64 忘れておったのじゃ!
誤字報告いつもありがとうございます。
ライスバーガー… パンの代わりに米を圧縮してパンズにしたものだ。アレだ、要は日本人のソウルフードであるお米を食べられるという事だ!
パンと違い米は腹持ちが良いからね、挟まっている焼き肉と相まってズシンと胃にくるのだ。多分それがグレイが気に入ったという点で間違い無いだろう。欠点と言えば、圧縮してあるとはいえ元は米だから、崩れる時もあるという事だね。今のアイシャのように…
「ご主人様… これ、ポロポロとなってしまいますぅ」
「そういう時はこうだ、包んでいた袋を使ってこぼれても袋の中に入るようにしてな」
「なるほど!」
「うん、なんかコツは掴めたみたいだな。よしよし、じゃあゆっくりと昼食にするために移動をしてしまおうか」
「はいっ!」
クローディアもモグモグとやっているが… 米だって穀物だ、多分気に入らないって事は無いだろう。あるとすれば焼き肉のタレがやや濃い目だというところか…
まぁとりあえず移動を開始する。広めの空間なんだけど、入ってきた扉から見て真っ直ぐ奥にもう一つ扉がある。多分あそこが出口なんだろう。見通しが良く、魔物の姿も見えないからさっさと出てしまおうかね。
扉から出てみると、この階層に入った時と同じような雰囲気の道が続いている。もしやこれは?
「ご主人よ、どうやらこの階層はさっきのモンスターハウスにしか魔物は出てこないかもしれんな」
「うん、俺もそんな感じしてるよ。この通路も道なりに行けば階段がありそうだしな」
「ではどうする? この場で飯にするか、階段まで行ってからにするか。俺としては先ほど試食したから少しくらい遅くなっても問題はないと思うが」
「そうじゃの、この階層が本当にモンスターハウスだけなのかを確認してからの方が落ち着きそうじゃな」
「よし、じゃあそうするか。どうせなら飯くらいはゆっくり食べたいしね」
これまた満場一致で階段を目指す事になった。
グレイは元々飲んでいないけど、クローディアとアイシャはメロンソーダの入ったカップを持ちながら歩いている。うん、炭酸は一気に飲めないよね? 俺も炭酸はあまり得意じゃないから良く分かるよ。なんせコーラなんかをグビグビやると、なぜか涙が出てくるんだよなぁ…
83階層に降りてきて、モンスターハウスに到着した時と同様10分ほど歩くと下層へと続く階段が現れた。当然ここまでの間はエンカウント無しだった。
「ふむ、この階層は案外レベル上げに向いているのかもしれんな」
「そうかもしれんがリポップの時間にもよるじゃろう。80階層ボス部屋のように1時間ほどでリポップするなら良い稼ぎ場所にはなりそうじゃがな」
「え? でも疲れないか? あんなに大量の魔物を休みなしで戦うなんて」
「いや、今回はあえてグレイ1人にやらせたが、魔法も込みならそれほど苦労はせんじゃろ。特に主のレベル上げにはもってこいじゃと思うのじゃが」
「それは俺とクローディアの2人で狩るって事?」
「そうじゃの。なんならアイシャもセットで良いかもしれんの」
ふむぅ。まぁ確かにあれほどの数を一気に倒せるというのなら、効率という点ではこれまでの階層とは比べ物にならないだろうな。なんせ魔物を探す手間がないんだからなこのフロアは。リポップの時間さえ極端に長くなければ確かに3人でも効率よく稼げるかもしれない。
「グレイには先ほど拾ったアイテム袋を預け、81~2階層を周回させておけば勝手にレベル上げをするじゃろ… コカトリスの肉を集めながらな」
「うーんそうかもしれないけど、まずは最初に言った通り90階層を目指してみようかね。他にもこんなフロアがあるかもしれないから」
「そうじゃの」
「とりあえず階段があったのでお昼休みにしようか」
全員にバフの効果が増えていると伝えるとグレイなんかが特に大きく反応し、いつもの全種類に加えてライスバーガーだけ3個とか食べるようになった。いやいや、美味しいのは当然だけど食いすぎじゃないのか?
「大丈夫だ、実はこれでも腹八分目なんだ」
「マジかっ!?」
「うむ。さすがに食べすぎると動きが重くなるし前かがみになると戻ってきてしまうからな… せっかく食べた物を出してしまうなんて己が許せなくなるからやらんのだ」
「なるほど、まぁ分かるけど」
メロンソーダが気に入ったのか、2杯目を飲み干したクローディアが俺の方をジロっと見ている… なんかやったっけ?
「そういえば主には言ってなかったかもしれないが、実は私とグレイで主のスキルについて検証した事があるのじゃが…」
「お? そんな検証するような事ってあったっけ?」
「あるのじゃよ。いくら破格の補正だとはいえ、3%の加算でこれだけ格上が狩れるという事はおかしいと思わないか?」
「ん? ああ、まぁパーティの平均レベルと同じ階層数が適正階層だって言ってたのは覚えているけど」
「そうじゃ。じゃが私やグレイはレベル50台の頃から20以上ものレベル差を覆して勝利していたじゃろ。しかもソロでも狩れるようにもなっておったし」
「そういえばおかしいね… まぁ俺としてはグレイもクローディアもすごく強いんだなって印象があったから気にしなかったけど」
「実はの… 主のハンバーガーによるバフの効果は重複しておるのじゃよ。普通のハンバーガーとチーズバーガーの2種類を食べたのなら、3%の補正が2種類分で6%になっておる。しかも同じ種類のハンバーガーを2個食べると効果時間まで2個分… つまり240分になるという事じゃ」
「な、なんだってー!」
「以前グレイとな、夜中にバフが切れているはずの時間なのに効果が残っていたから気になって調べたのじゃ」
「なるほどなぁ… 確かにそう聞けば個々では微小のバフ効果も、塵も積もればって事態になってたって事か。ああ! だからグレイは全種類に拘って食べてたって事か?」
「そうじゃ。まぁ私はそれほど多くは食べれんのでな、グレイほど多くのバフは効いてはおらんがそれなら納得じゃろう? 80階層のコカトリスの集団を相手にしてグレイが勝利できた理由が」
「そうだったのか…」
「まぁアレじゃ、私も結構前に気づいていたのじゃが… 主に説明するのをついつい忘れておったのじゃ! すまんのぅ」
「いや、今聞けて十分だよ。でもそうなるとアレだな… 食べ方も戦略的に考えなきゃいけなくなる時が来そうだな…」
「うむ。まぁそれは私も考えておるから任せてくれ」
え… クローディアに任せたらいつものように脳筋思考になってしまうんじゃ?




