05 スキル経験値うまー!
さて、金がない以上町に入る事ができないので早々に立ち去るとしますかね。王都から近いせいか入場待ちをしている人が結構並んでいるんだよ、なぜか道中誰とも遭遇しなかったんだけどね!
背の高い防壁に囲まれた町を迂回し、王都から遠ざかるように進んで行く… すると防壁沿いにちょっとした集落が出来上がっているじゃないか、しかも年寄りが多くて後は子供ばかり。やはり稼げそうな年齢層はどこかで稼いでいるって事なんだよな…
「ん? もしかしてここでハンバーガーの経験値を稼げるんじゃないか?」
そうだよ、自分1人だけだとどうしても消費しきれない物量を出す事に躊躇っていたが、町の外で暮らす子供や年寄りに食わせてやるという大義名分があれば気分的にも楽になるのでは? まぁこれも偽善なんだろうけどね、何と言っても理由が経験値のためだし。
まぁアレだ、貧乏性な自分の性を悔やんでも仕方がないし、早速子供に声でもかけてみようか。年寄りはやはり慎重になってると思うから子供から懐柔だね! 旨い物を食えば年寄りだって食いたくなるはずだ。
後は… 子供だからと言って油断していると、サクっと刺されて身ぐるみ剥がされるって事も考えられるから慎重にいこうか。
結果… 今俺の目の前には大勢の住民が笑顔で語り合っている。
防壁内部に入れない生活のためか、やはりどの人も体調を崩していたりどこかに傷を負っていたりと無事な人を探す方が大変な有様…
ハンバーガーを食べて目を見開き、ジュースを飲んでお腹をさすり、ポテトを食べて傷のあった場所を見つめる人達。皆ニコニコだ。
全部で100セットは出しただろうか、1セットじゃ足り無さそうな大柄な人には2セット食わせてやったしね。うん、win-winだね!
中でもご婦人たちはお手拭きを非常に喜び、しかも使い終わったお手拭きを水瓶に入れて水を浄化するなんて裏技まで見つけ出す始末… やはり何と言うか、転んでもただでは起きない強かさを見る事ができた。
すっかり友好的になった現地住民、そのおかげで色々と話を聞く事ができた。そして仕入れた情報がコレだ!
この国はゴーマンレッドという国であり、大陸の東端にある事。周辺国に比べて特に貧富の格差の激しい国で、歴代の王はどれも愚王だという事。このまま西へ行けば商人の国、アキナイブルーという国がある事。更に大陸中央部には魔王が支配する領域がある事。
この領域からは、魔王が魔物たちを率いてじわじわと周辺に侵攻しており、近づくのは危険との事だ。
うん、聞いてよかったね。これはなにがなんでも中央付近には近寄らないでおこう。
朝になった、昨晩はこの防壁外の集落に泊まらせてもらい、3日ぶりにぐっすり寝る事ができたよ。もちろんお礼として朝食用にハンバーガーをご馳走したよ。
そんな訳で、その集落を出て西へと向かい歩き出す。
一般的な話として聞いたところこの世界も朝日は東から昇るという事で、朝日を背に歩けば方向を間違う事は無いという事。これもこの世界の事を全く知らない俺からすれば、実に有益な情報と言えるだろう。
そして歩き続けること2時間、俺は踏み固められた街道から外れて少し遠くに見える森の方に向かいだしたのだ。
「ふっふっふ、予定通りハンガーバーを食べさせまくったらスキルのレベルが上がったんだよね! それを確認しようじゃないか! 一応見られたらマズそうなので人目を避けないとね… ちょうど良さそうな森があって良かったよ」
現地住民との話の中で聞いたところ、ステータスは大事な個人情報であり、そうやすやすと他人に見せるものでは無いらしい。当然スキルについてもね、知られれば対策が練られてしまうし身の安全を考えれば教えるものじゃないって事だ。
だから集落にいた時は、レベルが上がったからといって確認する事を止めたんだよ。ん? 森に切れ目が見えるな… もしかして道でもあるのか? ぐっすり寝たせいか今日は体調が良いし、あの獣道っぽいところを進んでみるのも良いかもしれないな。だがその前に… もうこの辺で確認してしまおう。
「ステータス」
別に口に出さなくても出てきそうだが、何となく気分で言葉にする。そして見えてくる自分のステータス画面…
『パンパカパーン! ハンバーガーセットが通算50個目になりました、50回目記念特典でプレゼントがあります!』
『パンパカパーン! ハンバーガーセットが通算100個目になりました、100回目記念特典でプレゼントがあります!』
「うぉぉ!? マジびっくりするから止めて欲しいんですけど!?」
ああびっくりした、でもやっぱり集落で確認しなくて良かったな。周りに人がいても驚いて大きな声を出しそうだし… ん?
足元には前回と同じようなステッキが転がっている… しかも2本。
「マジかよ、ステッキで三刀流でもやれって事なのか?」
出てきたのは黒いステッキと青いステッキ、まぁ見た目は前回出てきたピンクのステッキよりは遥かにマシに見えるね… さて、じゃあその性能はどんな感じか見てみるか。
【ダークバリアステッキ】
少量の魔力で防御結界を出す事ができる。防御結界1枚2メートル×2メートルの範囲、複数枚同時に使用可能。術者が解除するまで有効で効果範囲は術者から5メートル以内、それ以上離れると自然に消えてしまう。
【ブルーウォーターステッキ】
少量の魔力で水を出す事ができる。穏やかな水流から高圧噴射まで調整可能。
「おお! これは使い勝手が良さそうなステッキだね! じゃあ早速バリアの方から試してみるか。俺の防御力は紙装甲だからね、かなり期待が持てるな。水もあれば便利だし、良いんじゃない?」
黒いステッキ… ダークバリアステッキを手に持ち、心の中でバリアと唱える。すると… 黒い壁が出てきたではないか!
「うぉぉ… なんかでも薄いなぁこれ、結界って書いてたけど頼りなくないか? 試しにマジカルビームでもぶつけてみるか… それで強度がどの程度か分かるだろう… 多分」
5メートル以上離れると消えてしまうようなので、大体4メートルほど離れてからピンクのステッキを構える。万が一反射してきて自分に当たったら嫌だからね! 岩を焦げ付かせるほどの火力なら、俺に当たればきっとただでは済まないと思う。
よし、さらに安全のために角度をつけて… マジカルビーム発射!




