63 スキルレベルアーップ!
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:ゴーマンレッド王国宮廷魔術師団長
「よし、準備は整ったな?」
「はい師団長、我らに追随する者達の家族も続々と王都を脱出しております」
「まだ気づかれてはいないな?」
「それは大丈夫でしょう。陛下もその取り巻きの貴族も下々の生活になど興味はありませんからね」
「まぁそうだろうな。よし、では我ら魔術師団は本日この国を出るぞ!」
「「「おう!!!」」」
ようやく準備が整った。己の欲のために他者の一切を顧みない傲慢極めし国王陛下… その魔の手から離れるために秘かに進めていた国外逃亡、ようやく行動を起こす時が来たのだ。
我ら魔術師団は給金だけはそこそこ良かったからな。私財と家族の出国を優先して行い、我らは陛下に怪しまれないよう先日召還した若者を捜索する体でアレコレと行動してきた。
「もうこの国はダメだな…」
世の中は魔境に蔓延る魔王とその配下の対応に追われているというのに、一切の援助をする気配すら見せない陛下… まぁ魔境は我が国からは非常に遠いため、その脅威については微塵も感じていないのだろう。
では何のために儀式召喚をして力のある異世界人を欲しがるのか… それもまた単純な事、魔境に目を向けている他国を襲うためだ。
隣国であるアキナイブルーもそのお国柄により、前線で戦っているナイトグリーン王国への支援のために、その意識は西側へと向いている。
というかそもそもの話、アキナイブルーにとって我が国はただの隣国でしかない。辺境に押し込められた愚王の治める国になど興味を持つはずがないというのが正確なところだな。
そんな中、我が魔術師団は亡命するために行動を起こしたわけだが… 国を出てどうするか? 残念だが今のところ他国と交渉ができた訳ではない。蓄えを潰しながら移動をし、とりあえず手短なダンジョン都市へと行くしかないだろう。
仮にも我らは魔術師団、魔物と戦う事はそこらの者よりも長けているからな。他国で実績を残してアピールするしかないだろう。悲しい事にゴーマンレッド王国の魔術師団だからといっても特に有名ではないのだ、むしろ魔境への参戦を根こそぎ拒否した陛下のおかげで魔物と戦えぬ貧弱な師団だと噂されるほどだから、この名声はむしろ邪魔になるかもしれんな。
本日も我ら魔術師団は、依然召喚された若者を追う事になっている。魔術師が全員その任に就いているわけではないが、本日はすでに全員が外に出ている… 果たしてあの陛下は気付く事ができるのか? いや、無理だろうな。あのお方は自分の事しか考えない方だ、我らがいなくなってもそこに興味などは持たれないだろう。せいぜい次の召還の催促の時、ようやくいないことに気付くのではないかと…
「よし、目指すはアキナイブルー国内の合流地点だ、各自分散して騎士団の連中の目を欺くのだ!」
「了解しました! では行きましょう!」
こうしてゴーマンレッド王国所属の魔術師団員総勢200余名は、その全員が家族と共に国外へと脱出を始めたのだった。
SIDE:ヒビキ・アカツキ
「おおおお! みんな聞いてくれ!」
「なんじゃ? 一体どうしたというんじゃ」
「ハンバーガークリエイターのレベルが上がったぞぉぉぉぉぉ!」
「「「おおおおおおおおお!!!!」」」
いやぁなんか長かったよね! 個人のレベルはポンポン上がるのに、スキルレベルは全然上がらなかったから忘れかけてたよ!
「それでご主人よ、一体何が増えたのだ?」
「うんうん、ボクも気になるよ!」
「ふっふっふ、なんとハンバーガーが増えたのだ!」
そうなんだよ! しかも増えたハンバーガーがね? 俺が待ち望んでいた物だったんだ!
「増えたハンバーガーはなんと! ライスバーガーの焼き肉だぁぁ!」
「む? ライスバーガーとな? それはどういったものなのじゃ?」
うぐっ! そうか、米を食べないと俺のテンションにはついてこれないのか… だがまぁ良い、多分食べればその美味しさに満足してくれるだろうよ!
「まずはアレだ、口で説明するよりも食べた方が早いだろ?」
「そうだな! ご主人がそこまで言うハンバーガーなのだ、きっと旨いはずだ!」
ふんふん、グレイはそこのところ良く分かっているね。だが増えたのはライスバーガーだけではない! なんとメロンソーダまで増えているのだ! どの辺がメロンなのかは謎のままなんだけどね。
しかもだ、なんとライスバーガーは付与されているバフにも変化があったんだ。今までのハンバーガーは全ステが3%アップするというものだったんだけど、ライスバーガーはなんと! 全ステ5%もアップするのだよ! あ、メロンソーダは他のソフトドリンクと同じだったけどね。
そんな訳でドン!
「ご、ご主人様? この緑色のやつは…?」
「うむ、なんとも鮮やかな緑色をしておるのぅ。毒でも入っていそうな雰囲気じゃが」
「おいおい酷い表現するなよ。まずはこのライスバーガー、挟まっているのは特製のタレが付いた焼き肉だな。まず食べてみてくれ」
グレイがなかなかの素早さでライスバーガーを手に取り、包装を剥がしていく。他の2人も同様にライスバーガーを剥き、パクリと一口。
「むおっ!」
グレイが何とも言えない声を発し、そのまま一言も喋る事無くライスバーガーを飲み込んでいく… まぁ肉食の気が強いグレイなら絶対気に入ると思ってたんだよね!
「そしてこの緑色のジュースはね、俺の生まれた国ではメロンと言って高級な果物を模した飲み物なんだよ。炭酸が効いているからシュワシュワするけど甘い飲み物だぞ?」
この『甘い飲み物』という言葉にクローディアとアイシャが反応… 特にクローディアは毒々しい色だと言っていたのにもう手にとってスタンバイしているし。まぁライスバーガーが口の中にあるからね、タレの味を考えれば甘いものを食べ合わせるのは良くないと感じたんだろう。
「シュワシュワで喉がチクチクする… でも甘いね!」
「そうだろうそうだろう」
アイシャが先にライスバーガーを飲み込み、メロンソーダに口をつけていた。まぁ炭酸はね、飲んだ事のない人には驚きの感覚なんだよね、それは良く分かる。俺も親戚の小さい子供にコーラを飲ませた時の反応があまりにも面白かったのでよく覚えているよ。
「よし、時間的にこのまま昼食と行きたいけど、モンスターハウス内でのんびりも出来ないから少し進んでからゆっくり味わおうぜ」
「うむ! このライスバーガー… 俺は一番気に入ったかもしれん」
やはりグレイにはヒットしたようだ。




