけば毛布作りで余ったオルトロスの毛皮も売りやすくなるしな」
「うむ! では朝食を頼むのじゃ」
みんな黙々とハンバーガーを食べている。
そういえばオルトロスの毛皮は売れるんだろうか… というか、また初見の物だからといって値付けに時間がかかるパターンになるのかな? 他の毛皮の手触りを良く知らないからアレだけど、オルトロスの毛皮の手触りはかなり上質だと俺は思っている。つまり、結構良い値がつくのではないかとも…
まぁ先に自分達の毛布を作ってみて、それでも余ったらの話だけどね。一応1人2枚は欲しいからね。
ごっくん。
ライスバーガーの最後の一口を飲み込み、周囲を見渡す。うん、とっくに食べ終えているようだね。
「よーし! じゃあ戻るとしますか! ダンジョンクリアって事なら凱旋になるかもしれないな」
「凱旋に決まっているだろう。低ランクのダンジョンならいざ知らず、Cランクダンジョンがクリアされたのだ、恐らく初めての快挙だと思うぞ」
「そうかそうか、まぁ皆が強くて助かったよ」
どこかドヤっている雰囲気のグレイとクローディア。アイシャはあまり興味が無いようで、ソフトドリンクのカップに残っている氷をガリガリ噛んでいる… あまりやると頭がキーンとなってしまうぞ?
まぁとにかく凱旋だ! 地上に着いたら服飾系の店に行って毛布の話をし、それから武器屋に行ってミスリル製の大剣の話をしよう。最後にギルドだな! そう考えながら転移陣を踏んだのだった。
「む? なんだか人が多いのじゃ、これはどういう事かのぅ」
「おお、なんだか知らんけど急に賑わってるね。この2週間程度の留守で何かあったのかな?」
ダンジョンから出てみると、冒険者というにはあまりにも軽装備な集団… 大勢いるけど5~6人でパーティを組んでそうな人達がたくさんいた。うん、50人以上はいるんじゃないかな? これでもギルドにはそこそこ顔を出していたし、喧嘩した連中も含めて顔や雰囲気は覚えていそうなものなんだけど、知らない感じの人達だな。
「まぁいいや、どこかの街の冒険者が大量にダンジョンに来たのかもしれないしね。それよりも毛布の方が先決だ」
「うむ、異議はないのじゃ!」
街の事は領主とかその代官とかがやる事だ、俺には関係ないね。
そんなこんなで各種注文が終了。
オルトロスの毛皮製毛布は、毛皮2枚で毛布が1枚で足りるという事ですんなり注文が完了した。4人分2セットで16枚の毛皮を納入し、お代はなんと! この毛皮が欲しいとの事でオルトロスの毛皮5枚で手を打った。現金が動かなかったというのは良い事だね、やはり物々交換でやり取りができるならそれが一番だ。
そしてミスリル製の大剣… これがヤバかった。
大剣を作れるほどのミスリルとなると、驚くほどの量が必要だって気づかされたね。その数なんとインゴット15個だ!
これを何も無いところからでの現金購入と考えれば、そりゃ目ん玉が飛び出るほどの金額になる訳だね。これはインゴット持ち込みで、技術料というやつが金貨10枚もかかるとの事。まぁこの先いつまでも使えると思うからこの投資は必要だと判断して注文。まぁ途中で折れたとしても、俺が折れた部分を収納できるからね。鋳つぶしてやり直す事も可能になるって寸法さ。まぁ一度火を入れたミスリルは、鋳つぶすと強度がどうのって話もあるそうだが気にしない事にする。グレイが大喜びだったからね。
そんでもって最後にギルドへとやってきた。
「あ、ヒビキさんが来たら呼ぶように言われているんですけど」
「え? ギルドマスターが?」
「はい。なのでご案内しますね」
Oh… 素材を売る前に連れて行かれてしまったぜ。
「ようやく戻ってきたか、今回は随分と長く潜っていたんだな」
「まぁちょっとね。それで? 何か用事でも?」
「ああ、ちょっと面倒な話なんだが聞いてくれ。勇者の配下がこの街にやって来ているんだ、その理由はな… お前さん方を魔境へと連れ出すためだ」
な、なんだってー!
「でも俺達がこの街を出ればミスリルはどうなるんだ?」
「どうも自分達でミスリルゴーレムを狩れると思い込んでいる様子でな… 遭遇すれば色々と面倒な事が起きる、という事を忠告しておこうと思ってな」




